見出し画像

物語のタネ その壱『お留守番ヒーロー #8』

俺の名前は、滝沢さとし。
表の顔は、高齢者向け介護士だけど、もう一つの顔は

「お留守番ヒーロー」

ヒーローの留守を預かり、出現した怪獣、怪人をもてなすのが俺の役目。
先日は、ライダー怪人界No.1のインテリ「死神博士」さんとお会いしまして、その数奇な運命をお聞きしました。
まさに人に歴史ありって感じでしたね。
そして今回は、その死神博士さんのライバル?
巷では犬猿の仲と言われているあの方とのお話です。

「地獄大使」さんです。

私、初対面で。
しかも、何の因果か死神博士さんの翌日に現れるという、ある意味お二人繋がっていらっしゃるというか。
これも運命ですね。

ジ「どもどもどもども」
お「あの、地獄大使さん、私、」
ジ「はいはい。聞いてるよ、今日いないんでしょ、ライダー。うん、聞いてる聞いてる」
お「はい。ということで、お留守番ヒーローの私が本日はお相手をさせて頂きます」
ジ「そう、これも何かのご縁ってことでね、折角だから飲も飲も。ビールでいい?」
お「あー、もう、お気遣いなく」
ジ「(持参の保冷バッグから缶ビールを出しながら)これね、サッポロの新作。まだ、お店には出ていないのよ。私ね、ビール大好きで、うがいもビールでするくらいなのよ。それを聞いたサッポロの人が、新作出る度に先に送ってくれるのよ」
お「それは(一口飲んで)あ、これ美味い」
ジ「(グビッと飲んで)うーん、プハー、結構コクあるねこれ、いいね」
お「ですね〜。地獄大使さんのこと色々と聞いちゃっていいですか」
ジ「いいよいいよ」
お「ありがとうございます。まずですが。ショッカー日本支部長になられる前は東南アジアの支部にいらしたんですよね」
ジ「そう、私生まれがサンフランシスコで、ほら英語ネイティブだから、結構世界中の支部をまわらされてんのよ」
お「帰国子女の商社マンみたいですね」
ジ「そうよー。下手すると飛行機乗っている時間の方が長かったんじゃないか?っていう時期もありましたよ。ショッカーマイル貯まっちゃってね。それでアップグレードしていたから結構快適な空の旅だったけどね」
お「ショッカーマイルなんてのがあるんですか?」
ジ「ほら、この格好で『BRITISH AIRWAYS』とか乗るわけにはいかないでしょ。ショッカーはグローバルな財閥企業だからね。航空会社も持っているし、福利厚生もねしっかりしているのよ」
お「へー、すごいんですね、ショッカーは」
ジ「もうね、大企業よ世界的なね」
お「そこで幹部ですから、やっぱり地獄大使さん、すごい人ですね」
ジ「いやいや、もうただただ宮仕えよ。ただ、がむしゃらにやっただけ」
お「でも、そうだ。海外を転々と言えば、日本にいらっしゃる前に世界各地に156もの秘密基地を作られたんですよね」
ジ「それに関しては、大変だったけど、自分のショッカー人生で誇れるところだね」
お「156って半端ない数ですよ、中にはすんなりいかないところをあるでしょ」
ジ「すんなり行くところなんてないよ。一応地元とともね、信頼関係を築きながらやらないと基地反対!とか言われちゃうからね、もう、気苦労が絶えないよ、ホント。私、ファラオみたいでしょ、これなんでだか分かる?」
お「え、そういう改造だったんじゃないんですか?」
ジ「いやいや、これはエジプトに基地作る時にね、やっぱ、ピラミッドの下に作りたいじゃない。気に入られないといけないなと思って、地元の職人に作ってもらったのよ」
お「えー⁈」
ジ「地元の偉い人との顔合わせがあって、ここで一発好印象でないとなと思ってね。お陰ですぐにGood Friendになったけどね」
お「かなり、体当たり的なコミュニケーションですね」
