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働く女は「仕事と家庭の両立」を語らねばならないのか

最近、仕事で簡易的なインタビューを受けた。インタビューでは、自社の魅力をテーマに語ってほしい、と聞いていた。会社や仕事の魅力など、30分ほど質問され、できるだけ誤解なく話したと思う。誌面には500文字程度の文章にまとめられることについては承知していた。

いざ、その原稿が上がり、内容を見て、非常に驚いた。インタビューの目的に沿って、会社の魅力の一つとして「成長性」を上げたのだが、そのニュアンスは「会社の成長に合わせて自分も成長できる」と、自己成長ありきの語り口のように書かれていた。

また、インタビュワーから「女性にとって働きやすいですか?」と聞かれ、「私自身が、一般的な女性の価値観で働いていないため、わかりかねるところもありますが、社内の育休実績などを見ると、女性であることを理由に働きにくい職場ではないと思います」と回答したところがクローズアップされ、「女性にとっても働きやすい職場です」と書かれていた。この話題については、30分程度のインタビュー時間中、ほんの一言・二言発したのみである。その場にいた人であれば、私にとっていかに関心のない質問だったかもわかったと思う。

私が本当に伝えたかったことは、いかにエキサイティングな会社で、仕事に没頭できる環境か、ということだ。にも関わらず、そうしたことはほとんど読み取れなかった。「ああ、なるほど、働く女に求める言葉はこれか」と、悟りの境地になったのである。

よくよく考えてみれば、世の中のインタビュー記事は、インタビューイーの属性によって、大体似たようなテーマでまとめられているように思う。

インタビューイーが辣腕経営者であれば、世の中やビジネスを大局的に見て、洞察力や行動力を感じさせる、読者を圧倒するような内容。

キャリアウーマンであれば、自己の成長、女性ならではの視点、結婚・育児生活との両立といった、現代的な女性の成功を謳う内容。

クリエイターであれば、いかに破天荒な人生を送ってきていて、常人では取らない行動をしてきたかを面白おかしく書き上げる内容。

あまりにもステレオタイプすぎて、「本当にそのインタビュー原稿記事は、インタビューイー個人の本質に迫る内容なのだろうか?」という疑念が湧いてしまう。

私自身は結婚を望んでおらず、出産なんてもってのほかである。ポジティブな理由を述べれば、社会で能力発揮し、その実績を残すことに人生の意義を見出していて、豊かな家庭生活を営む余裕はないだろうことから。ネガティブな理由を述べれば、上記のように考えている私のもとから生まれる子どもの気持ちを思うと、かわいそうになるから。

このことを本気で信じていて、結婚にも出産にも関心がない、ただ馬車馬のごとく働く女であるわけだが、どうも世間一般の認知は「女性であれば家庭に関心を持って当たり前」というものらしい。実体験としても、私の考え方を本当の意味で理解してくれた人は、数えるほどしかいない。こんなにも平易な言葉で語っているのに、理解し合えないのだから、価値観の断絶の恐ろしさを感じる。

ここ最近、働き方改革もあり、働く女像も変化している。キャリアを築きつつ、家庭生活も円満であることが、今時の働く女のイメージなのだろう。しかしそこには、「所属組織のために行動する」「仕事そのものに対する情熱」といった、本来的な仕事人としてのあり方は浮かび上がってこない。そうした姿勢は、いまだ女性には期待されていないのかもしれない。

それでも、私は私の生き方を止められない。ステレオタイプの押し付けに不満を覚え、愚痴りながらも、自分の価値観に沿って生きることになるだろう。その実績をもって、その内世間からの評価が変われば良い、とも思う。

最後に、私は国内のジェンダーの変遷の歴史に対して敬意を持っており、今なおその過渡期であること、そして現在の行政の取り組みには同意・理解していること。女性に限らず男性も、性差だけでなく出生などありとあらゆる属性によるステレオタイプが蔓延り人々を苦しめていることを問題視していること。これらを付け加えて、締め括りたいと思う。

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