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プデュは男性消費社会の幕開けか?PRODUCE 101JAPANに見る女性向けコンテンツの構図。

アメリカで起きたセクハラや女性蔑視を告発する動き、#metooを皮切りに、韓国フェミニズム文学のベストセラーや、新しい生理用品の提唱など、女性を取り巻く社会環境について様々な動きがここ数年で起きている。
私はこの「ガールズエンパワーメント」の文脈と「男性アイドルブーム」の構造は、密接なのではないか?と考えていたので書き留める。

きっかけは先日、K-popアイドルの動画を見た知人男性に、「男性がロリアニメに萌え〜と言っているようで受け入れられない」という反応からだ。
その反応に違和感もあったが、一方で納得感のある言い回しだとも思った。
「もしかして、女性が男性を消費する社会構造がはじまりつつあるのではないか」と思ったのだった。

女性の若さを性対象とする、ロリコンという文化は1970年〜1980年代に起こり、現代まで創作の世界で活発化している分野だが、日本でのアニメ・アイドルコンテンツはロリコンカルチャーとともに発展していった部分は否めない。若さを正義とし、女子学生を性対象として消費するコンテンツは世界でも日本は異様に発達している。
2010年代に盛り上がったAKB48を中心とする女性アイドル文化も、男性主体の目線から「少女性」や「幼さ」をベースに作られている。

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それに対して「女性性や若さには消費される価値があり、しかたのないものだ」と日本の女性はどこか受け入れていた側面があったが、そんな社会の空気感が少しづつ崩れ始めたのが、近年活発化しているガールズエンパワーメントの動きだ。

SNSを通してグローバル化する価値観を持つ10代の若者たちの柔軟性もあいまって、「消費される女性性」への嫌悪感にまつわる事柄をTwitterやネットで見ない日はなくなった。
また、女性の社会進出や働き方への動きもミレニアム世代以降、柔軟化していくだろう。
そうした世界全体の動きの中で、いままで当たり前に消費されてきた女性性や若さに違和感や意義を立てられる時代の空気感になりつつある。

一方で、近年、男性アイドルにハマる女性が急増している。
いままでジャニーズ一強の男性アイドルだったが、LDHやK-pop、アイドル声優など様々な男性ジャンルが増加し、女性たちの選択肢は広がっていった。
フリマアプリ・ラクマの調査によると、女子高生の8割は自身をオタクと認めており、
渋谷109の調査によれば、20代前後の女性のオタ活に使う相場は15万円というデータもでている。
推しのためにSNSで情報を追い、グッズを買い、誕生日を祝い・・・という行動はもはや「当たり前」といっても間違っていない時代になりつつあるのだ。

また、2000年代にマスコミが取り上げ一時ブームとなったホストクラブも、近年ローランドというわかりやすいアイコンの登場や、Youtubeでのホストたちの配信によって、また注目されつつあるようだ。(渋谷や新宿で1年ほど前からホストクラブのラッピングバスを見かけることが多くなったり、かつて10代の動画コミュニティアプリだったMix channelが今ホストのライブ配信アプリになりつつある流れもありそうだ)

アイドルやホストたちになにを求めるかは人ぞれぞれではあるが、確実に「推せる対象としての男性」を求めている女性が10代以上に増えていると、この現象からいえるだろう。
コミュニケーションをSNSでとるのが当たり前になったいま、推しのためにSNSを開設し、自分だけの篭れる世界・推しへの共感のみで構築されている世界を求めるのは自然の流れだろうと思う。
(また、これはややこじつけかもしれないが、一方で「若者の恋愛離れ」がここ数年叫び続けられているのもともすれば関係しているかもしれない)

そんな中、この秋、韓国から上陸したアイドルオーディション番組がある。
毎週木曜日の夜になるとこぞってトレンド入りする「PRODUCE 101 JAPAN」だ。

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これは、「PRODUCE101」という韓国のM-net制作のアイドルオーディション番組の日本版で、2016年に韓国でスタートしたもの。
101人の練習生(様々な事務所のアイドル予備軍)たちが、11人のアイドルグループデビューを目指す番組だ。

2016年に女性101人が参加した第一回では、女性アイドルグループ・I.O.Iを生み出し、その翌年には男性アイドルグループ・Wanna oneがデビュー。
昨年行われた、AKB48と韓国のアイドル練習生の日韓合同プロジェクト「PROCUCE48」では、昨今日本のテレビ番組でも見かけるIZ*ONEがデビュー。
そして、この春から夏に行われていた「PRODUCE X 101」では、X1という男性アイドルグループがデビュー。2019年8月に公開されたデビュー曲「FLASH」は、すでに5800万回再生され、コメントも多国籍な言語で溢れており、近年のK-popブームにもあやかりグローバルな注目がされている。

略称「プデュ」と呼ばれるこのコンテンツは、中国・タイでもローカライズされ放送されている。そしてこの秋ついに、日本にPRODUCE 101が上陸。韓国のMnetを束ねるCJ E&Mと、日本の吉本興業との合同制作、地上波はTBS、WEB放送はGYAOという座組みでつい先日9月末よりスタートした。
国籍不問・日本語を喋れる未所属の男性に公募をかけ、101人の研修生が11名のグローバルアイドルグループデビューを目指す姿が毎週木曜に配信されている。

