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さへる畑 presents「フェアトレードの店」 差し伸べられた手を、世界に返すために

去る7月20日(土)、猛暑と雷雨に見舞われながらも、当事者と支援者の並々ならぬ熱意と尽力でなんとか乗り切った、第5回「難民・移民フェス」。参加者のみなさんは体調を崩されませんでしたか?

さへる畑もすっかりフェスの常連になりました。今回のテーマは、ずばり「フェアトレード」です。

サヘルさんがこれまで世界各地を旅して回った、母国イラン、ヨルダン、サウジアラビア、ウガンダ、バングラデシュなどの、路上や難民キャンプ。そのほとんどは日本人になじみが薄く、ともすれば世界から忘れ去られている地域ですが、そこで生きる人々との出逢いを、サヘルさんは大切なライフワークとしてきました。

「自分の体験を振り返れば、数々の差し伸べられた手があった。“一方通行の支援”ではなく、彼ら・彼女らの勉学や就労、自立に少しでもつなげられたら——」。今回の出品には、そんな切なる願いが込められています。


フェアトレードって何?

「フェアトレード」とは、貧困のない公正な社会をつくるために、適正な報酬で取引すること。もともとは、「経済的に弱い立場に置かれがちな発展途上国の生産者(農家・職人など)と、裕福な先進国の企業・消費者が対等に行う貿易」を意味していました。

ここ数十年間、それが転じて、NPO・NGOなどの支援団体が現地の人々の生活向上を目指し、身近な素材と技術を使ってできる食品・手工芸品・服飾などの生産を通して現金収入を得られるようにする活動として、広く知られるようになっています。

学生時代に初めて訪れたインドで貧しい子どもたちにお金を渡し、母から厳しく叱られたサヘルさんが教わったのは、「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えること」。これは、サヘルさんが折に触れて、いろいろな場で語っているエピソードですね。

さて、気になるのは、今回のフェスで披露した品ぞろえですが……。中東、アフリカ、アジア各地からはるばる海を越えて渡ってきた、美しい民族文化に彩られた魅惑のエスニック雑貨たちを、ここで一挙公開しちゃいましょう!


◆カシュガイ族の人形(イラン)

色鮮やかな民族衣装に身を包んだ、カシュガイ族の若い女性を模した“バービー”

さへる畑メンバーの間で、通称「イランのバービー人形」と呼ばれた美女。目に映える原色のスカートと、きらびやかな髪飾りや長い襟のアクセサリーが綺麗ですね♡

カシュガイ族は、イラン南西部に連なるザグロス山脈に近い牧草地で、ヒツジやヤギの群れとともに移動して暮らす遊牧民です。たくさん取れる羊毛を生かした、「ギャッベ」という質の高い手織り絨毯(※1)でも有名になりました。

※1 2010年、ギャッベの手織り技術がユネスコ世界無形文化遺産に認定

それにしても、あれっ? 昨年公開されたアメリカ映画『Barbie』に登場しそうな雰囲気が漂っていますが……どのようなルートで作られたのかは、みなさんのご想像におまかせします(笑)

ただ、人形の目の色が澄み切った水面のように青いのは、イランの多民族性の表れでもあるかもしれません。下の少年の写真をご覧ください。やはり透明な瞳が印象的です。

〈上〉伝統的な帽子を被ったカシュガイ族の少年/〈下〉ギャッベを織る女性たち from Wikimedia Commons

〈テュルク系民族のカシュガイ人〉とひとくちに言っても、さまざまな部族の集まり。現代のイランでは、ペルシア語のみを母語とする国民は約半数で、その他の人々は各民族言語とのマルチリンガルだといわれています。

一体の人形を眺めるだけでも、これだけ豊かな民族性を感じられるのですから、実に奥が深い!


