采花

書けるときに書く

采花

書けるときに書く

最近の記事

夫婦のプレゼント

7年ほど前から使っている文庫本サイズの革製のブックカバー。 以前勤めていた職場の勤続十周年の記念にもらったもので、使い込むうちに柔らかく手に馴染むようになり、いくつかあるブックカバーのなかでも使用頻度も高く、それなりに愛着が湧いていた。 仕事の休憩中、気分転換に読書をすることもあり常に鞄の中に入れていたのだが、流石に角が擦り切れてきたので新調しようかと思っていた矢先、 「革製品で欲しいものない?」 と夫に質問された。 一体何を察しての質問かと驚いたのだが、よく聞いてみる

    • 秋の風、秋の香り

      近所の家の庭にどんな花木が植えられているのか。普段はほとんど興味がないけれど、秋の始まりのこの時期だけは少し違う。 風にのってどこからともなく漂う、金木犀の香り。 気付いた瞬間に辺りを見回してオレンジ色のつぶつぶがついた木を探す。 私の癒しの時間。外を歩くならあの香りのする道を選ぶ。 最近はお店でも買えることの多い金木犀の香り。 ハンドクリーム、ボディソープ、ルームフレグランス、香水などなど。 似てはいるけどやっぱり本物には敵わないものもあれば、かなり再現度の高い商品もある

      • 『書く』は『読む』のはじまり

        初めはただの衝動買い 2022年。計画的に始めたことではなかったけど、結果的に続いた私の習慣。 手帳を書くこと。 毎年9月頃に文具店では翌年の手帳の販売が始まる。 「文具店」という場所だけですでにワクワクする気持ちが高まっているが、翌年の手帳が発売される時期になるとその気持ちがさらに倍増する。 始まるまであと3ヶ月とちょっと。年が変われば今年の良くなかったことは一旦なかったことに・・・なるわけではないけれど、新しい年がくる前というのはなんだか気持ちが浮つく。あの期待に満ちた

        • 『かがみの孤城』を読んで

          ずっと読みたいと思っていた作品がついに文庫化された。地方に住む私が近所の書店で発売日にその本を手にする事はできず、数日遅れての購入になった。手にするまで時間がかかったのに対し、本を購入してから読了までの時間はわずか数時間。一気に読んでしまった。 疲れた。 久しぶりに本を読んで疲れたと感じた。 心は傷ついたし、体は本当にお城の中を走り回った後のように重たい。この本を読んでいる間、私は本の中にいた。 読後に疲れたと感じるのは、私が面白い本を読んだ時の感覚だ。作品にのめり込

        夫婦のプレゼント

          目撃者

          ある日の出来事待ち合わせのため、駅の改札口付近に立っていた。暇を持て余し、何を見るでもなく行き交う人を眺める。 改札に向かって歩いて来るスーツ姿の男性二人組が目が止まり、何の気無しにその姿を目で追っていると、向かって右側の男性が定期券を取り出した弾みでポケットから十円玉が飛び出した。 すれ違う三人組の男性らがそれを見ていたらしく、一人が 「落ちましたよ‼︎」 と声をかけたものの、話に夢中の二人組は気付かずに改札を抜けて行ってしまう。 三人組は落ちたのが十円玉なのを確認すると

          目撃者