文系から工業英検1級合格♪体験記   技術英検プロフェッショナル受験の参考に

以前「工業英検」といっていた英語の検定が、「技術英検」になったのはご存知でしょうか。それに伴い、最上級が「1級」が「プロフェッショナル」に変更されました。工業系の学生、技術翻訳者には知られている検定ですが、なじみのない方も多いかもしれませんね。

私は2017年に旧工業英検1級(技術英検プロフェッショナル相当)に合格しました。教員を辞めて翻訳の勉強を始めてから約3年かかりました。合格して翻訳のお仕事増えました。また、大学の非常勤講師として1年教える機会を頂いたのも工業英検1級のおかげでした。
技術英検プロフェッショナルに挑戦する方の参考になればと、受験のプロ(元高校教員)の技を駆使し、対策をまとめてみました。

当時の私は、退職後3か月の学習でTOEIC900点台後半、その後3か月で英検1級に合格していました。ここまではテキスト数冊、アプリ等、世間でいいと言われる教材を自習して太刀打ちできたのですが……。工業英検のテキストを見て、「日本語が全く分からん」と絶望したのを覚えています。英和辞典、Wikipediaと調べてみても、単語の意味が日本語でも分かりません。今までの勉強方法だと技術用語が覚えられない。ということで、工業高校生向けの3級(現2級)の本から取り組みました。語彙については当時翻訳チェッカーをしていたので、そちらで大量に見たものをノートに毎日まとめていました。工学の基礎の本も読みました。そして少しずつボキャビルをしていきました。

3級の選択問題では間違えなくなってきたので、2級(現準プロフェッショナル)の教材を見てみると、いきなり翻訳の問題が!また、テクニカルライティングの部分も難しかったですね。2級は何とか合格し、1級受験まで1年かけることにしました。この頃、翻訳スクールの講座を終了してトライアルを受け始めていましたので、ある程度翻訳の基礎はできていたと思います。

でも、翻訳者だから合格するとは限りません。翻訳、校正、テクニカルライティングの知識が必要です。ぶっつけ本番では出題形式でとまどうので、必ず過去問を購入してください。2023年6月以降の問題はメルカリで購入、2023年1月以前の問題はコンビニでプリントしてください。
https://jstc.jma.or.jp/know/answer.html

タイムを計って過去問1回分を解いて採点します。目安にするだけなので、採点は減点法でも割合でもOK。プロフェショナルの合格基準は、「50%未満の問題がなく、全体では75%取ること」です。結果を見て、50%切らないようにする箇所(苦手)と、100%近く取る問題(得意)を決めます。
私は校正をしていたので、リライトなどは100%を取り、翻訳では50%を切らないことを目標にしました。既に翻訳者なら、和訳・英訳は100%を目指してください。

学習中なら時間は足りないでしょう。受験当日もカツカツでした。試験時間の3倍以上かかるなら、そのレベルはまだ受験することは難しいですね。2倍なら、1年ぐらいで縮められるでしょう。試験は手書きなので、だんだんスピードアップできますから。訳しつつ抜けをチェック。終わったら2分で通しチェック。チェックの時間を確保することが重要です。

紙の辞書2冊持参可能ですが、最近引いてますか? 2文字目まではパッと引けるようになっておかないと、時間が足りない! 逆引き、部分検索の工夫もしておきましょう。鉛筆、紙、消しゴムも最近使ってませんよね。ぜひ練習を!

新形式では和訳がなくなり、英文要約・英訳では英語を書く力が問われ、後半3問はテクニカルライティング。全体に冗長な原文を修正して訳すスキルや、リライトのスキルが求められます。和訳メインの人は集中トレーニングが必要です。

英語で書かれたテクニカルライティングの教本がいいのですが、初めは日本語の本から入っても。また、毎日1本英文の要約をすることでⅠとIIIの対策になりそうです。
英訳で冗長を避ける練習にピッタリな本を2冊お勧めします。
①強い動詞、短く、の項目が役に立つ
『究極の英語ライティング』 遠田 和子
https://www.amazon.co.jp/dp/4327430927/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_lSW4Fb6EH27W6
②3Cとリライトの勉強になります。練習問題、解説あり。例文の語彙が工業分野なので、ボキャビルにも。第1章、2章は特におすすめ
『技術系英文ライティング教本: 基本・英文法・応用』 中山 裕木子
https://www.amazon.co.jp/dp/4820781499/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_rZW4FbS53B0EW

