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恋の形

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実る恋  実らない恋 交わる恋  交わらない恋 どの恋も正解はなくて どれも素晴らしい ちょっと人にやさしくできないとき 読んでもらいたいお話しまとめてみました
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2024年4月の記事一覧

うみといちご

久々のデートはいちご狩りだった。 黒いTシャツで気合十分の彼女は、食べきれないほどの苺を一粒一粒おいしそうに食べる。まるで食べるのがもったいないように一粒にひとつの幸せをのせて。 いちご狩りからの帰りは近くの海辺に立ち寄った。 春先のあたたかな空気が潮風とともに波の音を静かに包み込む中、彼女はいちごを取り出した。 俺は不思議そうに彼女を見つめ 「海でいちごを食べるの?」 すると彼女は微笑んで「いちごの赤色と青い海って美しくない?広大な世界で食べると、その美味しさがより一層引

赤い靴の夢幻

言葉の羅列から生まれるストーリー 無造作に無作為に言葉を羅列する そのままの順番でストーリーを作る 今日はこの羅列↓↓↓ 赤い靴を履いた少女は砂時計を片手に少年の前に立つ。曲がったネクタイを整えて、さぁ映画館に入ろうか。 まるで熟したトマトのような色の靴は映画のシーンとともに、かわるがわる色を反射する。一コマ一コマを堪能するように靴もそれに応えるように。 透明な吐息は鋭い映像と同化し、まるで蝶が回っているように両方のスピーカーから聞こえる音は儚げだった。私ルールに縛られた

マスクの奥の微笑み

僕のバ先の店長は誰にでも優しくて 誰にでも平等で ちょっと嫉妬しちゃうほどお人よし そんな店長をみる僕は不愛想で表情もなくて 自分でもがっかりするほどだ いつもマスクをしているから余計に感情が見えなくて だいたいの人に誤解されるが仕方がない 店長だけが僕のことを理解してくれて それだけで救われる 店長の優しさに触れるとマスクの下で 誰にもバレないように、ニヤついてしまう 真っ赤なほっぺもマスクで隠れてる ゆるキャラみたいな店長は僕の癒しで どんな状況も笑って解決あの姿を

甘いいたずら

秘かに好意を寄せる彼 授業中静かに寝ていた 彼の前の席は柔道部のキャプテンで 先生から死角になっている ここぞとばかりに周りの生徒が 彼に可愛いいたずらを始めた 先生の目を盗んでは ペンで落書きをしていく 彼に気づかれないように 最後は私 手と腕はいっぱいだったから 彼のほっぺに赤ペンで書くハート この想いよ届け。 〇と△シリーズ 好きな言葉をお題として組み合わせ詩を作る 今日は 赤ペン × ほっぺ

左目の言葉たち

「先生、質問です」そばにいるだけでよかったけど、 私の心の原石は、音もなく崩れていく 映画を見に行こうって待ち合わせた昼下がり、 最初の言葉に愛があふれる 手のひらに書いた「人」の字を左目だけで見つめる 姿勢の悪い先生の授業の中の長い沈黙がすき 帰り道の鳥居、小さい頃よく来た懐かしさに浸る 手を添えてまた明日 つま先に力を入れて、遅刻寸前の坂道を走ろう メガネ姿に細い目の先生と話したくて、制服のスカーフを直す 三本目の木の下、街路樹にいる先生の仕草が無邪気で そして穏や

天気予報

「明日の天気は 晴れ、ときどき包み込む愛が降るでしょう」 甘く溶ける愛に溺れて 心は甘い蜜に包まれる 彼の笑顔は陽射しのように 暗闇を照らし 心を温かく包み込む 彼のそばにいると 時間が止まったようで 永遠に続くような幸せを感じる 二人の関係は甘く キャンディのように色鮮やかで 愛に溺れていたいと願う 晴れ、ときどき包み込む彼の愛 私の心はいつも彼のそばで 甘く溶けていたい

