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チベット便り016 マルパとミラレパ

ナマステ~!ヘッダーの写真は、ゴンパのアシュタマンガラ(神聖な8つの吉祥文様)の一つ「シュリヴァッツァ」です。チベット密教では愛を象徴的に表現した吉祥文様で、万物の究極な繋がりのシンボルです。知恵と慈悲の相互作用、聖と俗の相互依存、知恵と手段の統合を象徴します。

この間行った本屋さんで買ったチベタン・ブディスト・シンボルズ ノーリッジカードの説明では、

「無限または永遠の結び目」のシンボルは、団結、継続、調和、幸運の魔法のデザインとして現れます。この「ラッキーダイアグラム」は、サンスクリットでシュリヴァツァと呼ばれ「シュリの最愛の人」を意味します。シュリは、ヴィシュヌの配偶者である繁栄の女神ラクシュミを指します。もともとは、ヴィシュヌの胸を飾った縁起の良いマークまたは髪の束でした。 .この連動する幾何学的なエンブレム、仏教の輝かしい結び目は、「スワスティカのように回転する」と表現され、仏陀の全知、永遠の知恵、および慈悲、カルマの法則(因果)としての周期的実在の現実の根底にある「依存起源の12のリンク」を表しています。

"Tibetan Buddhist symbols knowledge cards" Robert Beer 
Tibetan Cafe

カイラス山のミラレパ

空想カイラッシュ・パリクラマ(カイラス山巡礼)をしていた。カイラス山はシヴァの住処で、シヴァリンガとしても崇められヒンドゥはもちろん、ジャイナ、ボン、チベット仏教と数々の宗教の聖地として信仰を集めています。チベット仏教では世界の中心にそびえる聖なる山、メール山と同一視され、周囲の山々を含め天然のマンダラとみなし聖地とします。人類未登頂の神秘の山ですが、伝説では聖者ミラレパが山頂に達したと伝わっており、ミラレパの洞窟とミラレパの足跡が現在でも残っています。河口慧海も1900年にカイラス巡礼をしています。

カイラッシュのことについては、また詳しくお便りするとして、今日はミラレパのことを書きます。ティロパからナロパ、ナロパからマルパ、マルパからミラレパと知恵が伝授されていきますが、名前の最後にパがついてないとだめなのかと思うくらいです。

1038年から1052年の間。チベット南部クンタン地方のキャンガ・ツァにて、チベット名家キュンポ氏族の父ミラ・シェラプ・ギャルツェンと、ニャン地方の王族の末裔の母カルモ・キェンの間に生まれ、トゥーパ・ガ(聞く喜ぶ)と名づけられました。7歳の時に父が病死し、叔父ユンドゥン・ギャルツェンと叔母キュン・ツァ・ぺルデンに莫大な遺産を強奪され、召使いの身分に貶められ、虐待され、悲惨な生活を強いられました。

母カルモ・キェンは、叔父と叔母に激しい憎悪を抱き、ミラレパは復讐のために黒魔術を学び、習得した呪法によって村人35人を呪殺しました。雹嵐を起こす呪法で村の農作物を壊滅し、黒魔術で悪業を積みました。

悔い改め、ラマ高僧ロントン・ラガの元に行くも、前世からのカルマ的な因縁のある別のラマの元へ行くよう告げられ、マルパに弟子入りするよう勧められました。ミラレパは、マルパの名前を聞いただけで心が喜びに満たされ、涙がこぼれ、激しい信仰心が呼び起こされました。

Surya from Dharma

マルパを訪ねて

ミラレパは、ロダクという谷にあるトールン村の寺院に住むマルパを訪ねて入門を乞いました。一方マルパは、師であるナロパの命により、わずかに汚れた水晶の金剛杵(ドルジェ)を甘露で洗い勝利旗(ギャルツェン)に掲げると、まばゆいばかりの光を放ち、その光を浴びた六道の有情が全て済度され至福に満たされた夢を見ていました。

六道(梵サドガティ)=衆生がその業(カルマ)の結果として輪廻転生(サンサーラ)する6種の世界のこと
有情 情を持つ生き物
済度 ブッダ(仏)やボディサットバ(菩薩)が迷い苦しんでいる生き物を救って、悟りの彼岸に渡すこと。

マルパは、ミラレパがナロパとダーキニーによって授けられた特別な弟子であると既に知っていました。

ダーキニー チベット密教では、ある程度の精神的発達を伴う人間の女性をさし、メッセンジャー、ガイド、守護者として行者を悟りに導く存在。アヌッタラヨガ・タントラの密教修行において行者のパートナーの役割を担う。
ヒンドゥにおいては、ラークシャサ(羅刹)の女達のことで、個人ではなく集団や種族全体をダーキニーという。男の場合はダーカ。古代インドの鬼女神(ヤクシニー・夜叉女)が元で、シヴァ神の一形態マハーカーラの配偶者であり、時間・殺戮・破壊を司る女神カーリーに仕える。

