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農業における「体験」の意味について

こんにちは。さがみこファーム代表の山川です。

さがみこベリーガーデン(SBG)は連日たくさんの会員で賑わっています。今年は梅雨明けが早かったからか果実の成熟も早く、摘み取り体験は8月21日が最終日。ぜひウェブサイトからご予約の上お越しくださいね!!

さて、今回は農業における「体験」についてお話をしたいと思います。
SBGでは「体験」を重視しており、夏のブルーベリーの摘み取り体験を軸に、様々な体験の提供を行っています。
SBGの「体験」には大きく次の2つの意味(意義)があります。

1つ目は「教育」的な意味合いです。
食に関わる体験は自ら農作物の栽培に携わり、収穫したものを食べることを通じて、食に対する感謝の気持ちや食に関する理解を深めるきっかけになります。そのような体験は一般的に「食育」と呼ばれています。私たちはそれに加え、再生可能エネルギー、自然環境に関しても生きた学びが得られるような様々な仕掛けをしています。それは単に「楽しい」だけでなく、農業やエネルギーを取り巻く現状について「知り」、「問題意識を持つ」きっかけになります。このように「楽しむ」「気づく」「知る」「疑問に思う」「行動する」起点として、SBGは最適な場所です。そして最大の特徴は、私たちが農業とエネルギーの実践者であることです。実践に勝るものはなく、実践者の言葉は説得力を持って参加者の心に訴えかけます。

2つ目は「経営」的な意味合いです。
SBGは夏の間、会員によるブルーベリーの摘み取り体験を行っています。33種類ものブルーベリーを会員が自分で選んで好きなだけ食べられるため、老若男女問わず大人気です。加えてSBGではパネルの下は適度な日陰になるため、通常の炎天下の農園より涼しく過ごしやすいのが特徴です。一般的にはブルーベリーは夏の炎天下に摘み取り作業をするため、労働集約的で原価における収穫の人件費の割合が高いのが特徴です。そこに体験を取り入れることで、農園側からみれば、お金を払って摘み取り作業をするところ、逆にお金をもらって摘み取ってもらえるため、利益率は良くなります。体験は経営にもプラスに働き得るのです。

ただし、うまくやらないと「かえって手間がかかって」しまい、経営的にマイナスになります。逆もしかりで、農業体験における教育と経営の両立には工夫が必要ですが、私たちは経験上これは十分実現可能だと思っています。その点については長くなるのでまた別の機会に譲りましょう。

このように、体験を通じて、生きた学びの機会を提供し、農業を取り巻く課題を知ってもらうと共に、「農業が稼げて希望のある仕事」になり得ることを実践を通じて示したいと私たちは思っています。それが農業のすそ野を広げ、担い手を増やすことにつながると考えています。世の中には多くの課題があり、農業も深刻な課題が山積しています。ただ、今まで多くの先人達が散々検討しても解決しなかったことに対して、一事業者である私たちが眉間に皺を寄せて難しく考えたところで答えがでるわけではありません。だとすれば、多くの人を巻き込み、明るくポジティブに課題に向き合いたい。「体験」にはそうした力があると思っています。

もちろん、農業において「体験」を取り入れることには、様々な規制や制約があります。農地は基本的に「農作物の生産を行う場所」なので、農業「以外」のことには制約がかかります。加えて私たちはソーラーシェアリング型農園であること、農振農用地かつ接道要件を満たしていないことから、2重3重の規制の網がかかっており、上記のような体験活動を進めるのは言うほど簡単ではありません。ただ、制約は創造の父でもあります。このような条件不利立地で成立すればそれは他の地域にとっても有用なケースになるでしょう。SBGは農業委員会等の行政当局と緊密に連携しながら、法の範囲で新たなアプローチを積極的にトライし、たくさんの人と一緒に壁を越えていきたい、そう思っています。

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