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旅先での食の記憶「すだれ麩」

一時期はまって毎日のように作っていたキュウリの胡麻酢和えを久し振りに思い出して作ろうとしたが、そこで使ったある食材の名前を忘れてしまって困っていた。ミルクボーイさんの鉄板ネタみたいな話だけど。

15年ほど前に日帰り旅行で北関東方面に行った時、野菜や特産物の臨時直売所のようなところに立ち寄って、そこで試食を勧められ、食べたら美味しくてそのまま購入しレシピを教わって帰ってきた。塩もみしたキュウリと合わせた「胡麻酢和え」で、この地方でよく食べられているという。その食材自体は白くぺらぺらとした形状で、水で戻す必要があった。麩か湯葉のどちらかだったと思うけれど、ここでググって簡単に答えを知ってしまうのも勿体無い気がしてどうにか思い出そうとしてみる。しかしそう簡単には出てこない。地方の特産品のため生活圏内のスーパーでは見かけることもなく、当時買った数袋を使い切ってしまって、レシピのメモも残さずそのまま今に至るくらいには忘却の彼方に追いやってしまったのだ。

とうとう観念して検索したところ、答えは簡単に出た。すだれ麩、そうだそんな名前だった気がする、と都合よく記憶を改ざんするいい加減さよ。とはいえ名前がわかればお取り寄せも出来る。と同時に、茨城県結城市のほかに石川県金沢市の名産品でもあると知った。もっとも両者は同じ「すだれ麩」という名前だが製法や形状、料理法も違うらしい。私が食べていたのは茨城のすだれ麩だったとわかったので早速通販で購入しようと思ったら取り扱いがどこにも見当たらない。どうも唯一の生産者さんが廃業してしまわれたらしい。どうしてもっと早く思い出さなかったんだろうと嘆くと同時に、伝統的に受け継がれてきた食文化でさえ、潰えてしまうことがあると改めて考えさせられた。

偶然だが、買い置き食材の中に「乾燥ゆばの切り落とし」があった。もしかするとすだれ麩の代わりに胡麻酢和えに使えるのではないかと思って早速試してみた。

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ごまを切らしていたのでえごまパウダー(なぜかこちらは常備している)を使用。これはこれで有りだ。結城のすだれ麩が手に入らなくなってしまったのは残念だけれど(15年も経ってから突然思い出しておいてそれはお門違いだと自分でも思う)新しい我が家の定番として作り続けていきたい。そして金沢のすだれ麩も気になって仕方がないので取り寄せてみよう。

こんなふうに旅先で触れる機会を得た食材について、これからも思い出しながら記していきたいと思う。忘れることで再び食するチャンスを失わないよう、備忘録も兼ねて。



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