消防団警防教育・水災課程を受講。復習がてらにまとめたものを公開することで、誰かに繋がれば良いかと思ったのでやってみる。(更新:2021年5月)
備忘録としてまとめた内容をスライドショーにしておきました。
・講習日: 2019年6月30日
・場所:京都市消防活動総合センター内 消防学校
・作成:佐原 誠(京都市右京区太秦消防分団)
講習のレジュメ
・ガイダンス:受講要領の説明
・水災の基礎知識:水災の種類、水災と消防団活動
・水防工法:土のう作成、積み土のう工法など
・水災資器材取扱:資器材取扱訓練、救命胴衣の着用及び浮上訓練
(消防学校のプールにて実施)
スライドショーの中身を貼っておきます。(間違い・誤解などあればご連絡ください♪)
水災に関する基礎知識(水防に関する用語)
水災に関する避難情報
警戒レベル「5」はすでに災害が発生しており手遅れである恐れがある。そのため、警戒レベル「4」以下の間に避難行動も含めた安全確保や情報収集に努め心構えを高める。
気象警報と合わせて判断し行動する。例えば、大雨特別警報(命を守る行動を)であれば、避難勧告や避難指示(緊急)に相当する気象状況の次元をはるかに超えるような現象をターゲットに発表するもの。発表時には何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高い。(気象庁の詳細PDF)
2021年5月20日より、表現が更新されている。
・警戒レベル5... 緊急安全確保
・警戒レベル4... 避難指示
・警戒レベル3... 高齢者等避難
水災対策は気象情報の収集から
僕はスマホのホームに気象庁の「雨雲の動き(高解像度降水ナウキャスト)」のリンクを残している。位置情報も記録できることから日常生活でも便利に使える。(PCもブックマークしている)
台風とは
平成30年(2018年)9月の「台風21号」は、8月末から9月頭、日本最南端である沖ノ鳥島付近(北緯20度)で「猛烈な勢力」である915hPa(最大風速55m/s)に達しており、9月4日12時頃に「非常に強い勢力」である950hPa(最大風速45m/s)を維持しながら徳島県南部に上陸した。進路の左側にあたる「危険半円」に京都市も含まれ強風による倒木など多くの爪痕を残している。
参考までに、その当時の様子を備忘録としてまとめおいた。(【備忘録】裏にある楠(クスノキ)の枝葉が散る。 2018年9月4日 台風21号)
<関連情報>
・気象庁|台風情報
・米国、米軍合同台風警報センター
・Windy.com ウインドマップ&天気予報
(参考:https://jp.weathernews.com/news/24664/ )
熱帯低気圧の状態では気圧もそんなに低くなくて、風も強くないが、海水温が27℃以上で台風は発達を続ける。つまり気圧が低くなって、風が強まる。気象条件によっては日本に上陸する手前でも発達する場合もある。
気象警報(特別警報)
平成25年(2013年)に「特別警報」の運用が開始された同年9月に発生した「台風18号」で初めてその表現が使われた。京都市では嵐山・渡月橋や地下鉄御陵駅などで浸水被害が生じるなど猛威を奮った。
スマホ・携帯電話:「緊急速報メール」にて配信について(気象庁)
京都市版:洪水情報・避難情報の住民への周知
受講の中ではインターネットの役割が曖昧な印象を受けたが、「デマ」による余計なトラブルは今も課題になっている。大規模震災ではTwitterのスピード感から多く人の安堵に繋がり、人の命も救われていると聞くが、どのような情報も冷静に捉える心がけが大事なのかと思う。
水害(水災)の特徴を知る
従来の下水道処理能力が1時間あたり50mm〜60mmの雨量だということだったが、内水氾濫に至るにはそれが長期間に及んだり、それ以上の雨量(ゲリラ豪雨)によるものなのか。限界値は下水道の規模によっても違うと思うし、近年増設されている下水道は考慮されて設計されているのか不明であった。
水災パターンの検証(ハザードマップ)
受講の中ではハザードマップを閲覧しながら受講していたが、ここでは京都市のハザードマップに関わる情報を紹介しておく。いざという時は停電などによるインターネット障害などで閲覧ができないと思うので、平時の中で自分の生活している環境がどのような条件であるのか確認しておくことが良いかと思う。特に水没の危険がある地域は避難ルートの理解が大事だろう。
追記:2019/11/13
「自治体河川、浸水想定2割古く ハザードマップに影響」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52105200T11C19A1EA8000/
追記:2020/7/27
「豪雨ハザードマップ、4割の主要市区で改定終わらず」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61630810X10C20A7EA2000/
