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「泰然自若として腰を抜かす」・・・これは、危機存亡の秋(とき)に面し名将は泰然自若一見腰を抜かしているかに見えるが沈思黙考逆転の一手を考えているのだ、という意味合いで使われる言葉だそうです。そうであればよかったのですが、日本はバブル崩壊後30年間腰を抜かしっぱなしで今日まで来てしまいました。

戦後日本は敗戦の痛手を乗り越え、朝鮮戦争を境に一気に浮上し、その後高度経済成長期を迎え世界が驚く発展を遂げます。国全体が若さと活気に溢れていました。日本や中国の研究家として知られる米国の社会学者エズラ・ヴォ―ゲルが、自国への警鐘として「Japan as number one」という著書を著したのもこの時代のことです。

なまじの成功体験が人々の心を蝕んでいったのかもしれません。土地や不動産の値段が倍々ゲームで高騰しました。今考えてみれば狂っていたとしか思えない話ですが、会員権に億の値段がついたゴルフ場が続出。名門と言われる小金井カントリーリーに4億円の値段がついたのもこの時代でした。こんなことが永遠に続くわけがありません。

やがてバブルの崩壊、リーマンショックと続いて長期低迷の時代に入ります。時の政府や金融機関、企業も、これは一時的現象でやがて回復するのだと高をくくっていたきらいがあります。政府も日銀総裁も経済再建を錦の御旗にゼロ金利政策を取りつづけましたが、旧態依然の税制対策や財政投融資が中心で、国際潮流を見据えた産業構造の転換が置きざりにされたままでした。お金の使い道が間違っていたのでしょう。必要資金は国債を発行して賄うわけですが、国債というのは言わば国の借金です。それが数十年増え続けたらどうなるかは自明の理です。

浮上のチャンスは幾度もありました。
あの3.11の原発事故の後二度とこういうことが起きてはいけないと誓い、既設原発の運転期間は最長でも60年、新増設はできないという国の方針が出され、再エネを増やすため電力固定価格買取制度(FIT)が施行されました。
広島、長崎の原爆と福島の原発事故を経験した日本が、これを機に国を挙げて本気で再エネの拡大に取り組んでいれば、いまや再エネのトップランナーとして世界に君臨していたと思うのですが。

近年は、持続可能な地球に向け、国連でSDGsが採択され世界が脱炭素社会の実現にかじを切る中で日本もそれに同調してきましたが、ウクライナ情勢が深刻化する中で、緊急事態を理由に火力発電所の復活、原発の再稼働や廃止期限の撤廃、新増設が認められ推進されることになりました。
一方、国際エネルギー機関(IEA)が先日公表した気候変動対策の報告書によると、再エネの設備容量を2030年までに23年比で3倍に拡大する必要があると提言しています。
日本は2030年までに総エネルギーに占める再エネの比率を38%にすると公約していますが、これが達成できたとしても21年比で1.7倍、しかもその達成すら危ぶまれるのが現実です。
日本のGDPが今年中にドイツに抜かれて4位に転落するだろうという報道もあります。かつて1ドル80円台まで上昇した円相場もいまや150円。残念ながらこれが今の日本の実力ということなのでしょう。

悲観的なことばかり申し述べましたが、明るい材料もあります。最近の若者たちの躍動です。将棋の藤井聡太が前人未踏の8冠を達成、WBCでサムライジャパンが優勝、二刀流の大谷翔平が大リーグのホームラン王とMVPを獲得、日本サッカーやバレーボールが国際戦で連戦連勝、等々。日本も捨てたものではないですね。ただ、みんなフロックで勝ってきたわけではない、若さや勢いだけでもない、それぞれが勝つべくして勝っているのです。
活躍している人たちの才能と人並外れた努力は勿論ですが、その裏には、正しい戦略の策定、才能を引き出す指導体制、次々に新芽が育つ組織の構築、先進的な技術やメソッドの積極導入、日本国内の殻に閉じこもらない国際性などがあって、それらが結実しての結果だと思います。

さて、我がさがみこファームに目を向けてみましょう。少人数の老若混成チームですがone for all, aII for oneのラグビー精神を地で行くチーム力でみんながんばっています。各自持ち味は違いますが、自らの役割をわきまえつつお互いが力を合わせて目指す目標に向かって進んできました。

私自身について言えば、チーム最高齢の85歳、もう先頭に立って走る力はありません。ただ、みんなより少しばかり長く生きてきただけのモノは積んできたと自負しています。これが若者のセンスと行動力にプラスされれば大きな力になります。この目で結果を見ることはかなわないかもしれませんが、必ずや美しい花を咲かせ実を結ぶと信じてサポートしていきたいと思っています。

(2023.11.25 山川陽一)
 

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