雪の日。15歳・中学3年生
雪の日は空気が澄んでいて、シンとしていて好きだ。
シンシンと、雪が校庭に積もる中、授業を受ける教室は静かで、隣の席の鉛筆の音が聞こえる。
昨晩から振り続けた雪はもう今朝には足が埋まるほど積もっていて、雪用の靴はダサくて履きたくないからいつもの運動靴で着たら案の定浸みてきてもう霜焼け寸前だ。最悪。
お母さんはコートを着ていけっていうけど、制服の上にコートなんて誰も着てないしダサすぎて絶対に着たくない。それにちょっと、紺のセーラー服の上に雪がかかるのはキレイな気がする。
こんなちょっと特別な日は、窓際の席で良かった。誰も足を踏み入れていない校庭は一面真っ白でそれを眺めているだけで退屈な授業が過ぎて行った。
ストーブのゴオゴオとした音と、石油の匂いがしている。冬の匂いだ。
黒板には、受験までのカウントダウンが書かれていて、それを見るのがわたしは嫌いだ。
強制的に、大人たちから「未来を見なさい!」って言われているようで、目を背けたくなる。
わたしはもう少し、窓際の席でぼんやりと降り続く雪を眺めるような、なんでもない日を過ごしていたいのに。
来年の今頃には、違う制服を着て、違う友達と違う先生の授業を受けているなんて、想像もつかない。一番仲良しのタカハシも、ナッチャンも、志望校が違うなんて、いまだに信じたくない。
あと数ヶ月したら私たち、ここからいなくなるなんて、そんなこときっと嘘で、ずっとこのまま中学生でいたいのに。
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