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ハインケス 「ザネはまだ絶対的なトップ選手ではない」

2年前に監督業を引退したユップ・ハインケスが、『WELT』のインタビューに答えている。

ハインケスのコメント

― 監督としてあなたは常に大局を見ていた。振り返ってみて印象に残っている選手は?
「 私のように多くの良い選手を指導してきた場合、2人か3人を選ぶのはいつも難しい。2013年に三冠を達成したチームにいたっては、すべての選手の名前を挙げることができる。大声を出さなくてもお互いが理解し合えるほどの密接なつながりがあった。このようなチームを指揮し、指導することは、すべての監督の夢だよ」
「全員がフィットするチームを作るのに1年かかった。誰もが大切で、誰もが貢献してくれた。みんながやる気と集中力を持っていたからこそ、あのようなシーズンを過ごせたんだと思う。クラブとチームとコーチ陣の共生は完璧だった」

― この時チームいた誰もが、あなたの尊敬に値する選手の扱い方、共感力、相手の話を聞き必要に応じて助けてくれる才能を賞賛している。サッカーだけでなく、なぜ日常生活でもこれほどまでに重要なのか?
「チームにおけるリーダーシップという点では、共感性は重要な要素だと思う。社会的能力が不可欠だ。選手の頭の中に入り込み、理解することだ。絶対的なトップ選手も人間であり、問題を抱えている。それらを認識して行動し、話をすることが大切だ。確かに私には選手の懐に入る込むことができる才能がある。選手が心のどこかにいっていたら、それを感じて話しかけることができた。多くの場合、私は正しかった。それから、選手とはたまにプライベートなことも話したりしていた。人として接することが大切だと思う。監督として若い時の私は焦ることが多く、要求しすぎることもあった。後に人生経験として役立ったよ」

― 元選手とは今も連絡を取り合っている?
「はい。ここ数週間で、何人かの選手が私に連絡してきて、『妻と私の健康状態はどうか』と尋ねてきた。電話がかかってきたり、WhatsAppのメッセージが入ってきたりする。とても嬉しいよ。元選手の奥さんからも電話があった。夫のスマホから、妻と私のために買い物など何かできることはないかと聞いてきてくれた。年齢を考えれば、(買い物に行くことも)リスクを犯すことになるからね。これにはすごい感謝している。監督として、人として、足跡を残したという実感を与えてくれるのでとても感動した」

― バイエルンのフリック監督もあなたのソーシャルスキルを賞賛している。バイエルンが彼と契約延長したことをどれだけ喜んでいる?
「ハンジは性格の良い人物だ。ドイツ代表チームのアシスタントとして、ヨアヒム・レーブと選手をつなぐ存在だった。バイエルンの選手の中には、当時から彼のことをよく知っている選手も多い。数ヶ月前にも言ったが、彼は人間性とサッカーのスキルがあるからこそ、バイエルンにとって理想的な監督なんだ。彼は非常に信頼がおけるし、バランスが取れていて魅力的だ。好感が持てるし、共感できる。バイエルンにとってこれ以上の監督はいないだろう」

― 現在サッカーは中断しているが、今ドイツの若手で最も有望な選手は誰だと思う?
「素晴らしい選手への成長過程にいる本当に良いトップタレントが何人かいる。だが、彼らはドイツ代表やチャンピオンズリーグで成功することで自身の価値を証明しなければならない。例えば、ヨシュア・キミッヒは偉大な発展を遂げている。もうそんなに若くはないが、とても向上心があり、プロとして常に好パフォーマンスを発揮したいと思っている選手だ。私はそういうタイプの選手が好きだし、チームのために何事にも全力を尽くしてくれる。それから、カイ・ハーベルツのようなタレントもいるが、体力や強さの面ではまだ改善しなければならない。彼が本当のビッグクラブに移籍するには、あと1年か2年が必要になるだろう。個人的な意見だが、ティモ・ヴェルナーはしっかりとした成長を遂げていると思うし、それ以上のものがあると思う。今季はユリアン・ナーゲルスマン監督が彼をさらに成長させたことがわかる」

― リロイ・ザネをどう思う?
「彼は大怪我をする前は調子が良く勢いがあった。私にとっては、彼はまだ絶対的なトップ選手としてブレイクを果たしていない。今、岐路に立たされている選手だと思う。このまま自分自身を鍛えて成長させていくのか、それともただの並外れた才能の持ち主であり続けるのか。彼は次の大きな一歩を踏み出す準備をしておかなければならない。時折才能を開花させても意味がないからだ。また、正直に言うと、この市場価格が妥当だとは思えない」

― 常に話題となっている移籍金1億ユーロのこと?
「そうだ」

― 実際に前クラブと連絡を取り合っている?
「アドバイスはしていない。でも、もちろん連絡を取ることはできる。先日はレバークーゼンのジモン・ロルフェスと話した。今もテネリフェやレアル・マドリーとも連絡を取り合っている。中でもやはりバイエルンだ」

― オリバー・カーンが新たにバイエルンの幹部に就任し、2022年にはカール=ハインツ・ルンメニゲCEOの後任となる。バイエルンでは新たな時代が始まっている。
「彼はバイエルンの資産だ。彼が選手として示したもの、勝利への意志、絶対的なプロフェッショナリズムのすべてを、今、バイエルンに持ち帰っているからだ。そう確信している。オリバー・カーンは選手としてのキャリアを積んだ後も、常に自分の道を歩んできた。多くの経験を積んでおり、最高レベルのプレーをしてきた。私は彼が適任だと思っている。しかし、コロナ危機の今、新しい役職に就くのは誰にとっても容易ではない」

― いつもより多くのことが問われているから?
「先ほども言ったが、私たちは今、人間がいかに脆弱であるかを体験している。私たちはずっと無敵だと思っていた。しかし、今はいろいろなことに疑問を持たざるを得ないことに気がついた。社会でも、サッカーでもだ。どのクラブも今後どのように継続できるのか、どのような調整をしなければならないのか、何を修正しなければならないかを考えなければならない。例えば、高価なユニフォームや高価なスパイクを買うお金を持っている人は今後多くはないと思う。現在コロナで経験していることは恐ろしいことだが、社会、特にサッカー界の望ましくない方向への発展(移籍金の高騰など)に対策を講じて歯止めをかけるチャンスを与えてくれている。人間は個人的に何か変えなければならない時にしか変えられない。今、私たちはそうしなければならない」

【Source】5月4日、WELT他


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