◆布製品 各種(イラン)

カラフルでオリエンタルな異国情緒たっぷりの、布地の品々も充実しています。それでは一つ一つ、ご紹介していきましょう。

偶像崇拝がタブーとされるイスラーム文化では、代わりに「アラベスク(アラビア風)」と呼ばれヨーロッパなどでも愛されてきた、精巧を極めたさまざまな模様が著しく発展しました。幾何学文様、植物文様、文字紋様の3種類の型は、中東各地の建築や美術品のあちこちに美しく溶け込んでいるので、それぞれの意味を知っているとより楽しめるはず!

〈左〉テーブルクロス(正方形/円形)
真ん中の青地のテーブルクロスをご覧ください。線対称の幾何学文様と、植物文様が入り混じったデザインが特徴的ですね。

特にイランでは、水が貴重な土地柄、とりわけ青色が美しいと考えられてきました。そして花や草木は、生命を表しています。

〈中央〉布製エコバッグ
バッグに書かれたペルシア文字は「گز آنتیک(Antique Gaz)」で、イランの菓子「ギャズ」で有名な製菓・菓子販売店です。フランスのお菓子「ヌガー」は、中東で生まれたこのタイプのソフトキャンディーに由来しているとか。

黄色の布地には、“イランの真珠”と称賛されるほど美しい都エスファハーンで有名なイマーム広場(※2)のイラストが描かれています。

※2 1979年、ユネスコ世界遺産に登録

〈右〉スカーフ 各種
シーラーズで仕入れたスカーフ。日本の街中で身に着けて歩くには、なかなか勇気がいりそうな華々しさのデザインですが(笑)、ここでも美しい多種多様なイスラーム模様があしらわれていますね。

クルディスタン産の黒いスカーフには、オーガンジー地に細やかな刺繍が施されています。


◆ミスバハ(サウジアラビア)

次の写真右上にあるのは、イスラームで用いられる玉を連結した祈りの法具で、別名「スブハ」や「タスビ」とも呼ばれます。

他の伝統宗教でも、似たような形の法具が身近に使われていますよね。仏教では数珠・念珠、キリスト教ではロザリオ(カトリック教会)やコンボスキニオン(正教会)、ヒンドゥー教のジャパマラなど。

今回、さへる畑で出品したミスバハは、オーソドックスな木製・マーブル(大理石)製や、ヤシの形をしたユニークなものもありました。


◆インテリア壁掛け(イラン)

若いペルシアの女性が描かれたタイル画の壁掛け。それぞれに、鍵を掛けられるフックも付いています。

タイルの絵を、さらに拡大してみましょうか。

バラの花、緑の鉢植え、金魚、小鳥、セタール……。これらのタイル画だけでも、ペルシア文化ならではの要素がぎっしりと詰まっています。

鳥は詩人を表しており、ペルシア美術のそこかしこで見られるモチーフ。さすがは、ハーフェズやオマル・ハイヤームなどの、多くの偉大な詩人を輩出した国だけあります!

そしてセタールは、ペルシア語で「三弦(سه‌تار / se+tar)」という意味の楽器。はるか西域からシルクロードを伝わり、中国経由で沖縄の三線(さんしん)や日本の三味線(しゃみせん)に形を変えたという、壮大な歴史ロマンを秘めています。そして誰でもおなじみのギターは、西アジア辺りが発祥だといわれていますし、別の楽器とはいえ、セタールがインドの「シタール」の語源になった説もあるようですし……なぁんだ、みんな一緒じゃないか~♪

いずれにしても、古来、ペルシアの人々がいかに音楽や詩をこよなく愛したかがうかがわれる、なんとも素敵なインテリア装飾雑貨たちです。


◆アクセサリー(イラン)

さて、イランからは最後のアイテム紹介になります。

ネックレスやピアス、指輪のチャーム部分に注目してみましょう。何やら、文字っぽい形に見えますよね? そうです、まさにペルシア文字をそのまま飾りとしてデザインした、チャーミングなアクセサリー♡

包装用の紙袋に記されたペルシア語と日本語は、フローラお母さんが対訳でそれぞれの意味を直筆で書いてくださったもの

先述の理由から、モスクをはじめとするイスラームの建築では、アラビア語の文字が装飾として使われてきました。そこから発展したのが、神の言葉を美しく表現する「文字文様」や「アラビア書道」です。

