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儚くて美しい物語り

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儚くて美しい世界ってどうしてこんなに魅力的なんだろう。
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#恋

赤い金魚と僕の物語り

風が止み、夕焼けが空を染める頃、静かな町の一角に佇む古びた家。 早くに両親を亡くし、姉は嫁ぎ、広い家にただ一人。生きるために生きている。三十路を目前にし、僕は考えることを諦めていたそんな人生について向き合っていた。金魚鉢の前に座り、水槽の中で穏やかに泳ぐ「金魚」に話しかけて。それは、投影していたのかもしれない。金魚鉢で飼いならされる金魚と僕を。 姪っ子がお祭りで手に入れたその金魚は、飼い猫を理由に僕のもとへと託された。とても小柄で泳ぎ方が少しだけ変な真っ赤な金魚。定期的に水

名もない物語を生きる

この物語の結末をどうしようか ハッピーエンドになるのか ビターエンドになるのか 君とならどんな結末にしようか 「君」という登場人物が 僕に与える影響を考えたい 君だからあの結末にしたいって 僕だけがそう願っていたらごめんだけど 君が思う結末と僕が思う結末が もし一緒ならどれほど嬉しいだろう 君が僕を知ってくれたあの日から 僕の物語りはクライマックスで ハッピーエンドを探してる 君と出会う日までの物語が 全てあの日の為にあったのだから もし全てが夢だとしたら、どうか覚め

季節外れのアジサイ

夏の太陽に負けてしまった君が 枯れて儚く散りそうだ 梅雨からずっと咲き誇っていた君の 生命が尽きた瞬間か 夏の暑さのせいなのか 僕の怠慢なせいなのか ただ本当に終わったのか 梅雨が好きだった君はあまりの夏の暑さに 生きる希望を失いかけては まばゆい太陽を睨みつけ、怒って 変わらない環境に愚痴を重ねて。 進むべき道はいろいろあっただろう どうすればよかったのかなんて結果論だ まだ大丈夫だろうと めんどくさくて君の生命力を盾にして ほっていたのは僕なんだから。 今更後悔し

消える、夕空

昨日まであんなに輝いていた 君の笑顔は、今は遠い夕空のようだ 夏の匂いとともに風が運ぶ、 あの時の笑い声も、汗ばむ手のひらも 全部、淡いオレンジに染まって溶けていく 夏の夕空を見て、寂しく感じた 昨日始まったような夏が もう終わってしまいそうだから 君の笑顔は夏の青い空のようで 君の優しさはまるで白い雲 僕はその空が好きだった 秋が近づく夕空を見ると 君の笑顔が消えていくようで 少し苦しいな 夕空が消えるたびに、僕は焦がれる 消えゆく空の彼方には、 もう手の届かない思

刹那の出会い

海辺で見かけた、真っ赤なワンピースの少女 夕焼けが彼女の姿を赤く染め、夏の逢魔が時は 幻想的な輝きを増す彼女を、もっと魅力的に見せる 風に舞う髪、揺れるワンピース、麦わら帽子を抑える白い手 —あの日、風が運んだのは、ただの砂か、それとも時の粒か… 何を感じているのだろう、何を思っているのだろう その視線がこっちを向けばいいのに、と願う 僕の浅はかな想いを許して欲しい もう会うことはないだろうけど、僕の記憶に刻まれたその一瞬の輝き 夏の夕焼けが燃える彼女のシルエット 消え

うつろい儚く散れますように

声が、声が。出そうとしているのに出てこない。どうしてこうなったのか全く覚えていないけれど、私はどうやら死んでしまったようだ。そして病む私。死んでも病んじゃうんだ、つらい。 目の前には夫が私の名前を呼びながら泣いている、ねぇ私ここにいるよ? もう何十回何百回、いや何万回と叫んだけど私の声は届かなくてそれでも彼の時間は進み続けることに後悔している。 知らなければよかった、あなたがこんなに私を思っていただなんて。私が死んで20年。変わらず私を愛してくれている。なんでそこまで私にこ

炭酸刺繍【企画に参加】

水槽のポンプからは炭酸のように泡がぶくぶく 金魚は刺激的に泳ぐ 泡の中に映るは、過去の記憶の断片 記憶の糸を紡ぐように、泡があふれ出す しゅわしゅわはじけ飛ぶ泡は自由に舞いあがり まるで手仕事の織り成される刺繍のように 繊細で美しい緻密なデザインは 甘美な思い出をそのままに 光を反射し心を動かすキラキラ あの人を思い出させる記憶がパチパチと 目に浮かぶ笑顔、忘れもしないあの日 抜けてしまった炭酸が手のひらでじっとりと まとわりつく、水ですべて流せればいいのに 淡く切ない

彼女の色

ワクワクってどうやるんだっけ ドキドキってどういう気持ちだっけ 感情を忘れるためにかけたフィルターは 何枚何十枚いろんな色を重ね カラフルだった心はいつしか 限りなく黒に近くなった 「どうしたの?」 柔らかい笑顔で見つめる彼女に声をかけた 「桜の花びら持ってきてくれたの?」 僕の肩にそれはついていて 「手にしてみたいかなって思って」 桜を彼女の指にそっと乗せる 咄嗟に出た言葉だった 「触りたかったの、ありがとう」 そういって満面の笑みを浮かべる 梅雨のある雨の日に会い

凍てつく想い

息をのんだ 君は見えてはいけない人なのかと思うほどに 美しく、透明な、悲しい目をしてた なぜそんなに悲しんでいるんだい 何をそんなに見つめているんだい 君の視線を独り占めしたいと思ってしまった 光にかざしたビー玉のような美しさも 今にも泣きそうなその悲しみさえも 触れたいと思ってしまった 君の冷たい手が僕の肌に触れると まるで氷のような冷たさが僕を貫通し 身体の奥までしみ込んでいった あとがき 恋は一瞬