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各発達段階におけるトレーニングの在り方(STAGE5:Training to Compete)#13

「バレーボーラーの一貫育成メソッド」 制作の第13回です。

前章ではLTADモデルの発達段階におけるトレーニングの在り方『Learning to Compete(闘争することを学ぶ)』について8項目に沿って解説をしてきました。本章では『STAGE5:Training to Compete(闘争することを訓練する)』について解説をしていきたいと思います。

STAGE5:Training to Compete(闘争することを訓練する)

まずは、LTADモデルにおける第五ステージである『Training to Compete』について考えていきましょう。"Training to Compete" とは日本語に訳すならば闘争することを訓練するとなります。

このステージにおけるアスリートは試合で勝利するために必要とされるトレーニングを計画的に実施した上で、大会に参加するようになります。

このステージにおけるキーワードは「洗練」であり、第四ステージから専門的に取り組んできた自身のプレーロールやポジションにおいて求められるプレーをさらに高みへと押し上げていくことが重要であると言えます。このステージになってくるとコーチは「ティーチング」の割合を低くし「コーチング」の割合を高めていくことでプレーヤーが自律的に自身のプレーを洗練させていくことができるような素地を形成していく意識を持つことが大切です。

それでは、次からは8つの項目に沿って第五ステージ『Training to  Compete』を深掘りしていきましょう。

VOLLEYBALL FOR LIFE: LONG-TERM ATHLETE DEVELOPMENT FOR VOLLEYBALL IN CANADA p13

Overall Goal(総合的ゴール)

Refine volleyball skills and further develop fitness
(バレーボールスキルの洗練と身体能力のさらなる向上)

第五ステージでは、二つの主たるゴールが提示されています。第四ステージからさらに一歩踏み込んだところにゴールが設定されていることが分かります。第四ステージで統合されてきたバレーボールスキルをさらに磨き、身体能力をさらに高みへと向上させる。それが第五ステージで目指すべきゴールとなります。また、日本で一般的に言われている育成カテゴリの最終段階に該当するのがこの第五ステージだということもできるでしょう。

Chronological Ages(暦年齢)

Indoor Volleyball ・Males:20~21±  Females:19~20±
(インドアバレー ・男性:20〜21歳前後   女性:19〜20歳前後)
Beach Volleyball ・Males:18~24±  Females:17~23±
(ビーチバレー ・男性:18〜24歳前後   女性:17〜23歳前後)

日本の学齢で言うと、だいたい大学1年生から3年生が第五ステージに該当します(インドアバレーの場合)。ここでもやはり男女の発達段階の違いから暦年齢には違いがありますが、暦年齢はあくまでの目安と考えてください。個人差は当然ながらありますが一般的には、身体発達がピークを迎える暦年齢と言うこともできるでしょう。

Focus(焦点)

Refinement(洗練)

第五ステージではプレーヤーの「洗練」に焦点が当てられています。洗練には「より品位の高いものに磨き上げる」という意味がありますが、第四ステージまでに積み上げ、統合してきたスキルや各ステージで積み重ね鍛えて身体能力をさらなる高みへと押し上げていくのが第五ステージだと言えます。

Skill Development(スキル発達)

Athlete personal style is well established. Movements are executed similar to the ideal model in terms of form and speed. Performance is considered and precise under very demanding conditions.  Movements have been automated allowing increased external focus to make rapid adjustments as necessary.
(アスリート個人のスタイルが確立されている。フォームやスピードの面で理想的なモデルに近い動きのプレーが行われる。非常に厳しい条件下においても、高いパフォーマンスが維持され正確である。 動きが自動化されているため、外部に対する集中力は高まり、必要に応じて迅速な調整ができる。)

第五ステージにおけるプレーヤーのプレースタイルは確立され、理想的な動きでプレーができるようにもなっていきます。そして、負荷のかかるような状況においてもプレーの正確性は維持され、パフォーマンスが下がることもなくなっていきます。また、あらゆる面でプレーの自動化が起こっているために、状況の変化に応じて高い集中力を発揮しながら適切なプレーを選択し、実行することができるようになっていきます。

第五ステージでは、コーチはプレーヤーが簡単に気持ちよくプレーできるような環境を提供しているだけではプレーヤーのさらなる成長を引き出すことが難しくなってきます。コーチには常にプレーヤーが「認知・判断・実行」のプロセスを経てプレーせざるを得ない環境をデザインすることが求められますこれらのプロセスが省略されたような「パターンの繰り返し」に終始したトレーニングをしていては、将来的に創造的で、コーチの想像を超えるようなプレーヤーを育成することは難しいと言えるでしょう。

Goal(ゴール)

・Position-specific technical and tactical preparation(ポジション別のスキルと戦術の準備)
・Sport-specific and position-specific technical and tactical development(バレーボールに特化したポジション別のスキルや戦術の開発)
・The development of playing skills under competitive conditions(ゲーム中におけるプレースキルの開発)
・Advanced mental preparation(高度なメンタルの準備)
・Optimization of ancillary capacities(付随的要素の最適化)

第四ステージから引き続き、第五ステージでも同様のゴール設定がなされています。第四ステージとの間に違いがあるとすれば、第五ステージでは第四ステージで取り組んできたことをさらに「洗練」するという点にあります。

Discipline Integration(専門分野の統合)

Indoor and beach competitions can conflict
(インドアとビーチバレーの大会は競合することがある)

第五ステージがインドアとビーチの両方に取り組んでいくことが推奨される最後のステージとなります。

Periodization(期分け)

Double or triple periodization
(二つもしくは三つの期分け)

第四ステージからもう一段階、細やかな期分けを行っていこうとする考え方が第五ステージです。試合に向けての本格的に期分けを行って準備をしていこうとする最初のステージとなります。

Training to Competition Ratios(トレーニングと試合の比率)

70:30

第五ステージでは、第四ステージと比較し、トレーニングの割合が「10%」増加し、試合の割合が「10%」減少します。第五ステージの焦点が「洗練」とあるように試合までの準備、つまりトレーニングを通してさらにプレーに磨きをかけるということが重要視されます

(続く)

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バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。