チベット便り015 ティロパとナロパ
ナマステ!今日は、11世紀にチベット密教カーギュ派を開いたマルパの師ナロパと、ナロパの師ティロパのお話。ちなみにダライ・ラマ14世はゲルク派。
絶賛やさぐれ中。許せないのは、私の心が狭いからなのか?「仏性育ち待ち」のようなスタンスに、「ナロパ目指してるわけじゃねぇし。」と悪態をつく。
私は、悟りを開くよりも、先に対策を練りたい。深刻度は、人それぞれで、尊重なしのティロパ並み横暴に「ナロパじゃねぇって何度も言ってんだろ。おめぇに弟子入りしてねぇし。」と言った。
とはいえ、とはいえですよ。シャバ僧の生臭坊主の私には、まだチャンスとは思えない。
一方、ナロパはベンガルのシュンリ(ベンガルのヒンドゥ階級)の家系に生まれ、28才でナーランダの仏教大学(5世紀から12世紀に繫栄した世界最古の大学)に入学。偉大な学者になり、討論者としては「北門の守護者」の称号を獲得し、多くの学生から支持されました。
ある時、ナロパのもとにダーキニーが現れ、仏陀の教えであるダルマという言葉を理解しているかと尋ねました。ナロパは言葉自体も、意味も理解していると答えました。ダーキニーは涙を流し、ダルマを理解しているのはティロパだけなので、あなたは偉大な学者であるか嘘つきであると答えました。
ナロパは、ティロパという名を聞いた時、強烈な献身的気持ちを経験し、完全な達成を実現するため、教師を見つける必要があると気づき、大学での勉強と地位を放棄し、ティロパを探し始めました。
(大学のバルコニーで、正門のわきの乞食達が、偉大なるヨーギ、ティロパの噂話をしているのを聞き、ティロパを師と仰ぐ自分を予感し、ティロパを探すという説もあります。)
ナロパは、ティロパを探しながら「12の小さな苦難」として知られるものを経験しましたが、すべての苦難は悟りへの道のりに隠された教えでした。
一年以上探し歩き、ついに、小さな漁村で漁師にティロパの事を尋ねると、「偉大なヨーギの事は知らないが、ティロパなら、あの川のほとりに住んでいる。あいつは怠け者で自分で魚を取ることもできず、人が捨てた魚のはらわたや頭を食ってる始末だ。」と答えが返ってきました。(実はティロパは、ダーキニーの「魚のはらわたや頭を食べなさい。」という教えに従って暮らしていた。)
ティロパは、ナロパを弟子として受け入れ、その後12年間ともに暮らします。「どこかの台所からスープを失敬してきたら、教えを授けよう。」そんな師の言葉に、ナロパは、どこかの台所に忍び込み、料理人と家の主人に袋叩きにされます。何とか一杯のスープを持ち出し、血まみれになりながらティロパに渡します。飲み終えたティロパは、「もう一杯持ってきて。」ナロパは、もう一度台所に戻り、半死半生でティロパにスープを渡します。ティロパは飲み終えると「ありがとう。どこかに出かけるとしよう。」と言いました。
ヒルがいる堀で「渡りたいから、橋になっておくれ。」と命じ、ナロパを水の中に横たわらせ、無事に渡り終えたティロパは、全身ヒルに吸い付かれたナロパを置き去りにします。
こういうことが、たびたび繰り返され、ナロパの忍耐は、頂点に達します。それを見逃さなかったティロパは履いていたサンダルを脱ぐなり、そのサンダルでナロパの横っ面を、嫌と言うほど張り飛ばしました。
その瞬間ナロパは、ティロパのマハームドラーの教えが心中にひらめき、悟りを得ました。これが、アビシェーカ(入門)だったと言います。
盛大な祝宴が開かれ、ティロパは言います。「私に教えられるすべての事はナロパに伝えた。今後マハームドラーの教えは、ナロパから受けよ。」「ナロパは私に継ぐ第二の王者である。」その後、ティロパは、初めて教義の詳細をナロパに説明しましたとさ。
修行の足りない私には、ティロパの教え方はパワハラとしてしか見れず、ナロパにしても、どんだけマゾなんだって思ってしまう。
ナロパがティロパに出会えた時の漁師が言ってたことでもわかるように、乞食も聖人も、相手のどこを見るかってことだけで、乞食が聖人になり、聖人が乞食に見えたりもするわけだ。紙一重、または同じ。
ただのパワハラも、受け手が望めば「教え」になり、その現実からも何かを学び取ろうとすれば、苦難や苦痛も「教え」であると気づくのかもしれない。過去を無駄にしないためにも。
ナロパは、ティロパのさまざまな教えを受けながら、「12の大きな苦難」と、道のりにあるすべての障害を克服するための訓練を受け、マハームドラの完全な実現で最高潮に達しました。
ティロパは、ナロパへ歌によってマハームドラーの指示を与えました。ガンジス川で歌ったため「ガンジス・マハームドラー」として知られています。
ダライ・ラマ 「ダライ」はモンゴル語で「大海原」を意味し、「ラマ」は教師を指すヒンディの「グル」に相応するチベット語である。
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