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第5話 AIを社会実装するための更なる挑戦~ミニカーを使って実験してみた~

はじめまして!

新卒1期内定者でインターンをしております松田です。私は静岡出身で、学業では経済学と心理学が融合した「行動経済学」という、合理的ではない人の直感や感情で、どのように経済や人々の幸福に影響するのか学んでいました。また大学生活では、3泊4日のヒッチハイクや10日間の自転車旅、ハーフマラソン、e-sportsの企画・大会運営を行い、「繋がり」をモットーに行動してきました。

セーフィーに入社した理由は3つあり、1つ目は「映像から未来をつくる」というビジョンに共感したこと。2つ目は課題解決領域が広く、社会インパクトがあるところ。3つ目は新卒1期生というところで、一緒に会社と共に作り上げて行くフェーズがとてもやりがいにつながると感じたからです。2022年6月から現在までインターン生として活動し、営業、営業推進、マーケティング、交通量調査を含めた新規事業の研究に携わってきました。

本ブログは、セーフィー新卒内定者がAI交通量調査に挑戦する経験をまとめた全5話シリーズの最終話になります。
これまで1-3話にかけて交通量調査をヒト観測からカメラ(映像)×AIに代替することの難しさと実現に向けた研究について話していきました。4話では、現在行われているヒト観測を用いた交通量調査の中でニーズの高い「一時的な調査」に対する挑戦について話しました。

最終回である本章では、カメラ×AIに代替することによって実現が可能となる「長期調査」にスポットを当て、そのメリットと現在の課題について話していきます。

過去の記事はこちらです。

カメラ×AIで実現できる「長期調査」とは?

従来のヒトによる調査の場合、調査期間中は交代要員を立てるなどの工夫を行いながら、同じ観測地点から絶えず車をカウントすることが基本となります。そのため数日〜数週間などの長期調査というのは現実的に実施が難しく、そもそも数時間〜1日程度の一時的な調査しか実施できません。

一方でカメラ×AIによる交通量調査の場合、カメラを一度設置すると現場にヒトが居合わせることなく、映像を連続的に撮影できるため、長期調査が簡単に安価に実現できます。

長期調査が実現すると、一時的な調査と比べて取得可能なデータ数が増え、データの信ぴょう性が高まります。
これによって、調査目的を達成しやすくなり、また更なるデータ活用も可能となります。

たとえば、観光誘致を行う自治体であれば四半期データを入手することで季節ごとの観光施策を検討でき、大型小売店舗であれば店舗車両の誘導をする警備員の配置策を定期的に見直すことが可能となります。
活用方法は、お客様によって多岐にわたりますが、いずれも1回きりの調査では難しかったことと言えます。

しかしながら、長期間だからこそ発生する問題もあります。その問題とは、季節や時間によって映像の見え方が変化することです。

環境の変化による影響とは!?

私たちはAI交通量調査の研究を進めていく中で、これまで取り上げてきたカメラの高さ・位置・画角・画質だけでなく、撮影する環境の変化もAIの精度に影響を与えるのでは!?と感じました。

例えば、下記の画像のように時間帯によって太陽の光で周りがボケてしまったり、雪などの天候の影響で全体の映像が白くなったりします。※写真はイメージです

実際に外に出て、周辺環境の影響を対策するための実験を行いましたが、自然環境は人為的にはコントロールできないため、適切な検証が困難でした。

そこで「擬似的に自然環境を再現することを通して対策を練ろう」と考え、ミニカーを用いた実験をしてみることにしました。

実験概要

様々な自然環境を擬似的に再現し、その環境下でミニカーを実際の車に見立て、カメラを用いて撮影します。取得した映像に対してAI解析を実施し、検知ができるかどうかを検証します。今回は以下の3つの環境パターンにて実験を行いました。

 ①屋内
 ②雨
 ③屋外

用意した実験物】
・固定カメラ「Safie Go PTZ」
・ウェアラブルカメラ「Safie Pocket2」
・ミニカー
・霧吹き

①屋内
まず初めに社内でミニカーが検知できるか検証してみました。以下の画像のように机の上にミニカーを配置し、カメラ(Safie Go PTZ、Safie Pocket2)で撮影します。

撮影した映像に対してAI解析を実施すると、特殊車両(ショベルカー)以外は車として判定されました。このことから、私たちはこのミニカーを利用して、擬似的な実験が可能であることが分かりました。

②雨
次に雨を仮想的に再現するため、カメラに霧吹きで水滴をかけた上で、車が検知できるのか実験してみました。霧吹きによる水滴の付着により実際の雨のようなリアルな雨粒を再現できます。

