【おばさんパニック】やっぱり小学生の女の子は怖いよね問題
天気が良かったので歩いてスーパーへ向かった。
バウムクーヘンとドーナツを買うためだ。
僕はお腹がゆるくなると、3食全て玄米がゆと野菜スープのみの食生活に切り替える。
しかしそれではあまりに「食べた感」がしないから、食後にちょっとだけ甘いものを摂る。
お腹の調子が微妙でも、カステラとかドーナツならセーフみたいな話を聞いたことがある。本当かどうかはわからない。
ただ、確かにその手のお菓子は食べてると口がパサパサしてくるので、水分を取ってくれそうな気もする。
世の中のことは、良さそうな気がすればたいてい大丈夫だ。これをプラシーボ効果という。
スーパーに入り目的のブツを取ると、持参したトートバックに思わず入れそうになりこれじゃ万引きじゃねえかと留まるルーティンを経て、レジへ向かう。
優しそうだけど旦那には厳しそうなおばさま店員に会計をしてもらった直後、レジの横に大きな鍵を見つけた。
「あれ?これ忘れ物じゃ…」
「あ!ほんとうだ!ありがとうございます。すいません、えーと」
おばさま店員は一瞬狼狽し、後ろのおばさまスタッフ2と相談し始めた。
「どうしよう?でもこれ車の鍵だよね?多分取りに来るよね?」
などと話し合いながら、僕にまたお礼を言った。
店を出ると、駐車場でわかりやすくパニックに陥っている毛量多めのおばさま3を発見した。
その大量の髪の毛を、風に吹かれてあっちへこっちへ向きを変えながら、真っ赤なトートバックを真っ赤な車の前でほじくり返していた。
入れてあった鍵を探しているというより、明らかに「あったはずのものがない」、という探し方だった。
このままだと、バックをひっくり返して服まで脱ぎだしそうな様相だ。それで下着も赤だったらどうしようと思った。
僕は近寄って
「あの、鍵ですよね…?」
「あああ!そうなんです!!」
「店員さんに渡しておきました」
「あああ!ありがとうございますー!ないなあと思ってー!!」
と言いながら、全力で店へ走り出した。
僕はそのまま駐車場を後にした。
おそらく今頃、店内はこうだ。
ダダダーッ
「すいませえええーん!鍵ー!!」
「あー!さっきあの素敵なかっこいいお兄さんがここにあったの気づいてくれて!」
「あああ!そうなんです!さっき駐車場でその超絶イケメンお兄さんが声かけてくださって!」
「あー!そうだったんですね!もう娘差しだそうかしら!」
「いえいえ、私の娘を差し出します!」
「いえいえ私の娘を!」
「いや私の!」
「私は財産を!」
「私は赤い車を!赤の全てを!」
なんて話で盛り上がっているに違いない。
バウムクーヘンを片手に、ニヤニヤしながら帰り道を歩いていると、通りで遊んでいた小学生の女の子がじーっと僕を見つめていた。
思わず目が合って我に返った僕は、マスクをしていて本当に良かったと思った。
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