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しつれん

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どんな過去もあなたを作る道* 苦くて甘くて切なくて辛くて 感情をたくさん味わって”あなた”を作ろう
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2024年3月の記事一覧

波紋の中に

終業式の帰り道、昨日ふった雨の水たまり。 照り返して映る二人の姿からは、少年のような笑顔が輝いている。ちょっと大きめの水たまりの前で二人は立ち止まる。 「なぁ、もしこの水たまり飛び越えれたら好きな人を教えるゲームな」 なんの脈略があっていってるのかわかんなかったから 「飛び越えても飛び越えれんくれても、最悪じゃん」って鼻で笑った あいつはじゃぁ俺からーって、明るい眼差しで無邪気な笑顔が口角に浮かび上がる。スラっと伸びた手足が羨ましい。そして彼は、軽々と飛び越える。 「3組の

笑う雨

穏やかな夜、静かに雨は降る 月も星も顔を見せない空、窓ガラスに滴る雨をなぞる 悔やんでも戻らぬあの日を 窓ガラスを伝う雨滴の流れをなぞっても無駄だと知っているのに 私は窓辺に座り、遠い過去を思い出す もっと素直だったら、あの子みたいだったら 彼との別れの痛みが、時折顔を覗かせ 私の心を押し潰す あの時に戻れるなら、今の私なら 今更考えても仕方ないことばかりが心の中でループする 過去の記憶が蘇り、ため息と後悔の念が心を覆い尽くす あの日を思い出す雨を見つめては ため息とやり

幸せのレシピ

幼稚園から一緒のあの子は、すぐに流される あの人が今きになっててー あの子と最近気が合うんだよねー 気になる人とは、ちょっとしたことですぐケンカしたり 嫌いになったり、ほんとに忙しいヤツ。 今日は雨ですることなくて なんとなく入れたライン「暇ー」 既読になったのは夕方だったから 気になる人と遊んでたんかなって いつものパターンだし、俺はここにいつもいるんだよって 言いたいけど伝わらない想いに蓋をして 「既読スルーすんなよ」って軽く返す それでも返信ないから、何かあった

大さじ3

最近見かけた先輩に一目ぼれ 見た目も、部活も、仕草も 全部カッコイイ ラインもすぐ既読、即返信 脈ありじゃない?って盛り上がってたのに 親友があっさりと あの人彼女いるから諦めたほうがいいよ。 さっきまで応援してくれてたじゃん? あんたの為に言ってあげてるじゃんって それ先輩の前で言う? 一人舞い上がってた私がばかみたいじゃん もう全部どうでもよくなって一人で帰った 何もしたくない、誰とも話したくない なのに、こんな時に限ってあいつからのライン 「暇ー」って「既読スルーす

始まりの海

一人きりのホテルは、私には広すぎた マグカップにコーヒーを注ぐ時間さえ、長く感じた 潮の香りに涙を引き連れて 孤独が部屋を包み込む、 静寂が心を満たす中で、 希望の灯りがゆっくりと揺らめく。 失恋の痛みが、胸をえぐり 彼との思い出を抱きしめて 私は眠りにつく 波のリズムが過去の痛みをやわらげ 空の青さが未来への道しるべとなる 新たな旅が幕を開ける この場所で 喪ったものよりも 手に入れるべきものがあることを知った 一人きりのホテルで 私は再び生まれ変わる 静けさの

あめなみだ

今日は雨降らないって言ってたじゃん 枯れた心が静かに息をひそめている 空は突然暗くなり、約束を破って雨が降る 雨粒が頬を伝うたび、よみがえる想い さっき流し忘れた涙が、私の心を洗い流す 誰にもバレずに、心の痛みとともに ちょっと遅れてやってくる 涙も心も すべて時間差があるんだね 彼の声が聞こえた気がして振り返るけど 長い長い電車が私を遮った もう遅かった、全部時間差のせいだ 雨が涙を連れてきたんだね 雨が止むころには 電車も通り過ぎて 涙も心も乾く、雨よありがとう

長い長い坂を もう一緒に歩くことはない あなたは新しい道へとダイブする また僕は置いてけぼりで あなたの後ろ姿をただ眺める もうあの頃とは違うんだと言い聞かせ 振り返ることなく前へ進む後ろ姿は美しい やっぱり行ってしまうんだね ただ僕は自分の見つけた道を あとは君のように信じて進むだけ あとがき 別れと新しい始まり。 長い坂道を登る人々は、それぞれの道を選び、新しい未来に向かって進んでいく。置いてけぼりに感じてしまうこともあるが、過去を振り返らずに前を向いて進む決意

86%の彼

放課後の教室 この後どこ行くかワイワイ話してる いつもの光景、いつものメンバー 女の子2人男の子3人は中学からの仲良し5人組 私の居場所だ 彼はいつも通り私の隣の席に座っていた 「今日はいい天気だね」私に話しかける 「カカオ86%だよ。君の好きなやつ」 彼はそう言って私にチョコを渡す 彼は私の目を見て笑った この少年のような笑顔に私は弱い。 中学の時から身長が20センチ伸びた彼は サッカーをしていたから筋肉もあって 更に優しい。 学校でモテモテだ。 そし