ベトナム上場会社における株主総会(Đại hội đồng cổ đông)
※内容及び引用条文は2021年1月1日施行の企業法 (59/2020/QH14)に準拠しています。
1 開催時期・場所
年1回の定時株主総会と,その他の臨時株主総会がある点は日本と同じです(企業法139条1項)。
定時株主総会の開催時期については,事業年度終了日から4ヶ月以内とされており(企業法139条2項),3ヶ月以内とされている日本と異なります。そのため,事業年度の終了(決算日)が12月末の会社が多いベトナムでは,毎年4月下旬に定時株主総会の開催日が集中します。
株主総会の開催場所については,「ベトナム国内」という法律上の制限があるのみで(企業法139条1項),必ずしも本店所在地又はその周辺で行う必要がありません。
2 開催方法
企業法147条1項及び149条は,株主総会について,日本よりも一歩進めた形で,定時又は臨時を問わず会議体を開催せずに,書面でのみ決議を採択する方法も認めています。
ただし,上場会社では,コーポレートガバナンスに関する政令(71/2017/NĐ-CP)8条4項により,定時株主総会においてこの書面で決議を採択する方法はできないとされています。
3 日本で採用されている「基準日」に関して
ベトナムには予め定款で定める「基準日」という概念はなく,都度,取締役会が決議をもって株主名簿の「最終登録日(Ngày đăng ký cuối cùng)」を決定し,同日までにベトナム証券保管振替機構に登録が完了した株式(株主)に対し,株主総会への参加資格を付与する形式が取られています。
4 株主総会の定足数及び決議要件
(1) 定足数
発行済株式総数の50%超の出席(企業法145条1項)
(2) 決議要件
【普通決議】
出席株主が保有する株式総数の50%超(企業法148条2項)
【特別決議】
出席株主が保有する株式総数の65%以上(企業法148条1項)
5 【特別決議】事項
①新株発行(企業法148条1項a号)
②事業分野又は領域の変更(企業法148条1項b号)
③「会社の管理,統治及び検査の組織機構」の変更
(企業法148条1項c号)
④直近の年次財務報告上の総資産額の35%を超える額の投資又は資産の
売却の決定(企業法148条1項d号)
※35%を超えた額でも一般的な取引は取締役会決議事項
⑤会社の分割,新設・吸収合併及び組織変更(企業法148条1項đ号)
⑥会社の解散又は整理(企業法144条1項đ号)
6 株主総会議事録について
株主総会議事録は,総会終了日から15日以内に株主全員に送付する必要がありますが,Webサイト上の公開で代替できます(企業法150条5項)。
そのため,殆どの上場会社は,自社Webサイトで株主総会議事録を公開しています。
東京で弁護士をしています。ホーチミン市で日越関係強化のための会社を経営しています。日本のことベトナムのこと郷土福島県のこと,法律や歴史のこと,そしてそれらが関連し合うことを書いています。どうぞよろしくお願いいたします。