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エコロジカル・アプローチ@バレーボール実践例②セッター練習1

2023年10月14日に指導した某中学男子チームで、12月2日に「セッター練習の制約主導アプローチ」を試みたので、「エコロジカル・アプローチ@バレーボール実践例②」として紹介したいと思います。

「エコロジカル・アプローチ@バレーボール」シリーズや、前回の「エコロジカル・アプローチ@バレーボール実践例①アンダーハンドパスの感覚をつかむも参考にしてください。

セッターの動きと判断の感覚をつかむための制約主導アプローチ

対象者:中学生男子1、2年生 8人+3年生1人(前キャプテン)
サイズ:バレーボールコート一面
ネット:中学生男子正規の高さ(2m30㎝)
人数:セッター1人(固定)とそれ以外3対3(外に1人ずつ)、スパイクヒットしたら外の人と交代
制約:セッター付きの3対3バックアタックゲーム(セッターは1人でネット下をくぐり、両チームのセットアップを行う
ねらい
様々なパスに対し、複数の目標位置にセットできるよう、適切な位置に素早く移動し、セットアップできるようになる。
「セカンドタッチを誰がプレーするか判断し、指示の声を出す」のはセッターの責任という認識をチームで共有する。

対象者の実態と環境設定の理由

11月に行われた県の新人大会で、いわゆる「セッターがボールの下に入るのが遅い」というところが気になりました。「どこでボールをとらえるべきか」の意識が感じられない、「素早いスタートを切ろう」という意識も感じられず、他のプレイヤーの1stヒットが見えているのか分からない、といった状況でした。いい位置でとらえたときは、無理のないフォームで質の高いトスを飛ばせていましたが、とらえる位置が安定していませんでした。

「移動が遅い」のは「走るのが遅い」とか「ステップが適切でない」とかの要素もあるかもしれませんが、「どこで、どんな態勢でボールをとらえることができそうかのイメージがない」ことが最大の問題だと考えています。セットアップの基本は「どこでボールをとらえればどの方向に飛ぶか」の感覚をつかむことだということで、その練習方法はこちらで紹介しています。

これを「エコロジカル・アプローチ@バレーボール」で説明したのがこちらです。この練習方法では「球出しで変動を調節する」ところがキモになります。つまり(指導者の)「球出しで練習をデザインする能力」に依存するわけですが、今回は「スモールサイドゲーム」にすることによって様々なパス(変動)を体験できるようにしました。

セッター固定で、1人で両コートのセットアップをするようにしたのは、セッターがチームに1人しかいないこともありましたが、ネットをくぐらせることで「移動が間に合うかどうかが大きな問題になり、素早くスタートの準備しなければならない」状況を作れると考えたからでした。

結果と考察

ねらい①:適切な位置への移動

ねらい通り、セッターがいろいろなボールをたくさんプレーすることができました。球出しが意図的にボールをコントロールするよりもはるかに、飛んでくるボールの角度、ボールをプレーするコート上の位置、目標への角度が様々である(意図せず変動が大きくなる)というのは間違いないでしょう。

このやり方では、必ずネット側から味方のプレーを見て移動することになり、1stヒットをすることがなくセットアップに専念できることは、セッターにとって難易度の低い状況と言えるでしょう。相手のアタックに構える必要がなく、「ディグの準備からセットアップの準備に切り替えるというタスク」がないわけですし、「ボールに対するアプローチの方向」も「ネットから」に限定されているといった点は、認識しておく必要があると思います。

ネットの反対側に移動しなければならないので「早く移動して準備しよう」という動機が強くなっていたと思われます。ネットを潜るのが遅れると味方の1stヒットが見えにくくなるため、なんとかして味方の1stヒットを見ようとする意識が感じられました。「トスが良かったか、アタッカーがしっかり打ってくれるか」が気になってボールの行方を見てしまい、反対コートへの移動が遅れることも時々ありましたが、間に合ったり間に合わなかったりが自分の行動で決まるという体験は意義の大きいものだと考えられます。