誕生日嘘をついたページ/記憶の日記

「こうじさん、お誕生日おめでとうございます」 ふみさんが今年も誕生日を祝ってくれる。本当に僕は幸せ者です。 だけれど、彼女は僕を見ているけれど見ていない。 あなたは誰を見ているんだろう。 日記の一行目。 彼女の大切な人が自分ではないことに気が付いた。 手に持った彼女の日記の1行目。 誰か分からない想い人への一行目を、震える指で一文字ずつなぞる。 本当は知っていたし、わかっていた。けれど、彼女が彼女を演じる限り、僕は僕であるべきだとそう思う。 もう僕は知らなかった世界へ戻

泣き声の向こう側

もし心の中を見える力があれば 嘘ばかりつく君を守ってあげられるのに 頼ってほしいけど甘えることが苦手な君を あなたを泣かせるものから遠ざけてあげるのに 何で見えないんだろう 君は本当に嘘がうまい 僕が帰った後 泣いていることを知ってるから ドア越しに君のすすり泣く声を感じてる 今すぐにドアを開けて抱きしめたいけど それは僕ではなかったことに 君が見つめる先を知ってしまったら 僕の心はまた一つ、ひびが入る 君の幸せを願うのは正しい でも本当は君を僕だけのものにしたい で

どく

最初から知っていた、あなたの心には私の居場所がないと だからこそ、少しずつ、微かにでも 記憶の糸を紡ぐ 数日ごとに繰り返す同じ言葉は 微量の毒のように あなたの意識の隅に静かに滲み込み、こべりつくように 何かが起こるたび、ほんの一瞬だけ その存在を思い出させる そんな私を、どうか許して あなたの世界の片隅に、静かに息づかせて

解放される音

「私は違う人の人生を生きてる」 理想の世界が現実と交差する お金持ちの一人っ子として描かれた私の夢物語り しかし、現実は予期せぬ道を辿る 自由とともに生きる美少女、それが私の理想的物語り 予定と違う現実が私を縛り付ける だからこれは私じゃない だっておかしいじゃん、こんなはずじゃなかった 幼い頃に思い描いていた夢とのギャップ 私の物語りの主人公は 金持ちの一人っ子 白くて長毛のボルゾイを飼って 不自由なんて知らない 自由とともに生きる美少女 それが何一つ叶わない世

涙を超えた愛

泣けば泣くほど人に優しくできると聞きました 今まで泣いてきた数は星の数ほど なら私は誰よりも優しいはずだけど 私はあなたにひどい言葉を並べてしまう あなたの優しさに埋もれてしまう自分が怖いから そうならないように必死に並べる言葉は 支離滅裂で それを受け入れてしまうあなたはアタオカで そんな私もおかしい、絶対。 愛しいあなたを失いたくないのに 感情を言葉で上塗りしてごまかしてしまう そんな罠にひっかからず私を迎えに来てくれる あなたに更に甘えてしまう あとがき 愛とはな

彼女の色

ワクワクってどうやるんだっけ ドキドキってどういう気持ちだっけ 感情を忘れるためにかけたフィルターは 何枚何十枚いろんな色を重ね カラフルだった心はいつしか 限りなく黒に近くなった 「どうしたの?」 柔らかい笑顔で見つめる彼女に声をかけた 「桜の花びら持ってきてくれたの?」 僕の肩にそれはついていて 「手にしてみたいかなって思って」 桜を彼女の指にそっと乗せる 咄嗟に出た言葉だった 「触りたかったの、ありがとう」 そういって満面の笑みを浮かべる 梅雨のある雨の日に会い

運命の糸

赤い糸だと思ったんだ 私にはそう見えていた あなたの優しは私にだけ向けられて はにかんだ笑顔と、その奥の悲しみでさえも 私には見えていたんだ だからすべてを愛した どんな顔も全部私が認めてあげたい そんな弱いところも そう思っていたけど なんか、違ったみたいだね ハサミできっちゃお こんな赤い糸 ぐちゃぐちゃに絡まった赤い糸は 私の小指をちぎってしまいそうなくらい 喰い込んで 私の小指は真っ蒼になってた なんで気づかなかったんだろう これが愛だと勘違いしてた そんな

はなうた

毎分変わる君の感情 はなうた交じりのご機嫌が 花を咲かせるように 感情に忙しい君の まゆげ、眉尻、口元が かわるがわる楽しませる 君の感情が、空に浮かぶ その瞬間、瞬間が 僕の世界にも花を咲かせる