ジ「そうね、世界で商売するってのはね、相手の懐に入るというか、そこは理屈じゃないんだよね。私なんか言ってしまえば昭和のビジネスマンですよ。気合と行動あるのみ!って感じでね」
お「いやー、勉強になります」
ジ「あと、この私の腰にあるの、特注のショッカーベルトなんだけどね、これはアフリカにね基地作る時、ある村の酋長と契りを交わす用に、地元の木彫り職人に二つ作ってもらってね。日本のヤクザの盃を交わすみたいな感じで」
お「懐への飛び込み方もいろいろあるんですね〜」
ジ「そうよ、相手次第だから」
お「こういう言い方がいいかわかりませんが、なんでそんな術?を身につけたんですか?」
ジ「そうねー。私、サンフランシスコのパークランド街ってとこで生まれ育ったんだけど。小さな時からもうワルでね。少年ギャングみたいなもんだったのね。従兄弟のガモンってのがいるんだけど、そいつと二人で悪さばっかりしてね。挙げ句の果てにアルカトラズ刑務所に入れられて」
お「あの有名な」
ジ「そこも脱走したんだけど。その後、東南アジアのある新興国へ逃れて、ひょんなことからそこのゲリラの大佐になったのよ」
お「はい」
ジ「私、アメリカ育ち。部隊のメンバーはアジア人。この時、最初アメリカのギャング方式で統率しようとしたわけなんだけど、あの力でねじ伏せる系は、全くうまくいかなくてね。ああ、これはダメだと。相手を従わせるんじゃなくて、自分が相手の懐に入っていかなきゃって痛切に思ったのよ」
お「なるほど」
ジ「それからかな、ゲリラ活動もスムースというか、みんなイキイキと活動してくれるようになったのよ」
お「以前何かで読んだんですけど、地獄大使さんはショッカーでもマメに部下に声をかける方だって」
ジ「はい、もちろんよ。ケアするよ、ちょっと元気がないとさ、どうした⁈なんてね。ゲリラ時代からかな、そうしているよ、ずっと」
お「もう、組織マネジメントの鏡みたいな方ですね」
ジ「ただね、私のそういう昭和スタイルは、なかなか今の若いショッカーには通じないところもあるよ。飲み行くか?なんて話しても、それは業務命令ですか?ヒー!とか言われちゃうし、難しいね最近は」
お「時代ですねー」
ジ「ねー」
お「あと、地獄大使さんは、本当に愛社精神というかショッカー愛が強いですよね」
ジ「まあ、昭和のモーレツ社員だからね、私たち世代は。とにかく、こんな私に居場所を与えてくれたショッカーには感謝しているよ、すごく」
お「あの、毎回爆死する時、ショッカー万歳!って叫ぶじゃないですか」
ジ「まあね」
お「あれなんか、ちょっと古いですけど、長嶋茂雄が引退の時に、我が巨人軍は永遠に不滅です!って言ったのに通じるなーって」
ジ「そうよ、まさにそれと同じよ!よくわかっているねー、お留守番ちゃん。そう、そういう気持ち。ほんと、心からありがとうー!っていう気持ちになるのよー」
お「なんか、そう思えるのっていいですよね」
ジ「わかる?嬉しいねー。いや、ほんと、ショッカーに感謝、ショッカー万歳だよ、私。だから生涯1ショッカー精神ですよ。死ぬまでというか何度死んでもまたショッカーになりたいって思ってるよ」
お「なるほどなるほど」
ジ「いやー、なんか気持ち良くなって来ちゃったなー。ちょっと飲みに行く?」
お「はい、是非!」

ということで、あの日は結局朝まででした。
最後、地獄大使さんも私もヘロヘロでしたけどね。
でも、楽しかった。
昭和のヒーロー史の裏側は、ああいう猛烈怪人さんに支えられていたところもあったんだなーと勉強になりました。
地獄大使さん、次回はガラガラ蛇入りテキーラ、飲みに行きましょう!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?