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命の炎、魂の舞。

先日、京都の北の方の料理屋さんに行ってあることを思い出した。

数年前、東京のとある大社長から、

「今、京都なんだけどさ、久しぶりに会おうよ。ランチ行こう。店は任せるからさ」

と、突然の電話が入る。
時計は午前10時半だった。

こういう時にスマートな返事と対応ができるのがかっこいい営業マンだと思い込んでいる僕は、急な予約と無理難題を聞いてくれる雰囲気のあるお店を数軒準備している。



「料理は50席くらいの朝食バイキングだけなんだけど、またホテルやるからさ、その時はゼリ君また頼むよ」

約1時間後、久々に会った社長と食事をする。とても有り難い話だった。社長が座った席の後ろには巨大な水槽があり、たくさんの魚達が泳いでいた。


その中で1匹の鯛が、背泳ぎをしていた。


思わず笑いそうになってしまい、社長の話が全然入ってこなくなる。背泳ぎの鯛が何度も何度も視界に入ってくるというか、僕へのアピールが物凄い。

ちゃんと話を聞いている人の顔真似でどうにかその場をやり過ごそうとするが、背泳ぎの鯛の動きは弱るどころか激しさを増す。荒ぶるとはこういうことだと僕に示すように超乱ペースで水槽の中を駆け巡る。

昔、真夜中にポケモンGOをしていてルージュラを捕まえようと墓地に行った時、セミに足元を襲われて怖くて死にそうになったことを思い出す。

あの時のセミもそうだった。命果てる時、その魂は何よりも強く激しく輝く。

荒ぶる背泳ぎの鯛は、正に魂の舞を僕に見せてくれていた。赤い鯛はまるで人魂にも見えて、彼は社長の後ろで命の炎を燃やし続けていた。

(いやいや、店の印象悪いやろ…はよ取れよ…)

そんなことを心の中で呟くと思わずにやけてしまい、堪えることに必死で社長の話が全く入ってこなくなった。

元々B型特有の人の話を聞かない性質をしっかりと持っていることもあり、あの時はその後にちゃんと少しだけ困った。


    あの鯛はあれからどこへ行ったのだろう…。



こういうことを考える時、物を書くことが趣味で得をしていると本当に思う。

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