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大型風力発電計画。ここに住み続けるかどうか、揺らぐ日々。【②個人的影響】

広島県北の山間地で、フィジー人夫と6歳長男、3歳双子の次男三男と暮らしているyumiです。前回記事で、私たちの住む広島県廿日市市吉和地域に、大型風力発電の建設計画があること、その事業の概要・リスク・メリットについて書きました。今回は、その事業によって、私たち家族が個人的に受けている影響について書いていこうと思います。

1)家の購入を保留

私たちは、地域で空き家となっていた古民家を賃貸でお借りして住んでいます。ここに住んで5年半くらい。その前は、市営の単身者向けアパートに住んでいました。長男が生まれて手狭になってきたタイミングで、地域でお世話になっていた方から空き家の相談をいただき、私たち一家が住ませていただくことに。

家の規模、見晴らし、日当たり、子どもたちが走り回れる庭と畑。そして優しい近所の方々と、集落の雰囲気。本当に大好きで、ずっとここに住みたいと思っていました。そして、1年半くらい前でしょうか。もう誰かが帰ってくることもない家なので、購入しませんかと大家さんに言っていただき、その手続きを進めていました。

いざ購入となると、土地の名義が違っていたり、農地売買の制約に引っかかったりとハードルがあり、司法書士さんの力を借りながら一つずつクリアしていきました。そしていろいろと整理ができ、ようやく契約、というタイミングで、風力発電計画についてのニュースが飛び込んできました。

風車の建設位置は、自宅から約1キロちょっと。健康被害が出る可能性が高いと言われる2キロ圏内にしっかり入ります。そして家の畑から、すぐ目の前の道路から、はっきりと見える位置。四季折々の表情を見せるなだらかな山々、家から見える大好きな風景が、大きく変わる可能性があります。

また、将来何かの事情で万が一引っ越すことになったとしても、この家は売れる、という思いもありました。空き家バンクの仕事に携わっていた経験から、良い状態の空き家はすぐに成約となる状況なのは理解していたし、何より私たちがこんなに大好きで素敵な家。大事に使っていれば必ず、次の使い手につなげられると感じていました。

けれど。風力発電の健康被害について調べていると、風車近くのアパートがなかなか埋まらなくなったとか、土地や家の価値が下がって売れなくなったという話がたくさん出てきます。海外の事例だと、発電施設の3キロ圏内がゴーストタウンになっているなんて地域も。本当に家を買って大丈夫か、という不安は増すばかり。

そんなわけで、その思いを率直に大家さんに話して、購入の話を保留しています。幸い大家さんは、地域のこと、自然のことなどへの理解が深く、いろいろな話を共有することができ、実際に環境や健康に配慮した暮らしを実践されている素敵な方。状況を理解していただいて、とりあえずの賃貸継続に快く応じていただいているのが救いです。

2)宿の開業を保留

もう一つ、動きだせないでいること。それが、年明けから本格的に準備するつもりだった、宿の開業です。この宿も、地域で空き家となっている家を使わせてもらうつもりでしたが、その家も、風車が建つ予定地の2か所に挟まれる位置。低周波による睡眠障害が出るかもしれないところに、泊りに来てください、って・・・・・・とても言えない。どうするべきか、すごく悩みました。

今回の事業計画では当初、2024年建設開始、2028年から稼働、と聞いていたので、2021年に宿をスタートできたとして5~6年の時間がある。自分の経験値のためにもまずは事業をスタートさせて、後で移転する・・・なども考えました。(後に開かれた住民説明会では「時期はまったく未定」とのことだったので、住民の反対が高まるのを避けるために稼働が早まる可能性も十分ある、と今では感じています)

でも。状態の良い空き家で、初期投資はそんなにかからないと言っても、私たちにとっては決して少なくはない、お金もある程度投資する。子育てしながら自分がつぎ込める時間もエネルギーも、限られていることもわかっている。やるからにはいろんな覚悟をして取り組むのに、そんな将来の不安を抱えていて大丈夫なのか。

それに、今はコロナ禍で、ゲストハウス市場は大打撃を受けているほか、海外のお客さんはしばらく見込めない。ここで宿を開業することの目的の一つに、日本三景の宮島が近く、そこに訪れる外国人観光客にぜひ日本の自然の中にある暮らしを体験してほしい、という思いもありました。海外からのお客さんを迎えられるのは少なくとも数年後にはなるでしょう。国内でなんとか事業を継続してようやく海外からも、というタイミングで閉じないといけなくなるかもしれない。

それに何より、風力発電ができてしまうと、景観や自然破壊という面からも私自身にとって地域の魅力は大きく損なわれる。「ここにぜひ来て、見て、よかったら住んでみて!」という、開業する根底にある自分自身の気持ちが揺らぐ、という事実に気づいたら、とても今動き出すことはできない、という結論に至りました。

私たち家族自身が住む家や地域、生活の基盤が揺らいでいるのだから。まず自分たちの暮らし、将来のことを考えていくのが先。そういう事情で、開業計画も保留になっています。

(続く)

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