京都市に関わる河川ごと(宇治川、桂川下流、木津川下流、鴨川・高野川、弓削川・桂川(周山)、山科川、天神川、小畑川)の浸水深、浸水継続時間など、土砂災害が発生する危険性のある区域を想定した地図。(指定緊急避難場所なども掲載されている)
<関連情報>
・京都市防災ポータルサイト-京都市防災危機管理情報館
・京都市XRAIN雨量情報
・日吉ダム(大堰川・桂川:リアルタイム情報)
・天ヶ瀬ダム(宇治川:リアルタイム情報)
水災マップ(ハザードマップ)から見えるもの
平成26年(2014年)8月豪雨による広島土砂災害(線状降水帯が発生し、3時間降水量は200ミリを超える)は記憶に新しい。新興住宅地など近年開発された土地はその地域の名称を伏せるケースもあるので、旧名を知っておく機会や、文字の意味を知っておくことも危機回避に繋がるかと思う。
また、時間雨量が20ミリを超えて、総雨量が100ミリ以上になると土砂災害発生の可能性が高まるといわれており、台風や線状降水帯による豪雨では容易にその規模に達する。
様々な水災シミュレーションの結果から
この水災シミュレーションでは想定以上に衝撃を受けた。都市開発は多くの条件を考慮して土木などの工事が行われるが、それも当時の基準であって、近年のゲリラ豪雨は想定外の規模になっているという。そのため、河川の破堤や溢水以上に、下水道や小河川の排水能力を超えての水災(内水氾濫)は、突然(30分ぐらいで)、全域が水没するなど、想像以上に危険であることがわかる。
水災に関する検討事項
ちなみに僕は「京都市消防局 災害情報案内」のページは必要に応じてチェックしている。このページでは京都市に限るが、「今」の消防隊の動きや災害現場をおおよそ確認できる。
京都府では避難スイッチと呼ばれる「水害等避難行動タイムライン」の作成をサポートしています。緊急時は迅速な判断ができない恐れがあります。「いつ」「誰が」「何を」するのかを事前に定めておき、精度の高い避難行動に繋げることも大切です。
消防団の水災活動
土のうを用いた水防工法
土のうの作り方
消防団・水防団の活動であれば安全かつ迅速な作業を行う上で、二人一組で行うことを基本とする。
(参考までに、一人で土のう袋を用意する場合は袋の口を開けた状態で保持する必要があるが、「土のう 一人」というキーワードで検索するといろいろ道具もある)
土1立方メートル(m3)あたりで作成できる土のう数の目安
例えば、器具庫などで土のうを作って、水災現場に移動する際、軽トラックなどに積んで移動することになるが、軽トラックの最大積載量は「350kg」だとすると、8割程度の土のう12袋相当で超えてしまう。最大積載量を超えて搬送することは、運転に支障をきたして事故など二次災害に繋がることを想定しておく。
土のう袋の仕上げのポイント
効果的な「積み土のう工法」を行う
状況・条件に応じて様々な積み方があるようである。基本的には土のう袋は7〜8割程度で柔軟性を持たせて成形していくこと。隙間なく積み上げていくため、少し重ねながら行うことは基準のようであるが、水流に対しての向きはどちらが良いかはいろいろ意見が分かれているようであった。
もっとも大事なことは指揮者の判断・指示で実施していくこと。指揮者はより広い視野をもって判断すること。(船頭多くして船山に登ることはデメリットだけである)
余談:日本の自衛隊の訓練がすごいってネットにもある♪
スコップを管理する際のポイント
土のうを持ち上げる際のポイント
簡易的な水防工法(土のうを使わない)
水災資器材の取り扱い(水中での浮上訓練)
今回は訓練であったが、服を着たまま水中に入る機会は初めての体験。その中で、水の浮力を用いて要救助者を引き上げる訓練を行う際、救命胴衣を脱いでプールの水面で待機していたが、立ち泳ぎで身体を維持するにはとても余裕がなく、服を着たままの水中は如何にリスクが高いかを身をもって知る経験となった。
補足:一般財団法人 北海道河川財団「水防工法テキスト」
北海道河川財団の「水防工法テキスト」は基礎から応用までを網羅した保存版テキストじゃないだろうか。開拓の歴史がある土地柄ではステージが違う♪
補足:水防団・水防活動とは(国土交通省のPDF資料)
補足:京都市水防事務組合
今回、京都市の条件における水災課程の講習と訓練であったが、海に隣接している地域や、未整備の河川が多い地域など、同じ日本であっても環境によって実施される規模や内容は異なるのだろう。
特に近年は台風や豪雨による被害は毎年、どこかで耳にすることもあって、危機管理はアップデートしていくことが大事ですね。
(継続的に更新予定です)
参考:消防団機関員講習のまとめはこちら
ちなみに、僕の実家は宇治市槇島町である。その地名が示す通り、昔は「島」があった地域。宇治市は京都市の南側にあって、桂川・鴨川・宇治川・木津川など多くの大河川が集まる地域であって、その昔「巨椋池」という大きな池があった。昭和初期、池は干拓によって無くなり、水田などの農地に変わって、さらに住宅地などの用途変更された地域も増えている。宇治川の治水機能の一つ「天ヶ瀬ダム」が稼働してからは大規模な水害は記憶にない。