 和訳メインの人、大丈夫! 毎日英文見て情報を整理しているはず。それを意識して、英文を要約してみてください。冗長箇所を削る、できるだけ短くするところを意識すると変わってきますよ!読みと同じです。

英訳メインの人、「英語の悪文」を削る練習が必要です。普段日本語原文にやっているのと同じです。和文が透けるような直訳調の英文をリライトするのもいいかもしれません。

技術文書になじみがない人は、最初に日本語のテクニカルライティング→その後、英語を3Cで書くための本→英語のテクニカルライティング本と進むといいのでは。
技術者のためのテクニカルライティング入門講座 髙橋 慈子
https://www.amazon.co.jp/dp/4798157198/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_sjX4Fb001X79H

プレゼン得意な人、対人関係の仕事した人は、テクニカルライティング向いてます。誤解を与えず、安全に作業してもらう/理解してもらうっていう点が似てますから。

語数をカウントする問題、大変面倒です。大学入試の字数カウントみたいに、毎回やるようにしないと忘れて焦ります。5語ごとに上に薄い線を入れてカウント、終わったら消すなどの工夫を。

さて、各問題の解説を。現行の技術英検の問題に合わせていますが、毎回変更されているようです。あくまで作戦を立てる参考と思ってくださいね。

Ⅰ)英語長文のサマリ50点→重要な情報を囲み、冗長、例示、重複を線で消す。列挙はさっさと削る。まとめて1文に、複文・重文→単文に、have, makeなどの弱い動詞+名詞を強い動詞に、受動態→能動態でシンプルに。リライトより削って、重要な情報だけ残す。
Ⅱ)英訳(300字) 30点→抜けがないように15分程度で訳し、終わったら2分でチェック。サマリと同じで、複文・重文→単文に、have, makeなどの弱い動詞+名詞→強い動詞に。3Cを意識して。辞書は和英も英和も駆使して部分検索も活用!
Ⅲ)冗長和文の英文サマリ 40点→和文を修正して訳す。文書の種類に合わせ、提示順を思い切って整える。読み手がミスを起こさない順序、経時的に、肯定否定も注意。
スタイル調整。書き流し→箇条書きなど、大胆な変更もOK。テクニカルライティングの知識要。
Ⅳ)テクニカルライティング 40点→英文の誤訳、悪文、誤記等を指摘、ミスの理由を解説。リライト。改善方法や、翻訳チームのリーダーが品質向上のためにできることなど、質問によっては慌てます。普段の翻訳での工夫を説明すればいいんです。
Ⅴ)冗長英文のリライト 40点→英文の誤訳、悪文、誤記等を指摘、ミスの理由を解説、リライト。係り受け、曖昧、冗長を指摘するといい。レビューや校正をしている人が得意な分野。ただし、Ⅲ同様、翻訳よりも大胆に削って変更する必要がある。

説明を英語でするのは結構骨が折れます。訳と異なり、理由を考えつつ英語にするのは負荷が高い。ある程度の表現を準備しておく方がいいでしょう。XX is ambiguous because など、指摘すべき点と理由の組み合わせをいくつかストックしておくといいでしょう。

文系から挑戦したときの最大の壁は、技術用語と技術に関する知識でした。工業英検3級~2級のテキストは、文系のスタートにはいいと思います(古本で十分)。展示会で実機を見る。中高レベルの本からスタートして大学生が最初に読む工学の本ぐらいまでは頑張って読む。インドのエンジニアが初歩を無料で解説しているYouTubeもいいですよ。大学が一般向けに行っている講座、今でも時々聞いています。英語の子ども向け科学コンテンツ、企業の動画など、家から出られなくても技術英語(日本語も)を知る機会はたくさんあります。

最大のコツは、あきらめないこと! 自分の足りないところを見直して、補うこと。でも、完璧ではなくギリギリですり抜ける!ぐらいの気持ちで取り組んでください。時間がカツカツなので焦らないためには、完璧ではなく合格を重視して、緊張しすぎず取り組むことが大事です。

翻訳に役立つ試験は、JTFの翻訳検定、知財翻訳検定、サン・フレアのTQEなどがあります。ある程度のレベルを持っていると、書類で落とされることは減りますし、試験勉強自体が翻訳の学習になるので、一度資料を取り寄せてみてくださいね。

では、皆様がんばってください!
ご質問は、Twitter:@bumicchu ぶみにゃんごまで、お気軽に。




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