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【一日一捨】 香水の瓶

何年か前にうちでホームパーティー的なことをした。
そのとき友達が連れてきた役者の卵だという男の子がすごく良い匂いで、聞けばユニセックスの香水らしいのだけど、なんだか胸の奥をくすぐられるような、女性的なとても甘い香りだった。それまで香水なんて使ったことはないし興味もなかったんだけど、僕はその香りがとても気に入ってしまい、ブランド名を教えてもらって、六本木までわざわざ買いに行った。香水を一瓶全部使い切るというのはなかなかのことだと思うけど、わりと早くに空になった。その頃には、同じのをまた買いに行くほどの情熱はなくなっていたけれど、瓶はなんとなく捨てられずにとっておいた。

匂いと記憶は密接に結びついてるという。キャップを外せば微かに残った香りと一緒に、あの役者の卵の彼の中性的で綺麗な顔が鮮明に蘇る。そういえば今どうしてるのかなと思って名前を検索してみたけれど、役者としてはどうやら芽が出なかったみたいだ。捨てる。

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