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大先輩のまなざし

地下鉄で久しぶりの外出
途中で乗ってきた初老の女性に席を譲ろうと腰を上げる

「ありがとう。いいのよ、次だから」

 
でも次の駅でもその女性は降りない
上目づかいに眺めてみた
――気を遣って悪かったかな・・
 

 
 
女性は5つ先の駅で降りる時、私の肩に手をあてて微笑んだ

「赤ちゃん大事にね」
 

思いがけない言葉に驚いた
妊娠3ヶ月の私のお腹はまだ大きくないはず
 
電車が動き出すと、自然に微笑みが漏れた
 

全てを見通しつつも、こちらを包み込むような
女性の優しい目を思い出し、これからの不安も吹き飛んだ


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