さがみこファームができるまで(2)
さがみこファーム代表の山川勇一郎です。前回の続きです。
土地に縁ができ、「貸してくれる」となっても、すぐに事業ができるわけではありません。
そもそも農地は「農地法」という法律で厳重に守られており、農業以外の用途では原則使ってはいけないことになっています。もしそういうことをしたい場合は、「農地転用」という手続きを踏む必要がありますが、農地の区分によって転用可能なものとそうでないものがあります。基本的に農地が農地として守られるよう幾重にも法律の網がかかっていますが、現実には高齢化や過疎化によって、農地であっても「農地という名の耕作放棄地」が広がっており、大きな問題になっています。
ソーラーシェアリングは、営農を継続的に行うことを前提に、農地に発電設備を例外的に立てて良いとされています。ではなぜ、そんなことが可能なのでしょう?
それは、太陽光パネルの下で栽培した作物の収量が、普通に栽培した場合とそん色ない(概ね80%以上)というデータを示した上で、設備の柱部分のみ農地から除外する「一時転用許可」を農業委員会に得て、「一時的に農地でなくなった場所に発電設備を立てている」からです。一時転用許可は3年もしくは10年で、しっかりと営農を継続していれば更新されます。そのようにして初めて農地の上で発電設備を設置することが可能になります。但し、許可の更新時に著しく収量が減っていたり、何らかの形で営農が継続不能になった場合には、転用許可が取り消され、設備も撤去しなくてはなりません。ちなみに、パネルは農地の空中に設置されるわけですが、これも農地の空中を使う許可の申請をします。
そのような面倒な手続きを踏むわけですが、そうでもしないと農地の上で別のことをすることはできなかったわけです。それでも、そうすることで農地が活かされ、農業の課題解決に有効だということが認められ、今では国もソーラーシェアリングを推進しており、各地で遮光下での作物の栽培データも蓄積されてきています。
つまり、農地の上で行うソーラーシェアリングの大前提として、「主」は農業であり、発電はあくまで「従」ということになります。
しかしソーラーシェアリングの中には、発電事業をやりたいがために営農は適当にやっている(と見られても仕方のない)「なんちゃってソーラーシェアリング」も残念ながら存在します。事業者にとって発電は「事業」ですので、ある程度利益を出す必要がありますが、私利私欲のためだけに、本来農業として使える土地で、発電中心に行い、農業を蔑ろにするようなことはすべきではないと思います。そのあたりは一口にソーラーシェアリングと言っても様々だと言えるでしょう。
私たちはこの事業に取り組む際、まず、「儲かる農業をする」と方針を定めました。それは「発電事業のおまけのような農業はやらない」という覚悟でもあります。そうでないと、本当の意味で持続可能ではないと思うからです。そのためには農業をしっかり持続的に行う主体が必要になります。実は当初、地域の事業者が農業をしたいということで、それを前提にスタートしたのですが、諸事情で彼らがギブアップしたので、結果的に自分たちが出資し、主体的かつ発電事業と一体となって展開することを想定した「さがみこファーム」という農業法人をつくることになりました。
そして、この「発電事業と一体的に展開する」ということがとても重要であり、そこに大きな可能性があると後になって実感することになります。
次は「何を、どう育てるか?」について書いてみたいと思います(つづく)