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ゴールデンウィーク2021〜濃霧の山中にて

今年のゴールデンウィークは外出を自粛した人も多かったのではなかろうか。僕の住んでいる九州は緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置は取られていなかったが、感染者数は過去最高を記録するなど完全に危険領域に入っている実感はあったので基本的に街中に出かけるのは避けようという意識があった。


そのせいか、自然に触れたい欲求が生まれた。マイナスイオンを浴びたい。休日は家で映画を見たり本を読んだりするよりも、体を動かした方が脳がリフレッシュできるらしい。閃いてからは早かった。


熊本県に阿蘇山という世界最大級のカルデラのある山に弾丸ドライブに行くことにした。山の頂上からは壮大な景色を見下ろすことができるが、観光スポットのためもしかすると人が多いかもしれないという危惧から阿蘇にある別の草原に向かった。

広大な草原の中央にある大きな池には神秘的で、晴れた日には目を奪われる光景だ。10年ほど前に行ったことがあり爽快な気分を味わった。

今回もそんな期待を抱きながら山を登り始めたのだが、途中まで行ったところですごい霧がかかってきた。


あれ、ヤバくね…?


気づいたらもうせいぜい一メートル先しか見えないレベルで真っ白だった。雲の中かな?ってくらい。山の天気は変わりやすいが、出かけたときはわりと晴れてたのに! 霧が半端ない。ハンパなすぎる。しかしもう少しというところで到着する。目的地に向かい時速5kmの速度でのろのろと運転する。すれ違う車も同じくらいの速度で下山していたが、この霧の中運転しているなんて狂人である。

正直、命の危険を感じた。おとなしく家で韓国ドラマを見ていればよかったという後悔が押し寄せてくる…。


命からがら草原にたどり着いた。もう何も見えなかった。視界全てが白すぎた。ここが天国といわれればそうだねと受け入れざるを得ない、

車の中で一時間ほど待機した。霧は晴れない。てか、晴れるこれ…? 雨は降っていなかったので、駐車場ある道の駅のような小屋に入った。中には人がいた。霧がかかる前に登ってきた人たちのようだ。

店があって、90過ぎくらいのおばあちゃんがまんじゅう作ってた。

「こんな霧じゃお客さんも来ないし退屈ねー。あんたもよく登ってきたねぇ。まんじゅう、食うかえ?」

かえ?って。それよりもこのお婆さん、どうやってここまで来たんだろうと思った。山に住んでる仙人(仙女?)かな。
ただあまりにお腹が空いていたのでまんじゅうを買って食べた。マジでうまかった。


しばらくすると少しずつ霧が晴れてきた。10年前に見た湖がぼんやりと姿を見せた。よく見ると馬も歩いてる。風が超強くて死ぬほど寒い。感動味わうどころじゃないくらい寒い。もう山を降りて帰ることにした。弾丸の旅もいいが、計画性も大事だ。次はちゃんと天気のいい日に来よう。何をしにきたのかよくわからなかった。まんじゅうだけはうまかった。それだけは確かだ。それだけは。

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