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『新盆過ぎたけど〈アレ〉の話でも Ⅱ』safiland's Essay - 3 -

 こんにちは、〈safiland -さふぃらんど-〉って呼んでください。
 モノ・コトについてエッセイを書きます。
 好みのカテゴリでしたか? だったら、隙間時間にいかがですか?
 今回のタグ #内見 #マリーセレスト号事件 #体験談 


新盆過ぎたけど〈アレ〉の話でも Ⅱ

 梅雨開けましたか? 暑いですね。

 暑いと言えば、〈アレ〉の話でも如何ですか?
 怖がりな、ぼくの体験談。

内見での出来事

 家を借りる時、内見ってしますよね? 
 今は動画や詳細な画像で内見も出来ますが、可能であれば周りの環境や実際の家の状態を体感したいので、内見は必ず行くようにしています。

 これは、ある不動産屋の内見で体験した話。

 社会に飛び出し、自分で賃貸先を選ぶ初めての不動産訪問。住むのはぼくひとりだけど、なぜか友人と二人で目星を付けた部屋のある不動産屋を訪問した。5月の末だったかな? 暑くもなく寒くもないと記憶にある。
 しかし、あまり思い出したくない。

「その予算でしたら、こちらの物件も内見可能でご案内出来ますが、如何ですか?」
 不動産屋って絶対こちらの第一希望を潰しに来るの何でなん? それは今回置いておいて。紹介された物件は――

  •  ちょっと古いマンションの、東側角部屋、8から10階建ての4階か5階(うろ覚え)

  •  2DK、エアコン2機付き、南側日当たり良好

  •  入居時期(1か月後以降)

 ぼくが希望していた物件は、1DK、風呂トイレ別、エアコン付き、2階、木造で駅近だったから、同じ位の家賃で、駅からも程よく近く、しかも土地勘がある地域だった。何となく、「あのマンションかな?」位の認識で、その時点では内見だけでもOKと言うので、マンションの部屋を見に行くことになった。

 担当者と、ぼくと友人の3人は来客用駐車場所から、古いエレベーターで目的のフロアーに出た。

「こちらの一番奥ですね」担当者は軽やかな笑顔で案内してくれます。

 ぼくはすぐに動けませんでした。昼近い天気のいい日でした。

 該当する部屋へ続く廊下は、片側が外になっているよくある構造で明るかったんだけど、隣の部屋の境界を境にこの奥は〈無ですよ〉とでも言うように漆黒だったのですよ。
 
目的の部屋は階段の影になっていたことを差し引いても、あり得ない状況でした。粘度を感じるような黒さは、その先に何もないんじゃないかと思うような異様な感じがしていました。

 正直帰りたかったけど、担当者も友人も普通にしているし、ぼくが日差しに目が眩んだだけかもしれないと、無理やりポジティブマインド起動して、ちょっと遅れて踏み込みました。

 真っ暗なはずなのに、青い鉄の扉をよく覚えています。
「土足でいいですよ」そういう担当者の後に続いて部屋に入ったぼくは、感情が分離されたようになってしまいました。
「怖い! 怖すぎる!」こう思うのと、感情が切り離されるのとほぼ同時でした。

 部屋は自然光が明るく照らし、見取り図通り広い間取りでした。多少設備は古いですが、リフォーム予定があるので快適になるとの説明を受けました。

 いい感じの条件ですよね? しかしね

 部屋の中は、ついさっきまで住人いたでしょ? てな状態でした。
 4人掛けの食卓には、食べかけの食事が2人分以上あったと記憶しています。とにかく家財が全てあって、内見というよりは〈お宅拝見〉状態。


うろ覚えの間取り図(数値は適当)

 担当者の説明は続いています。ぼくの耳には全く入っていませんでした。
 ――メアリー・セレスト状態だ。
 そう思いました。マリーセレスト号事件と言われる1872年にポルトガル沖で、無人のまま漂流していたのを発見された船舶の話を思い出していました。
 住人だけをかき消したような内見は続いています。

 キッチンに向けた視線は氷結しました。キッチンにある明かり取りの窓は、明るい廊下の状態を示していました。
 外の共用廊下からは窓があると分からないくらい真っ暗だったはずです。もう意味が分かりません。

 ぼくは機械的に部屋や設備を見て行きました。
 内見が終わり、結局その不動産屋では契約を行いませんでした。

 内見の担当者が最後まで部屋がお宅訪問状態であることに、〈一言も触れなかった〉のは異常でした。ぼくも麻痺してしまってツッコミませんでした。
 もし瑕疵理由ありなら内見前に説明があったはずです。

 帰り道友人が――
「あのマンション……やばいな、変な声するし、部屋に誰かいたような気がする」ポツリと言いました。
 ぼくは言葉もありません。

 友人と見ている〈モノ〉が多少違うようでしたが、ぼくの見たことを言葉に出す勇気もなく、曖昧な返事をして、厄落としに飲みに出たのは言うまでもありませんでした。

 今思えば、あの部屋でにおいを感じることは一切ありませんでした。どんな部屋でも、かならずその部屋の匂いがあります。
 それが全くありませんでした。

 あの部屋は実在していたんでしょうか

 ぼくの個人情報配慮でほんの少し内容を加工しています。


 如何でしたか? スキを頂くと踊るかもしれません。
 小説も読んでもらったら拝むかもしれません。
 では、次回……あれば、お会いできることを楽しみにしております。

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