霧吹きした後の映像が、以下の3枚の写真です。やはり水がかかる前の状態よりも、映像が見づらくなってしまいますよね。
実際に人間が映像を見て車を数えようとしても、このように画面が曇ってしまっては難しくなるかと思います。AIの場合でも同様で、雨により濡れたレンズで撮影した映像では、精度の悪化に繋がる可能性があります。
どこまでの水滴をAIが許容できるのか、ここを惜しみなく追求することが正確な精度を担保することに繋がります。

水滴の量:少なめ
水滴の量:中ぐらい
水滴の量:多め

ただ今回は水滴の影響を受けても、対象物(ミニカー)とカメラの距離が近かったため、全ての映像で車として検知することができました。

③屋外
最後に屋外で撮影した映像に対してAI解析を行ってみました。屋外では光の影響があると予想していましたが、屋外でも大きく光の影響を受けずに、屋内同様にミニカーを車として検知することができました。

今回の実験は、プライバシーに配慮し周囲の方に許可を得て、公園にて行わせていただきました。協力してくださった方々ありがとうございました。

今後の展望について

今回のミニカー実験を通して、屋内・雨・屋外という環境を疑似的に用意できることが分かりました。
今後は周辺環境の影響への対策を検討していくため、追加研究をさらに加速していきます。具体的には、AI解析に対して最適なカメラ画質を検証することや、カメラと対象物(ミニカー)の距離を測ること、雨粒をカメラに付けない対照実験を行うことです。
これらの実験の結果をもとに対策を練ることで、太陽の光による反射や車のライトの影響、雹が降った場合など、あらゆる環境パターンでも等しくAI交通量調査の価値を提供することを目指しています。

リレーブログ 全話まとめ

セーフィー新卒内定者がAI交通量調査に挑戦するリレーブログを、最後までお読みいただきありがとうございました。

ブログを読むまでは、ヒト観測をすべてAIに置き換えれば、ボタンを押すだけで欲しい結果が簡単に出てくると思っていた方も多いでしょう。
私たちもそうでした。ただ実際に蓋を開けてみると、精度が上手く出せず何度も解析を繰り返すことになり、AI調査がヒト観測の倍以上時間がかかってしまうことを身をもって知りました。

それでも研究を進める中で「AI」と「カメラ」の両視点から対策をとることの重要性を認識し、向き合うべきポイントや課題が徐々に整理されてきました。これにより今は、将来AIがヒトを代替する兆しを感じています。
AI交通量調査の取り組みは、精度を探求すればするほど、追加実験が必要となる奥深い内容です。(ブログでは紹介しきれなかったですが、実際に取り組んだ実験は他にもたくさんあります・・・)

実世界においてAI解析を精度高く実施するノウハウを得るには道のりは長いですが、私たちセーフィーは様々な観点から挑戦し続けます。

これまで私たちのブログ(全5話)にお付き合いいただいた方にも、セーフィーが新たな交通量調査の提供を実現できそうだと感じ、期待していただけていると幸いです。そして、今後も応援していただけますと、チーム一同とても嬉しいです!

おまけ1:実験を通して

実は実験の中で悲しい出来事が一つありました。映像の中に私が映った際にメガネの縁が車のタイヤ?と認識されたため、車判定されてしまったのです。まだまだAIを使いこなすことはとても難しい、ということがお分かりいただけたでしょう(笑)

おまけ2:インターンを通して(松田談)

蛇足になりますが、最後にリレーブログのアンカー特権(?)を借りて、私のインターン経験についてどうしても思いを伝えたく、少しだけ共有させてください。

私は今回のインターンで新規事業開発のための実験を行ったり、その内容を元に社内へ向けてプレゼンをしフィードバックを頂いたり、他社と意見交換をさせてもらうする機会をいただくなど、学生には経験し得ないような、貴重な経験をさせてもらいました。

これらを通して、自分ができること、今しかできないことに、全力で取り組める会社だと感じました。
このような活動はセーフィーが大切にしている価値観・行動規範である7つの『culture』を元に行われています。個々がPlan(計画)→Do(実行)→Check(評価・データを基にした事業化)→Action(仕組み化し改善)に沿って実行し続けるチームだと実感しました。

インターンでここまで裁量権を持って働けると思っていなかったので、とても良いギャップでした。カメラを愛し、人を愛し、本気で街をデータ化して「映像から未来をつくる」という世界を、私も入社後セーフィーの社員として一緒に目指していきたいです

最後に

この記事を読んで、セーフィーが取り組むAI交通量調査にご興味をもたれた方は、ぜひ弊社HPの問い合わせページからお気軽にご相談・ご連絡ください!

また随時正社員・インターン共に新たなメンバーも募集をしているので、このような挑戦に関わってみたいという方も、まずはカジュアル面談のご希望からお待ちしております。


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