実話怪談 第一話 『いないはずの黒猫』
実話怪談、早速投稿させていただきます。
第一話のタイトルは「いないはずの黒猫」
少し短いお話ですがお楽しみいただけたら幸いです。
この話は私の学生時代の友人であるIさんの身に実際に起こった不思議な出来事だ。
Iさんのお母様は大の猫好きで、Iさんが幼いころから自宅で白黒のぶちねこと黒猫の二匹の猫を飼っていた。
二匹とも大人しかったため、幼いIさんも安心して二匹をかわいがっていた。
ある日Iさんが自宅の二階に上がったところ、階段を上がり切った廊下の先の突き当りに一匹の黒猫がいた。
最初Iさんはその猫を飼っている黒猫だと思ったのだが、尻尾を見てすぐに違う猫だとわかった。
なぜなら、当時Iさん宅で飼われていた猫は二匹ともボブテイルで尻尾の短い品種、しかしその黒猫は家の二匹はもちろんのこと普通の猫に比べても尻尾が異常に長い。
「え? あれ? 知らない猫がいる……?」
と思ったときその黒猫とふと目が合った。
その瞬間。
シャアァァァァァッ!!
っと威嚇するような激しい鳴き声を上げてものすごいスピードでIさんに向かってきたのだ。
「うわっ!!」
急な出来事に驚きIさんは階段の端に立っているにもかかわらず後ろに仰け反ってしまい転げ落ちてしまった。
本来なら小さい子供が階段から落ちれば骨折や大怪我、最悪死亡することもあるが、かなりの勢いで最上段から転落したにもかかわらず奇跡的に軽いかすり傷程度で済んだ。
落ち着いてから辺りを見回したり家中を探したりするも、その黒猫がどこへいったのかがわからない。
そもそも、どうやって入って来たかすらわからないのだ。
その黒猫が最初にいたのは突き当りで窓もなく部屋もすべて扉が閉まっており、もちろん一階も同じように猫が自由に出入りできる場所はなかった。
その黒猫が何処へ消えてしまったのかは結局解らずじまいだった。
ここまでならば、単に家の屋根裏などに住み着いた猫の仕業ではないかと思うかもしれないが、それは違う。
数年後にIさんはその黒猫と再会することになる。
Iさんが小学校三年生の頃新居に引っ越すことになり、その新居の二階にある納戸を物置兼猫用の遊び部屋としてあてがっていた。
非常に狭く窓もない納戸だったそうだが、そこでまたあの黒猫を見てしまった。
ほんの一瞬横切っただではあるものの、忘れもしないあの異常に長い尻尾の黒猫。
「え、あの黒猫ついてきたの?」
一瞬ゾッとしたものの、Iさんに何をするわけでもなくただすっと横切り消えていったそうだ。
それを最後にその黒猫は現れていない。
過去に黒猫を飼っていてその黒猫の霊なのではとも考えたが、そういったこともないそうで、結局正体は全くわからないのだそうだ。
終わり
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