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ベトナム上場会社の配当(cổ tức)

1 配当の対象となる財産
 ベトナム企業法135条3項は,「配当は,現金,会社の株式又は会社の定款が規定するその他の財産で支払うことができる。」と規定しています。
 ベトナムでも現金による配当が原則ですが,(自己株式ではなく)新たに新株を発行して,この株式を配当として既存の株主に交付することが認められています。実際,少なくない上場企業でも「株式による配当」が行われており,市場金利が高く現金での配当に魅力が乏しく,他方で経済成長とともに株価も上昇傾向にあるベトナムでは,株主も「株式による配当」を歓迎する傾向があります。
 なお,現金で支払う場合は,ベトナムドンによらなければならないとされており(企業法135条3項),このルールは上場会社にも適用されます。
 ところで,この「配当」に類似していますが,ベトナムでは,留保していた利益等を財源として(そのため新たに金銭の払込みがない。),既存株主に対しその持分割合に応じて新株を発行(結果的に資本金額は増える。)することも可能とされています(2015年証券法施行政令(60/2015/NĐ-CP)25条)。
 いずれにおいても,既存の株主にその持分割合に応じて新株が発行・割当されるので,既存株主の持分割合が低下することはありません。

2 「基準日」に関して 
 この配当支払いについて,定時株主総会の開催と同様にベトナムには「基準日」という制度がありません。
 そのため,上場会社では,取締役会がその決議をもって「最終登録日(Ngày đăng ký cuối cùng)」を決定し,同日までにベトナム証券保管振替機構に登録手続を行った株式(株主)に対し,その2営業日後に配当が支払われることになります。

3 配当の支払時期
 配当の支払時期について,日本では法律上の規制はなく,上場会社では,決算日とされることがほとんどの「権利確定日(基準日)」から2から3ヶ月後に支払われるのが一般的です。
 これに対し,ベトナムでは,そもそも「基準日」という制度がないこともあり,「定時株主総会が終了した日」が基準となり,定時総会終了日から6ヶ月以内に支払うこととされています(企業法135条4項)。

東京で弁護士をしています。ホーチミン市で日越関係強化のための会社を経営しています。日本のことベトナムのこと郷土福島県のこと,法律や歴史のこと,そしてそれらが関連し合うことを書いています。どうぞよろしくお願いいたします。