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大型風力発電計画。ここに住み続けるかどうか、揺らぐ日々。【①事業概要】

広島県北の山間地で、フィジー人夫と6歳長男、3歳双子の次男三男と暮らしているyumiです。いつもは子育て中心にごきげんな記事が多いのですが、今日は、ここ半年ほど、いやもうちょっと前から、私が悩んでいることについて書こうと思います。本当は早く書きたかったけれど、あまりに問題が大きすぎて、頭の中も整理できず、なかなか手がつけられませんでした。でも、自分が進んでいくために、綴っていこうと思います。よかったらお付き合いください。

私たち家族が住んでいる、広島県廿日市市吉和地域と、お隣の安芸太田町、そして広島市湯来地域にかかる中国山地に、大型風力発電を建設する計画があると知ったのは、スマホに入ってきた中国新聞のニュース記事でした。昨年の6月末ごろだったと思います。全国でエネルギー事業を展開する電源開発㈱による「(仮称)広島西ウィンドファーム事業」です。

えっ、吉和?とちょっと驚いたものの、その記事では少し山奥で離れた場所だと思ったし、風力発電についてあまり知識もなく、自然エネルギーという良いイメージも持っていたので、あまり深く考えずにそのままスルーしていました。当時自分の退職手続き真っ最中で、別の大きな心配事があり、他のことに意識が向いていたこともあります。

でもそのあとから隣の安芸太田町では「広島西ウィンドファームの風力発電を考える会」という有志の団体が立ち上がり、風力発電に関する様々な情報発信や、勉強会開催などが行われるようになりました。それらに参加していくにつれて、事業の詳細や風力発電の実態について知ることになりました。そしてこれは大変なことになる、どうしよう、と危機感を募らせています。


事業の概要と、想定されるリスクについてざっと挙げてみます。ここで風力発電の是非について議論、というわけではないので、出典などは書きません。これまで個人的に参加した勉強会やリサーチなどで得た自分の情報を、簡単に整理してみる、という感じで挙げてみます。

<事業概要>該当する西中国山地の尾根沿いに、高さ150メートル、発電機出力最大4300kWの風車最大36基を設置。発電所出力は最大154,800kW。(国内最大級規模

リスク①健康被害:風車から出る騒音・低周波音が、睡眠障害、頭痛、耳鳴り、目まい、吐き気、イライラなどを引き起こす可能性がある。約2000kW規格の風車で約2km圏内に住む人たちに多くの被害事例がある。世界中で同じような距離で同じような症状の事例があり、被害の深刻さは風車の規模、風車からの距離に比例している。女性の不妊、牛やミンクの胎児の奇形や死産、黄身のない卵を産むニワトリ、なども報告されている。

リスク②自然生態系への影響:風車設置のための森林破壊、設置後の騒音・低周波音やバードストライク(風車の羽が鳥にあたる事故)などが原因となり、鳥類やコウモリをはじめとする動植物が激減している、という報告が多い。また工事による水質変化生態系変化により、熊やイノシシが里へ下りてくるリスクも高まる。

リスク③土砂災害リスク:大型風車を山頂へ運ぶために幅の広い道路をつける必要があり、その道路での土砂崩れの可能性がある。今回の事業では、計画地の地質・地形・断層から、数百箇所もの危険箇所がある。

リスク④景観への影響:地域の資源である山々に巨大な人工物が加わることで、景観が大きく変化する。


風力発電のリスクについて挙げましたが、これに対してメリットも挙げてみます。メリットとして言われているのは次の通り。

メリット①山林所有者の利益:風車設置、道路取り付けなどの土地賃借代。20年の稼働を終えたら、開発された土地が所有者へ戻る予定。

メリット②地域の工事関係事業者への受注:工事や業務発注のほか、宿泊施設や飲食店の利用が見込まれる。

メリット③自治体への固定資産税納税

メリット④林道開通による林業事業者の利益:風車設置のために取り付ける道路を作業道として活用できる。

メリットが一部の人々や組織への、主に金銭面での利益であるのに対して、デメリットは地域全体へ及びます。


そして、そもそもの事業の意義・目的である「CO2削減」には、実は風力発電はほとんど貢献することができない、ということもわかってきました。もともと風が吹いたときしか発電しない、また強風や突風では風車が止まる風力発電はとても不安定なエネルギーで、電力会社は風力を常時発電する電源としてカウントすることができない、とのこと。そして風力を使用した都度火力を調整すると、逆に燃料が多くいるため、結果としてCO2削減にはつながらないようなのです。

風力発電は欧米、特にヨーロッパで先行して導入されています。しかしこの数十年で、コスト的にも自立せず、地域住民からの反対運動や訴訟も多く、CO2削減の成功事例にもならないことがわかってきて、国として風力発電から撤退するところも出てきているそう。そうして儲からなくなった海外の発電事業者が、余った資材などを日本へ売っている・・・というのが実態だ、という話も。

住民説明会では、風力発電を新たな観光の資源に、とか、子どもたちの環境教育の場として喜ばれているという話もありました。確かに事例をいろいろ調べていると、発電施設と併せて観光用の道路や設備も整備して、広大なひまわり畑などと一緒に観光地化していたり、見学者を想定した施設設計にしているところなどがあります。ただこうした開発とするには、そうしたいという地元の意思と、同時進行で様々な準備が必要です。今の計画にそういう要素は見当たりません。

それに、風力発電が導入され始めた20年くらい前、自然エネルギーへの期待や、まだ珍しい風車を資源に、という話であればまだ理解ができるのですが。もう全国に何箇所も建設が進み、その負の影響も知られてきている。この段階で、今の私たちの地域の様々な状況を考えて、今回の計画をプラスに展開していくというのはどうしてもイメージができないのです。

私たちが電気を使う限り、エネルギー源は必要で、現在ある発電の仕組みのどれもが完全にエコでクリーンではないのだろうとは思います。けれども、今後日本の人口が減っていく中で、経済も成熟して大きな成長予測もない中で、既存の発電施設で十分ではないのだろうか。なぜ今、新たに建設する必要があるのか、という疑問が拭えません。今回の風車建設にあたって、具体的に既存の火力や、別のリスクのある原子力を減らしていく、というような説明はないままです。

そして、私たちの地域の計画以外にも、昨年日本中で風力発電計画が乱立していた事実があります。これは、電力の固定価格買取制度(FIT制度)の申請締め切りが昨年度末であり、この制度が適用される間は事業者は発電する限り利益を得ることができる、という背景があるよう。つまり、事業者がお金を儲けるために急いで計画を立てて実行しようとしている、そんな風に感じてしまうのです。

エネルギー問題、難しいですよね。自分でも、こうしたらいいのに!というほどの知識も持ち合わせていないので、ここで事業の是非を議論するようなことは書けないのですが、ただ、今回の事業計画が私たち家族の暮らし・将来に大きな影響を与えていることは確かです。そんな個人的な影響について書いてみようと思います。

(続く)

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