その名残からか、現代イランでも写真のようなアクセサリーを製作する職人やアーティストがたくさんいて、今なお人気を集めているのでしょう。こちらのアクセサリーでは、「愛」「あなたと私」「あなたがいなければ、全てを失ってしまう」など、愛する人への贈り物として最大のメッセージが、ペルシア文字でダイレクトに表現されています。


◆マーガレットさんの品々(ウガンダ)

今年2月、サヘルさんがウガンダに到着して最初に訪ねたのは、首都カンパラに住む地雷廃絶運動家のマーガレット・アレチ・オレチさんでした。

マーガレットさん自身が地雷被害のサバイバー(生存者)であり、右足を失いながらも、「地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)」の大使として国際会議などに出席し、被害者を取り巻く状況や課題を伝える講演活動を続けています。

このほど、マーガレットさんからお預かりしたバスケットやポーチなども、併せて出品させていただきました。

〈左〉キャンディーなどを入れるバスケット/〈右〉ビーズをつなぎ合わせて作ったポーチ

マーガレットさんとサヘルさんの対談は、特定NPO法人「難民を助ける会(AAR Japan)」のウェブサイトに詳しく掲載されています。ぜひご一読ください。


◆ポストカード(ウガンダ)

AAR Japanから委託を受けて、サヘルさん自身がウガンダで撮影した写真がポストカードになりました。

さまざまな機会で、サヘルさんの直筆サイン入りで販売しています。

※本品の売上は全額、AAR Japanへ寄付させていただきます


◆ペン/チャーム/キーホルダー(バングラデシュ)

ウガンダに続き、サヘルさんが翌月に渡航した先はバングラデシュ。ロヒンギャ難民キャンプの視察とともに、5年前に訪ねたストリートチルドレンや女性たちと再会するためです。

以前から、サヘルさんは若い日本人夫妻がバングラデシュで立ち上げた現地NGO「エクマットラ(Ekmattra)」の支援活動に関わってきました。

当NGOでは、経済的・精神的に自立して生活することが困難な貧しい女性たちが、手工芸の製作・販売を通してサポートを受けられるように、ハンディクラフト工房も運営しています。

そのクラフト製品が、今回出品したキラキラペンやラッキーチャーム、キーホルダー。女性用の民族衣装サリーを飾るストーン「ULKA(ベンガル語で〈流れ星〉の意味)」や、バングラデシュの特産品であるジュートを使い、彼女たちが一つひとつ手作りしました。

これらの売上はそのまま、路上生活を余儀なくされている子どもたちの教育や、貧困の状況に置かれている女性たちの収入になり、安定した支援につながります。


◆絵葉書・メッセージカード
(コンゴ/シリアなどから逃れてきた子どもたち)

100円ごとに寄付してくださった方々へお配りしたのは、かつてサヘルさんが難民キャンプで出逢った子どもたちからの絵葉書やメッセージカードでした。

多忙な合間を縫って、サヘルさん自身がメモを記して貼りつけました。どうか、子どもたちの切実な想いが、手に取った一人ひとりのお客さんへ届きますように。


《編集後記》

フェス当日、別の仕事現場からまっすぐに駆けつけたサヘルさんも、途中参加で売り子さんに変身しました(お疲れさまです!)。正直、自分もお客として、こんなペルシア美人に接客してほしいぞ~(爆)

忘れてならないのが、事前準備から当日の後片づけまで、それぞれ役割分担しながら奔走した、さへる畑のメンバー。また、写真には登場していませんが、バックオフィスでがんばっていた縁の下の力持ちのメンバーにも感謝です。もちろん、都内のフェスに参加できなくても、いつも遠方から応援してくれている畑メンも、心強い存在に違いありません!

そして店舗を訪れてくださったご来場のみなさま、خیلی ممنون(どうもありがとう)♡

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