全体として、滞ることなくラリーができていたので、セッターにとっていい練習になっていたと考えられます。その中で、時々「動きながらなんとなくの位置でボールをとらえてしまう」ことがあり、ラリーが切れたときに「余裕を持って『とらえるべき位置』を意識してセットアップできた」ときとの違いに気づきを促すことができました。

「対象者の実態」で「いい位置でとらえたときは、無理のないフォームで質の高いトスを飛ばせていた」と書きましたが、このSSGが成立した要因として重要だったと思います。「持ちパス」(キャッチ)の癖があると、「どこに移動すべきか」が分からず、「持つことで修正する」ための練習になってしまいます。

ねらい②:判断と指示の声

「セカンドタッチを誰がプレーするか判断し、指示の声を出す」ができなかったときに「今のは?」と振り返ってもらうと「今のは誰々が取るボールだった」という答が返ってきました。しかし、問題は「誰が取るべきか」ではなくて、「セッターが、その時判断をしなかったか、してもそれを伝えなかったこと」だということを、チーム全員の前で確認しました。

なかなか必要な声がスムーズに出る状況にはなっていませんでしたが、「判断と指示の声についてのルール」をチームで共有できるようにはなっていたので、時間をかけて達成していけると思います。「声」は、意識しなくても出るようになるには様々な要素が必要で、かなり時間がかかるものだと思います。

その他

かなり重要だと思ったのが、他のプレイヤーに「セッターに余裕を作ってあげるパス」の意識が生まれたということです。特に言わなくてもそういうプレーが見られていたため、余裕のないパスを出したときに「今のは何とかできたんじゃないのかなあ?」と声をかけることができました。

指導者の「球出しで練習をデザインする能力」に依存せずに変動の大きい練習ができるというのが、今回の最大の強みですが、逆に「今のはここでとらえたからこうなった、じゃあ、あそこへ飛ぶようにするにはこの辺でとらえればいいのかな?」という試行錯誤ができない(しにくい)のが弱みと言えます。そのような試行錯誤は「同じ位置に、同じようなボールが上がり、同じ位置からアプローチして、同じ目標に、同じイメージの軌道のトスを上げる」という条件があることで、ちゃんと成立するわけです。

しかし、その試行錯誤を上手く活かすには、勝手に変動が起きるゲームライク(SSG)をベースにして、その中から具体的な場面を切り出して指導者の球出しで再現する方がいいのではないかと思います。

発展

人数が9人だったことで、セッター以外を4対4に分けることができ、交替しながらも点数を付けて勝敗を競うことができました(5点先取のデュースあり)。やり方に慣れ、ある程度ラリーが続くようになるまでは、点数をつけないことで集中できていたと思いますが、勝敗を競うことでより真剣にプレーできるようになりました。

さらに、以下のように発展させていきました。
1.前衛のアタックとバックアタックの組み合わせ、必ずセッターの前(レフト~センター)からと後(ライト側)からの組み合わせにする
2.さらに、ブロッカーを1枚付ける:ブロッカーはブロックに専念、1人で全ネット幅をカバー
3.さらに、ブロッカーは攻撃の時はクイックを打つ

ネットを潜るセッターがブロッカーとぶつからずに移動できるか、まずは安全を確認しながら、チーム全体が新しいルールを理解して動けるようになったら点数をつけるというやり方で、それぞれの段階で盛り上がり、最後まで集中が切れることはありませんでした。

前回同様、この練習がちゃんと練習になっていたのは、回りのプレイヤーの能力によるところが大きく、対象が変わればそれに合わせて「制約(ルール)」を調節する必要があります。「制約主導アプローチ」の工夫は、プレイヤーの状況を見て、つかんでもらいたい要素から環境設定を考えるというライブ感覚が重要ですね。

バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。