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時計の契約(コントラクト)

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5歳の時、颯空(そら)はじいちゃんを亡くし、その深い悲しみに心を閉ざしていた。しかし、一冊の不思議な本と共に彼の人生は大きく変わり始める。 失われた家族への思い、過去への後悔、そ…
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#世界

時計の契約:第3章10時

第3章:螺旋の果て10時:闇と光の螺旋 「・・・兄さんは、悪魔を信じる?」一体急に何を言っているんだ? 「悪魔って、ゲームや本に出てくるあの悪魔のこと?」何か知っているような気がするが思い出せない。 俺はさっき見た夢のことを伝える。じいちゃんが手招きをして時計の表紙の本を開かせ、本が光輝いたという夢のことを話した。黙って聞いていた時翔だったが驚きと困惑の表情を浮かべている。そういえば、夢の最後にじいちゃんが何かを耳打ちしていた。俺はその言葉を復唱した。 「ナア・ヴィラル・

時計の契約:第3章12時

12時:時の魔法書 【遙の世界】 ここんところ寝てもすぐに目が覚めてしまう。体が昨日より確実にだるくなっていくのを感じていた。今日もなかなか眠れなくてぼーっと天井を見つめていた。だんだん瞼が重たくなって、夢と現実の狭間で意識がふわふわしていると、遠くから誰かの声が聞こえる気がした。 「兄さん、兄さん」誰かがお兄さんを呼んでいるようだ。その声はだんだんと大きくなり、ついには耳元で 「兄さん、兄さん」と肩を叩かれた。振り返るとそこには見たことがない少年が立っていた。俺には弟はい

時計の契約:第4章15時

第4章:交差する運命15時:命の光交差点 時の本を開いたまま表紙を見てみる、指先でなぞるとその光沢が心地よく伝わってくる。手に感じる本の重みは、その中に秘められた力の象徴であり、未知の可能性に満ちた存在を感じさせる。部屋の中には静寂が広がり、悪魔の不安げな表情がその中に溶け込むように浮かび上がる。その眼差しは、新たな淵から抜け出すような虚ろさを帯びていた。   「なぜ、この本に悪魔が宿るのか・・・」 俺の問いかけが部屋に響く。その声には疑問と不安が入り混じっていた。時翔の表

時計の契約:第4章16時

16時:鏡の向こうの旅路 「急がなくちゃ」時翔がささやくように言った。 その言葉に俺はざわついた。時翔の声は静かだった。その背後には切なさと焦燥が滲んでいた。鏡越しに映るその顔は、俺ともじいちゃんとも遙とも目線を合わせない。俺と遙は世界線が違うだけの”俺”。 だけど、少しだけ違う感じがする。時翔は遙と過ごした時間もかけがえのないものだったのかもしれない。 遙はそれをよく分かっていた、だから時翔の両手を優しく握り向かい合っていた。何か話しかけたようだったが俺には聞こえなかった

時計の契約:第4章18時

18時:魔法学校の秘密 俺たちは向こうに見える魔法学校へと向かった。その場所はゲームの始まりであり、冒険の原点だった。本当にゲームと同じ世界のようで、精巧な建物や背景がとても美しかった。   まずは、古代の魔法の書を探すための地図を探すところからだ。確か入口付近にいた天使に話しかければよかったはず、少し離れたところにそれらしき天使を発見した。俺たちはそこを目指し歩みを進めた。予想とは裏腹に天使に触れるとあっけなく地図をもらえた。この世界は城のような魔法学校で、とてつもなくで

時計の契約:第4章19時

19時:魔法の宝庫と謎めく光 遙もまた、同じように苦しむ俺を見つめながら、無力感と絶望に打ちのめされた。すると悪魔たちの細くて長い指が本に触れた。その瞬間、体が空中に浮き地面へと落ちた。息苦しさが一気に和らぎ、心の中に深い安堵が広がった。 「ありがとう」とまた同時に感謝を述べた。憎むべき悪魔だったはずなのに、いつの間にか恐れも憎悪も消えていたことに自分でも驚いている。ただ今は時間がない。急いで次へ向かわなくては。俺たちは立ち上がり、パズルを持って次の目的地へと向かった。  

時計の契約:第5章23時

23時:時の結び目 「そして、家で怯えていた時に時の本が俺の憎悪を感じ俺を喰らったんだ」悪魔たちはそうやって本の中に閉じ込められてしまったようだ。その記憶を辿ると、暗闇の中に取り残されたような孤独感が包み込んだ。だから、退院して連れて帰ってからすぐ居なくなってしまったんだね。 あぁ、俺はまた何も知らずにのうのうと生きていたのか。深い傷をさらにえぐられる気分だった。過去の出来事を振り返り、自分が何も知らずに過ごしてきたことに対する悲しみと後悔が胸に広がるのを感じた。静まり返っ

時計の契約:最終章25時

最終章:希望の光 25時:日常 この本は小さい時にじいちゃんがくれた本だった。あまり本が好きじゃなかった俺だったが、この本に出てくる黒猫がとても気に入っていた。だから小さい時に見つけた黒猫に迷わず、本の中の猫と同じマレヴォルと名前を付けたんだ。小さい頃は難しくてよくわからなかった本だったが猫のシーンだけは大好きだった。俺は本をパラパラめくってみた。   ある双子の少女はとても裕福でしたが母を病気で亡くしました。数年後新しいお母さんがやって来ますが、双子が気に入らないのでお父