くるちゃんメモ

ミラレパの試練

マルパは、ミラレパに「石造りで多層階の塔を独力で建設せよ。」と命じ、途中まで完成させると、「解体して材料を元の場所に戻せ。」と命じました。マルパは、場所と設計を変えて、建設と解体を何度も繰り返させるという理不尽で過酷な労働を課しました。
それだけでなく、マルパは激怒して、公衆の面前でミラレパを罵倒、殴打、蹴り上げるなど過酷な仕打ちを繰り返しました。密教のアビシェーカ(灌頂)を受ける弟子の輪からミラレパだけを追い出すなどして、ミラレパが切望する教えをミラレパだけには与えませんでした。

これらは、前半生で積んだ悪業を浄化するため、マルパの深い知恵と慈悲によってミラレパに与えた試練でした。

ミラレパは、何度も後悔と絶望の淵に投げ込まれ、今生で教えを授かる望みを全て失いました。母のように優しいマルパの妻ダクメマや、マルパに代わって教えを授けようとしてくれた兄弟子が、自分のおかげでマルパの逆鱗に触れ、窮地に陥っていることを知り、遂にミラレパは自殺を図りました。

ここに至って、ミラレパの悪業が完全に浄化されたことを知ったマルパは、ミラレパを弟子として受け入れ、ナロパによって授けられた「ミラ・ドルジェ・ギャルツェン」という法名及び灌頂を与え奥義を伝授し修行に入らせました。

灌頂 梵アビシェーカ 水を撒く、濡らす、開始するなどの意味で、王の即位などの風習。ヒンドゥでは戴冠式、就任式などで水を使った儀式のこと。密教では、ボディサットヴァ(菩薩)がブッダ(仏)になる時、頭に水を灌ぎ、ブッダの位に達したことを証明すること。頭頂に水を灌いで諸仏やマンダラと縁を結び、種々の戒律や資格を授けて正統な継承者とするための儀式。

Kullu Valley

綿を纏ったミラ

マルパの元でマハームドラーを成就し、ナロパの六法など全ての灌頂と奥義を伝授されたミラレパは、人里離れた山中の洞窟で苦行に入り、自生するイラクサのみを食べ、最後は全裸で修行を続け、様々な神通を現すことができるようになりました。昼は意のままに変身し、空中を飛行、数々の奇跡を起こしました。夜は夢の中で宇宙の果てまで探索し無数の化身を現しました。

ミラレパは、トゥンモ(火)のヨーガの成就により体温を制御することができたので、綿衣しか身に着けていませんでした。レパは、綿衣の行者という意味で、ミラレパと呼ばれる由縁です。弟子も綿衣を纏い、レパと名乗りました。

ミラレパは、その後各地を遊行し、ゲシェというラマがミラレパへの嫉妬から毒殺を画策し、毒入りのヨーグルトを自分の妾からミラレパに提供させました。ミラレパは、毒が入っていることを知っていました。妾が懺悔の気持ちでミラレパからヨーグルトを取り返して飲もうとしたことへの大悲と、ゲシェと妾の望みを叶えてやろうという大慈悲から口に運び、深刻な病に陥りました。ゲシェは、ミラレパが真のブッダであると知り、邪悪な行いを激しく懺悔し改心し、ミラレパに帰依しました。

ミラレパは自らの死を通して、最後の教えを与えるためにチュバルの地に赴き、大勢の弟子に囲まれて、木の兎の年(1122年)に84歳でこの世を去りました。

ミラレパ「綿をまとったミラ」は、チベットで人気のある崇拝される人物です。偉大な神秘家および詩人として尊敬されています。ミラレパは、チベット仏教の伝統におけるヨギン(精神的指導者)の方法を例示しています。 「高貴な寛ぎ」のポーズは、ミラレパの特徴的なサインです。ヨギの描写では、イヤリング、長い髪、瞑想バンド、ローブ、カモシカの皮が一般的です。 金色の真鍮で成形され、目は銀の象眼細工が施されています。花柄とジグザグ模様のアンダースカート、ショール、瞑想用バンドが飾られています。ベースの上部を覆うカモシカの皮は、毛皮に似せて作られています。聖人の髪は垂れ下がっています。 太い髪の房と、膨らんだ耳たぶのコイル状の輪。ミラレパの左手にある頭蓋骨のカップには、ラピスラズリ、ターコイズ、ルビーの「宝石」があります。

The art of Tibet knowledge card by Newark musium


Kullu Valley

The Eight Auspicious Symbols

瓶、蓮、結び目、輪、巻貝、旗、日傘、双魚。これらの8つの古代インドの幸運のシンボルは、 ブッダが悟りを開いた際に、ヴェーダの偉大な神々がブッダに贈りました。 最もよく知られている仏教のデヴァイスです。チベタン仏教では、伝統的に、これら8つのシンボルをブッダの体を形成するものとして識別しています。「日傘」は頭、「魚」は目、「宝瓶」は首、「蓮」は舌、「車輪」は足、「勝利の旗」は体、「巻貝」は言論、「永遠の結び目」は心です。

Tibetan buddhist symbols knowledge cards by Robert Beer


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