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竹入嵯峨
2019年11月1日 22:54
【物語】「芸術……、は言い過ぎだな。記録とは、一瞬を永遠のものにしようとした者達が生み出した技術だ。画家の目の前に落ちた夕日は、キャンバスの中に光り続けている。カメラマンの目の前にいた二人は、印画紙の中に生き続けている。記せ。残せ。お前の望む永遠は、何だ」
2019年10月19日 15:46
【詩】碧に終わりを見る者と、蒼に解放を求める者。青に足を付けて二人は、仰ぐように互いを見ていた。
2019年9月16日 18:03
【詩】「好きにしたら良いよ。君にとって、ここは君の世界なんだから」「ただ、私にとっては、ここは私の世界だから、私は私の好きにするよ」
2019年9月14日 17:28
【詩】鮮やかな緑の天井の下、君を探して辺りを見回す。木々の中に確かにいるはずなのに、縦横に駆け回る君の小さな姿を見つけるのは、ここから一本の針を見つけるようなものだった。それでも一目、姿を見たくて。優しい栗毛の君を探し続ける。
2019年9月13日 20:52
【詩】君の頭上で白く輝く月が、君の体を夜の中から浮かび上がらせている。街路樹の色もはっきりとしない夜道では、少し遠い所からこちらに振り返った君の表情はわからなった。
2019年6月29日 13:04
【詩】写真の向こうの彼女が手招きをする。あなたがいる方に行きたくて手を伸ばすけど、向こう側には届かない。彼女はくるりと私に背を向け、庭の奥へと駆けて行く。待って。あなたの駆ける方に、何があるの?
2019年6月10日 22:02
【詩】どうしたの? なんて聞かれても困る。君を前にして、緊張で顔が真っ赤になって目も合わせられないなんて、君に言えるわけないじゃない。
2017年5月2日 22:39
【物語】気を失わなかったのが不思議なくらいだ。息も出来ないほどの痛みの中で、どうにか彼女に笑ってみせる。「良いもの食べたからね。なかなかイケる味だと思うよ…?」軽口を叩いている場合ではないかもしれないけど、こうでもしないと彼女は後で、私を『食べた』自分を責めてしまうから。
2016年10月2日 23:38
【詩】灰色の空を仰いで、風を受ける。高く結い上げた髪は肩の後ろで、コートの裾は膝上の高さで、揺れる。ビル群が低くひしめくのは、この場所が高いから。胸が痛むのは、視線の先にいる誰かを思うから。