見出し画像

スピード感がココロを刺激する カーレース映画5選!

解説している作品はこちら!


『ラッシュ プライドと友情』

製作年/2013年 製作・監督/ロン・ハワード 出演/クリス・ヘムズワース、ダニエル・ブリュール 

雨の中のレース場面がスリリング!

近年のカーレース映画の中で、多くの人が“傑作”と讃えるのが、この作品。1976年、F1世界選手権での、ジェームス・ハントとニキ・ラウダという2大天才ドライバーの闘いを描く。豪放な性格で、直感型のハントと、冷静で頭脳派、すべて論理的に向き合うラウダ。絵に描いたように対照的な2人のキャラクターが、それぞれ共感を誘い、ライバル対決と、静かに育まれる絆がドラマチックに迫ってくる作り。演じるキャストもハマリ役で、とくにマーベル映画のソー役でおなじみのクリス・ヘムズワースは、ハントと一体化したような演技をみせてくれる。

もちろんクライマックスの最終戦が見せ場になるのだが、中盤のドイツGPが、尋常ではないレースの過酷さに加え、そこで起こる事故も衝撃的。雨の中の加速は、ほかのカーレース映画にはないスリリングなスピード感を味わうことができる。クラッシュの瞬間には背筋が凍るはずだ。2019年、ニキ・ラウダは70歳でこの世を去ったので(ジェームス・ハントは1993年に45歳で死去)、追悼の意味でも必見。

『栄光のル・マン』

製作年/1971年 監督/リー・H・カッツィン 出演/スティーブ・マックィーン

短すぎる車間距離にハラハラ!

2019年度のアカデミー賞作品賞候補になった『フォードvsフェラーリ』と同じく、ル・マンの24時間耐久レースを背景にした作品。前年のレースで大事故に見舞われ、相手のドライバーが亡くなる悲劇を経験したマイケルが、再びル・マンに挑む姿を描く。マイケル役を演じたスティーヴ・マックィーンは、バイクやレースカーに夢中だったことで有名。カーアクション映画の金字塔である『ブリット』でも、多くのシーンで自らハンドルを握り、見事なドライビングテクを見せつけていた。そんな彼の念願のプロジェクトとして完成したのが今作だ。

映画用に撮影されたシーンに、1970年のル・マンの実際の映像が組み合わされ、本物のレースを観ている錯覚もおぼえる。マイケルが先行車を追うファイナルラップでは、その車間距離が信じがたいほど短くなったりして、追突しそうなスリルも味わえるはず。5年前の作品『グラン・プリ』と同じくマルチ分割スクリーンも効果的に使用。製作舞台裏を描いたドキュメンタリー『スティーヴ・マックィーン その男とル・マン』も合わせて観れば完璧だ。

『デイズ・オブ・サンダー』

製作年/1990年 監督/トニー・スコット 出演/トム・クルーズ、ニコール・キッドマン

ドライバー視点が興奮を呼ぶ!

世界3大レースはモナコ、ル・マン、インディ500だが、アメリカでモータースポーツといえば“ナスカー”。この映画の主人公、コール・トリクルはインディでの勝利をめざしながらも挫折。ナスカーのドライバーとして、デイトナ500での栄冠に挑む。ハリウッド作品らしい、苦闘&サクセスストーリーだ。主演のトム・クルーズは、この4年前、『トップガン』での戦闘機F-14のパイロットが大好評で、その流れを今作はモータースポーツの世界にアップデート。トムの当たり役の系統が受け継がれた作品でもある。

大観衆の前を通過するナスカーのストックカー。その目にも止まらぬ速さが圧巻だが、ライバルのクルマの真横に並び、サイドボディ同士が接触。そこから相手のクルマがスピンするなど、ギリギリの駆け引きで手に汗握るシーンが満載。別のクルマがクラッシュし、そこから吹き上がる白煙の中をコールのクルマが通過する映像などは、ドライバーでしか味わえない未知の領域を体感させる。F1とは一味違うドラフティングの最高級テクニックに、随所で興奮させる仕上がりだ。

『グラン・プリ』

製作年/1966年 監督/ジョン・フランケンハイマー 出演/ジェームズ・ガーナー、イブ・モンタン、三船敏郎

ドライバーが吹っ飛ぶ衝撃クラッシュ!

モンテカルロなどヨーロッパ各地のカーレース、そしてF1グランプリに命をかけた男たちを描く、レース映画の“古典”ともいえる一作。ジェームズ・ガーナー(アメリカ)、イブ・モンタン(フランス)、三船敏郎(日本)など各国のスターが集結したことも話題になったうえ、世界的トップレーサーも撮影に協力した。ドライバーの目線も多用したレースシーンの映像は、1966年当時、画期的だった。迫力とスリルを伝えるため、スクリーンを分割するなど、時代を先取りした演出は今観ても古くささを感じない。

コースから飛び出したクルマが、そのまま崖の斜面を滑り上がるなど、実写とは思えないアクシンデントの瞬間が多発。ガードレールにぶつかってドライバーが車外に放り出されるシーンもあるが、これは当時のF1ではシートベルトや肩のハーネスを装着していなかったから。そんな“時代”を感じられる映像が、思わぬスリルで迫ってくるのも今作の持ち味だ。長さは3時間という大作で人間ドラマの部分も多いが、現在の映画に見劣りしないカーアクションを堪能できる。

『ニード・フォー・スピード』

製作年/2014年 監督/スコット・ウォー 出演/アーロン・ポール、ドミニク・クーパー

実写にこだわったスピード感が凄い!

同名の人気レースゲームを原案に作られた、この映画。スーパーカーによる公道レースが描かれるので、『ワイルド・スピード』シリーズの初期作品にも近いが、よりカーアクションを“見せる”姿勢に徹底している。主人公のトビーは、カー・エンジニアとしても、ドライバーとしても超一級のテクニックの持ち主。それだけでカーアクション映画としての期待を高めてくれるうえ、サーキットではなく、非合法のストリート・レースなので、ぶっとんだ映像でアドレナリンを上昇させるのだ。

「レースは芸術だ」と言い切るトビーの愛車、〈フォード〉マスタング シェルビーGT500のほか、〈ブガッティ〉ヴェイロン、〈ランボルギーニ〉セスト エレメントなど、スーパーカーのマニアにはたまらない車種が次々と登場。しかもCGは極力使わず、実写にこだわって撮影されたので、スピード感はもちろん、クラッシュや、その後、クルマが吹っ飛んで回転するシーンなど、とことんリアルに伝わってくるのが、本作の魅力。崖から飛び出し、落下するクルマをヘリコプターが釣り上げて助けるアクションもCGナシ。奇跡の映像を目撃したい!

文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito

ご興味あれば、ぜひサポートのほどよろしくお願いします。今後の記事制作に役立たせていただきます。