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スロットをチームシステムとして機能させるために【2/2】
スロットをチームシステムとして機能させるために【1/2】からの続きです。
スロット可視化のメリットとデメリットを考える
それでは、PPテープによるスロット可視化によるメリットとデメリットについて少し考察をしてみよう。実践を通じて感じたメリットとデメリットについてまとめていきたい。
コミュニケーションの質向上
まず、一番に感じるメリットとしてプレーヤー間、プレーヤーとコーチ間のコミュニケーションの質が格段に上がるという点が挙げられる。例えば、プレーヤー間でよくある会話としてセットされたボールが短いとか、長いというものがある。多くの場合、明確な基準がないままに互いが主観的・感覚的な主張になりがちである。特にセッターについてはこうした会話を他のコート内にいるアタッカー全員としなければならないのである。
しかし、PPテープがネットに8つ1m感覚で固定されていれば基準は明確である。プレーヤーの主観・感覚に頼ることなく質の高いコミュニケーションをすることができる。
プレーヤーの座標位置に対する意識が高まる
次の話は、実際にやってみて強く感じているメリットで、プレーヤーが自身のコートでの座標位置を意識してプレーすることができるようという点である。プレーヤー自身がプレー中に常にコートのどの位置にいるのかをPPテープを手がかりとして確認することができるのだ。
特にトータルオフェンスを遂行しようとするチームにとってこのメリットはより強く感じられるだろう。例えば、トータルオフェンスに関して言えば、複数人のアタッカー4名もしくは5名が攻撃に一斉に参加するわけだ。それぞれのプレーヤーが座標位置の感覚を身につけておらず、好き勝手に攻撃参加している状況を想像してほしい。無秩序である。しかし、PPテープがあれば座標位置を意識しながら、攻撃参加することができるだろう。こうしたことを繰り返していくうちに、座標位置に対する感覚は次第に磨かれ、PPテープなしでも自身の座標位置を正確に把握することができるようになるだろう。
分析・評価の質が高まる
最後に、自チームの分析・評価の質が高まるという点である。実際コートエンドからコートを撮影してチームの分析をしてみて実感したメリットである。例えば、自チームのオフェンス全体の動きとPPテープを併せて観察することによって、やろうとしているチームオフェンスの分析・評価の質が高まることを感じている。「なんとなく、アタッカーの位置関係が近すぎるような気がする。」とか「スロットが被っているような感じがする。」といった曖昧性がPPテープがあることで排除されるため、より精密にチームの動きを分析し評価することが可能になる。
敢えてデメリットと言えば・・・
正直、現状のところデメリットらしいデメリットは思いつかない。
ただ、敢えて言うなら「PPテープがなくなったときどうなるの?」という点だろうか。PPテープという補助線が急になくなってしまうと困ることは間違いないだろう。ただ、この点についてはPPテープ有りでの練習や、PPテープなしでの練習を使い分けながら、プレーを観察したり、プレーヤーと会話をしたりすることによってプレーヤーの適応状況を把握して、徐々にPPテープという補助線をなくしていけばいいのだろう。
言語化と可視化。そして、その先にあるもの
さて、本記事のテーマは『スロットをチームシステムとして機能させるためにはどうすればよいのか?』であったが、結論に入っていこう。
まず初めにやるべきことは至ってシンプルで、スロットの言語化と可視化である。
スロットという概念をプレーヤー全員が理解し、チーム内で9つあるスロットに名前をつけ定義する(言語化)。そして、さらにPPテープを使ってプレー中にスロットが眼に見える状態にする(可視化)。
ここまでできれば、スロットをチームシステムとして稼働させるための準備はできたと言っても良いだろう。ただ、これだけでは十分ではない。最も大事なことは何のためのシステムなのかをチームメンバーが理解・共有することになるだろう。次の問いにチームメンバー全員が答えられなければならない。
スロットシステムを使って何を実現したいのか。
ここの部分がなければスロットの概念が理解されていたとしてもスロットシステムは対して機能しないだろう。
システムは、各プレーヤーがそれぞれの能力、そして創造性を最大限発揮するための手段である。最後に身も蓋もない話になるかもしれないが、手段の目的化だけは避けなければならない。
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バレーボールに関する記事を執筆しています。バレーボーラーにとって有益な情報を提供することをコンセプトにしています。