(なにをそんなに熱狂するのか・・・と思う30代以上の方は、かのモーニング娘。を生み出した、1995年〜テレビ東京で放送されていた「ASAYAN」の熱狂を思い出してもらいたい。)


PRODUCE 101の最大の特徴は、視聴者に投票権が与えられ、スマホから推しメンバーに投票をすることができる。
これは、AKB総選挙でCD1枚につき1投票権がついていたように、「アイドルを推す」ことを途端に自分ごと化させる。
PRODUCE 101の視聴者は「国民プロデューサー」と呼ばれ、参加している練習生はみな「国民プロデューサーのみなさん!」と呼びかける。
この、ファンを「プロデューサー」と呼び、受け手側の士気を鼓舞する構図は、2005年からバンダイでリリースされ、国内の女性アイドル戦国時代の盛り上がりとともにアニメ界にもアイドルコンテンツブームをもたらした「アイドルマスター」と同じ構図だ。
このように、ASAYAN・AKB総選挙・アイドルマスター的な様々なヒットコンテンツ要素を含み、さらに「グローバル」という視座まで盛り込まれた「PRODUCE 101」が、熱狂を産まないわけがない。

そんな「PRODUCE 101」には前述の通りI.O.IやIZ*ONEのように女性を選ぶパターンと、今回の日本版のように男性を選ぶパターンがあるが、今回上陸したのは男性パターンであった。
Twitterでは日々、#PRODUCE 101 JAPANのタグで「誰くんに投票してください!」の話題が飛び交っている。かつて、AKB総選挙で主に男性を中心に女性を投票していた構造の、逆バージョンが起きているのだ。

また、101人の練習生の課題曲になっている「ツカメ~It's Coming~ 」の歌詞も興味深い。ジャニーズに代表される男性アイドルの歌詞はどちらかというと、「男性が女性をリードする」ものだ。「君を連れて行く」「君に与える」といった、「ワタシ」の手を引っ張ってどこかへ連れて行ってくれる王子様像が描かれている。
が、「ツカメ~It's Coming~ 」は、「僕をTOPへ連れてって」という受け手(女性)主体の歌詞だ。

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Wow wow Pick me up
(Oh ツカメ ツカメ)
Wow wow Pick me up
(It’s coming It’s coming, yeah)
ここに居るよ この手を取って
僕をTOPへ連れてって

Source: https://www.lyrical-nonsense.com/lyrics/produce-101-japan/tsukame-its-coming/

もちろん、オーディション番組という背景があるからこの歌詞なのだが、それでもこれまで手を引っ張る側で描かれがちだった男性が、「手を引っ張ってくれ」と歌う状態は日本男性アイドルにおいてとても新鮮だ。

こうしたコンテンツが日本社会に受け入れられていくのは、現代の象徴なのではないかと考える。
アイドル戦国時代と呼ばれた2000年後期〜2010年代頭の「女性の若さを消費して行く」ことに違和感を持ち始めたこの数年の流れから、今度は女性が男性を消費(個人的には語弊ありますがニュアンスとして)していく社会の流れが起きているのだ、と感じるのだ。

ガールズエンパワーメントの流れとともに活発化して行く(であろう)女性向け男性コンテンツ。
これまでの女性アイドルコンテンツを女性消費と見るか否かによって、今後加速するであろう男性コンテンツを消費と呼ぶか否かは変わるだろうが、着実に少しづつエンタメの世界にもこれまで見えていなかった女性のニーズが現れてきている。(ヒプノシスマイクの世界観の設定もそうだよね)
それは、女性も働き続ける社会が醸成されていき経済的な余裕を持った女性が増えている影響もあるだろう。
こうした先にあるものが、極端に一方の性を搾取するものであってはならないが、社会のニーズを満たして行くコンテンツが今後も生まれて行くことを見続けたい。

書きたかったけどうまく書けなかったことと注記:
女性の男性アイドルへの感情には、征服欲も含まれるのか?これは男性が女性アイドルを愛でる感情に征服欲が含まれると仮定した場合。周りの男性アイドルオタ女性は年齢もあって母性が先行することが多いが、若さや状況に応じては束縛欲、征服欲ももちろんあるよな。あとリア恋というのは男女共通であるよね。

男性アイドルのオーディションは真新しいものではないし、LDHだってオーディションだし、時代性とかじゃないだろ!っていう見方もあると思うけれど、こういった見方もできるよねっという一見方です・・・。
「女性性も男性性も消費され、搾取されるものではないとそもそも思ってます。」というのを前提に置いた上で、いまの社会の流れはこうかな〜?っていう一意見でした。


【PRODUCE 101 JAPANは毎週木曜21:00からGYAOで配信中だよ!!!】

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まだ3話目だ、間に合うぞ!!!1話2時間、たっぷり楽しめます。
毎日公式サイトから投票もできる!
国民プロデューサーのみなさん、12月まで楽しもうね!!!



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