見出し画像

新ベトナム投資法(2021年1月1日施行)下での「投資」の法的仕組み


1 投資家の属性と「投資」の形態に応じた手続等の差異
 
 2021年1月1日に施行された新しい投資法(Luật số: 61/2020/QH14)は,「投資」の形態として,(1)会社の設立と,(2)既存会社の株式取得を挙げ(投資法21条),事業活動を行うための「投資」を「事業投資(Đầu tư kinh doanh)」と定義した上で(投資法3条8項),ベトナム国内で「事業投資」を行う個人及び組織を「投資家(Nhà đầu tư)」として,その適用対象としています(投資法1条,2条及び3条18項)。
 投資法は,その適用・規制対象である「投資家」を,①外国投資家(外国人又は外国企業),②内国投資家(ベトナム人又は外国投資家が株主にいないベトナム国内会社)及び③外資系企業(外国投資家が株主にいるベトナム国内企業)に3区分しています。
 (1)会社の設立と,(2)既存会社の株式取得という「投資」の形態の違いに応じて,適用される条件及び手続等に差異を設けています。一番大きな違いは,ベトナム計画投資省(局)から「投資登録証明書(Giấy chứng nhận đăng ký đầu tư)」を取得すること(つまり当局からの許可)が必要か否かです。なお,③外資系企業については,その外資系企業内の外資持分比率が50%を超える場合には①と同様の規律に服し(投資法23条1項),50%以下の場合には②と同様に扱われることとされています(同条2項)。

(1) 会社の設立
 ①外国投資家がベトナム国内に会社を設立するには,必ず「投資登録証明書」を取得する必要があります(投資法37条1項a号,同法22条1項c号)。加えて,投資法9条に規定される外国投資家に対する「市場参入条件(Điều kiện tiếp cận thị trường)」を満たす必要があります(投資法22条1項b号)。これは出資比率がたとえ1%でも例外はありません。
 これに対し,②内国投資家は,投資登録証明書は不要で(投資法37条2項a号),企業法や当該事業に関する法律に基づき会社を設立することができます。

(2) 株式取得
 以上に対し,株式取得による「投資」については,①内国投資家だけでなく②外国投資家も「投資登録証明書」の取得は必要ありません(投資法37条2項c号)。ただし,この株式取得により50%超の株式を保有するに至る場合などについては,投資登録証明書は不要ながら,株式取得前に,当局への「登録」が必要とされています(投資法26条)。

2 投資法は「投資」に関する一般法

 ベトナムへの「投資」については,ベトナム計画投資省(局)が一括管理しています(投資法69条)。その意味でも,投資法は,外国人や外国企業がベトナムで会社を設立したり,ベトナム国内企業を買収(株式取得)する際の一般法と言えます。
 そして,石油ガスなど特に規制が必要な分野に関する法律や,上場会社の株式取得(M&A)に関して規定する証券法などは,その特別法という位置づけとなり,投資法に優先して適用されることになります(投資法4条)。

東京で弁護士をしています。ホーチミン市で日越関係強化のための会社を経営しています。日本のことベトナムのこと郷土福島県のこと,法律や歴史のこと,そしてそれらが関連し合うことを書いています。どうぞよろしくお願いいたします。