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【小説】 亮介さんとあおいさんとぼくと  20/30

あおいさんがドバイから帰ってきたあと、亮介さんはあおいさんに、きっちりと復縁をせまった。

「彼といるのはやっぱり心地よいというのは変わりないわ。ただ、わたしにとっては、付き合う、付き合わない、というのはやっぱりめんどくさいの。でも、彼はそういうはっきりとした関係を求めるの」

「彼がそこまで言うのなら、強く求めるのなら、応じてもいいかなとおもったの。たしかに、亮介がドバイでいってたように、彼と別れてから二年経って、いろんなものを見て、経験して、考え方もかわってきたわ」

「でも、なにかがダメだったんですよね?」

「話をよくきいてるとね、三年以内に結婚をして、子供をつくるっていう人生プランなのね。彼って、ああ見えて古風なのね。亮介がわたしに求める人生は、今のわたしには考えられないの」

「でもここで断ると、彼と会えなくなる気がしたの。それだけはいやだったの。ぜったいに。これはドバイにいって大きくかわったところね。やっぱりと彼とは会いつづけたい」

「だから、わたし、彼氏がいることにしたの。彼との関係を拒絶したっておもわれたくなかったの。彼の気持ちをなんとかして、やわらげたかったの。彼とのあいだにある程度、距離が必要になったの。そういうわけで、彼氏がいることにしたわ」

「むちゃくちゃですね」

「そうね。じぶんでも、そうおもうわ。でも、こういう直感には従うっていうのがわたしのルールなの。亮介との人生については、これからまた、わたしの考えがかわる可能性もあるし、彼の考えが変わる可能性もある」

「その可能性を残すためにはこうするしかなかったのよ。亮介から告白されたあと、今の彼氏、つまりドバイであった日本人に告白してきたわ」

「事実をあとからつくったんですね。おそろしい」

「そういうことになるわね。それにしても、付き合うってのは、ほんとうにめんどくさいわね。なんでひとりとしか付き合えないのかしら。その点、あなたはそういうことをわたしに求めないから居心地いいわ」

「都合のいい人間関係ですからね」

「こら、ほめてるんだからね」

「あおいさんはけっきょく、なにがしたいのかよくわからないです」

「そうね。うーん、どうなんだろうね。でも、やっぱり将来のことをかんがえると、わたしは、海外で働きたい。そこは変わらないわ。ただその希望は、恋愛や結婚っていうものと非常に相性がわるいのよ」

「いつ、どのタイミングで、どんな国にいけるのかわからないから。だからもう、わたしは、恋愛の諸関係においては、なりゆきにまかせるしかないのよ」

「海外にいったら、その国でみつける。それまで亮介といたいときは、亮介といる。あなたといたいときは、あなたといる。あと一応、新しい彼ともね」

「あおいさん、一応って彼氏がかわいそうです」

「そうだったわね。でも、『会いたいときに会いたいひとに会う』っていう考え、すばらしいとおもうんだけどどうかしら。とってもシンプルで。バカで単純ともいえるけどね」

「じぶんでもヒトらしいとおもうわ。動物らしいというか。そうおもわない?」

「だって、実際、付き合っている人同士でも、おおむね一貫としては好きかもしれないけれど、好きの度合いについては、気分の波みたいなものがあるとおもうのよね」

「先週まであなたのこと大好きだったけど、最近のあなたはなんとなく気に入らない。きょうのあなたはなんかきらい。みたいな感じね」

「そういうこともあるかもしれないですね」と同意するしかなかった。


ーーー次のお話ーーー

ーーー1つ前のお話ーーー



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