貰ってきた立派な花より、小さな種から育てた丈夫な樹木のような会社を。

ある社長さんから
「来年で事業をやめるから、引き継がないか?」
と打診があった。

現在行っている会社の業務と関連する業務でもあり、非常に興味をそそられたのだが、その社長さんが出してきた条件が
「今の社屋を借りてくれたら、備品も顧客も全部やる。引継ぎ期間は1ヶ月。」
というものだった。

私は、仮にその事業を引き継いだ場合に担当させるであろう社員数名に、相談した。そして、実際に一緒にその会社へ行き、話を聞いた。
そして私と社員で一致した答えは
「断る」
だった。

検討の結果をその社長さんに伝えたところ、戻ってきた返事が
「社員に相談しちゃダメだよ。社員は面倒なことはやりたがらないんだから。下見に社員を連れてきた時点で、ダメだと思ったよ。」
というものだった。

その言葉を聞きながら、やはり断ってよかったと思った。

私は、普段から「いかに社員に裁量を与えるか」を考えている。自分の責任で仕入れや販売を行えることが、従業員の責任感醸成、やり甲斐に繋がっていると信じているからだ。
きっと事業を引き継いでも、前社長の所有する社屋を借りて、前社長が開拓したお客様を相手にしたのでは、自社の裁量が抑えられてしまう。
私は、経営者ほど精神的に楽なポジションはないと思っている。誰よりも責任を負う代わりに、決断が出来るからだ。人の指示だけで動くのは耐えられない。社員にも、出来るだけ自分で判断できるよう、ある程度の裁量を与えている。だから、知らないことがいつの間にか企画されていたりする。(報告は欲しいのだが・・・)

でも裁量が自分にあると、言い訳が出来ない。自分の責任で結果を出さなければならない。「自分のやりたい事が出来る会社」であることが社員の定着率向上にもつながるし、そうして育てていった事業の中に、やがて会社の幹となるようなものが出来るかもしれない。
人から貰った立派な花は、やがて枯れてしまう。
地面に種を植え、少しずつ育てていった樹木こそが、何年も沢山の花を咲かせ続けるのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?