見出し画像

公開にむけて。【あと2日!】


あの頃の私は、世に言う"家出少女"だった。

振り返れば一年前、今思えばもう一年も経つのか…という感じだが、去年の今頃は私が所属している養成所の修了公演があった。あるはずだった。新型コロナウイルス感染拡大の危機感が東京でも緩やかに広がって多くの団体が公演を断念したのを私も当事者として見ていた。
本当に全てがあっけなく、ただ扉がぱたんと閉じたそんな感覚で気づいたら宣言がでていて生活の自粛が始まった。
沢山ある不安の中でやりきれなさと、家から出るという行動にかなり気力を使う現実がしんどくて、その中で本当に気にしてんのかてめーらという人を見るたび聞くたび嫌な気持ちになって、友人に電話で泣き叫びながら六本木を徘徊、勢いで親に相談もせずマンスリーマンションを契約して「本当に大丈夫だから。ごめん。」とだけ言って家を出たことを本当についこの間の事のように覚えている。

そんな時出会ったのがこの『最後の奇蹟』という作品だった。きっかけはなんかよくあるような感じで、これ読んでみねぇ?という藤本くんのお誘い。オンラインで読むのとかどんな感じなんだろう…という軽い気持ちで読み始めたら、時差が凄くてやりずらいのなんの。でもこのやりずらさがある中でも繋がろうとする人と人のありさまと、『最後の奇蹟』の中にあるものが、上手く説明できないけれどすごく"合う"と思った。

その時は楽しかったね〜!でおひらきになったのだが、"合う"と思った感覚と、これは今やるから意味がある演劇だという直感を捨てられず、その後結局公開を前提にやりませんかと私から連絡をとったのだった。

その作品が、前より色々なことに慣れてしまった今の世の中に出ようとしている。
演劇も前と状況は大きく違えどなんとか公演出来るところまでは戻ってきている中で、今zoom演劇?と思われるかもしれない。

でも。
あの頃の私は、私たちは、たしかにいた。
いたんです。

それも作品の良さと一緒に感じていただければ幸いです。

長くなってしまいましたが最後に。
私自身のわがままと、ねりまのたぬき達の締まらないポンポコ会話に約一年も付き合って下さった作・演・編集のフジタタイセイさんと、劇団肋骨蜜柑同好会さんに大きな感謝を。本当にありがとうございます。


公開まであと少しですが、ちょっとでも皆様のどこかにそっといられることを信じて。

演劇ユニットねりまのたぬき 
釜木美緒


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?