星川定跡のきらめき
世界のアソビ大全51が神ゲーと評判である。沢山のゲームを初心者向けに噛み砕いたことにより、どんどん次のゲーム次のゲームと珍しいゲームでもルールを学びながら遊んでいくのが止まらないようだ。
にじさんじ所属のVライバー星川サラもこのゲームで配信を行い、その中で将棋を指したその場面が切り取られ、大いに話題になった。
注目を浴びた理由が「初手▲56歩は素人丸出し」という将棋ファンからすると非常に違和感のあるものだが、これに反発してはいけない。
この事象から何を読み取るか。
①今や▲76歩、▲26歩に次ぎ三番目に多いとまで言われる「初手▲56歩」は一般的には全く浸透していないということ。
②そんな有力な初手を初心者である星川がサラりと…いやあっさりとノータイムで指したこと。
私はこの二つに注目した。
①は内部にいると気がつかない意外なバズりのきっかけを示している。我々将棋ファンはこういう点を見落としがちだ。何が一般的な人に面白いと思われるのかが分からなくなっているということだ。
②が本当に伝えたいことなのだが、つまり星川サラはセンスの塊ということだ。
初手▲56歩の後がもっと凄い。
弱CPU特有の悪手△24歩に対しての▲26歩、最善手である。相手の弱点を無意識に突けるのは天才の証。
CPUの△52玉という毒にも薬にもならない手に対し、雄大なる▲55歩。相手の王様を目がけていくゲームだということを本能的に理解している。
CPUは△94歩と端歩を突く。星川も負けじと▲16歩。
「端歩は心の余裕」という格言がある。スピードも重要な要素である将棋では、端の方まで気持ちが回らないこともあるが、このように端のふところを広げておくことで後の数手を買ったりする、相手の端を攻めるきっかけにもなる。
星川サラの配信者としての心の余裕を示している。
あまりやったことのないゲームであろうと楽しく可愛くプレイしてみせる。
一流の余裕だ…
相手の桂跳ねにも乱れない。むしろ端を突き返して桂を狙っている。
相手の手をすぐに吸収、自らも桂を跳ねだしていく。どんな競技でも、一流プレイヤーはライバルの技術を盗むのが非常にうまい。これもそうなんだろう。
なんという雄大な駒組だろう。薄目で見れば全く無駄のない駒組だ。歩の突き方にセンスを感じる。初心者というのは飛車 角 桂 香といった飛び駒を最初からたくさん動かしたくなるものだが、それがない。じっくりと歩を突きだして陣形を作っていく。これが最初からできる人は中々いない。
ゴキゲン中飛車とも他のなにものとも違う、これは星川定跡だ!
そのきらめきに胸を打たれたのは私だけではないだろう。
この先も時々でいいから将棋で楽しく遊んでいる姿を見せてほしいなと思わせる素晴らしい配信だった。
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