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神さまのバチが当たった話

私は霊長類ヒト科のメスをかれこれ半世紀以上やっているのですが、いくつかの理由から神、幽霊、虫の知らせ、の類いはあると信じてます。

特に、神についてはふたつの実体験から絶対いると確信しており、まずはそのうちのひとつ、これは私が小学生の時の話です。

私が米粒を残せない理由

当時、私の家の近所には広大な田んぼがあり、秋になると刈り取られた稲束が通学路沿いにズラリと干してありました。

きっと手触りが良かったんでしょう、バチ当たりな私はその日、その逆さに干された稲を、

ずざざざざざーっ

と手で触りながら道路を走って遊んでいました。

すると、

「バチッ」

と右目に衝撃が走り、何かが目に飛び込んだ感触がありました。

「虫か?」

と慌てて目を押さえ、何度かまばたきしましたが、目には何も入っていません。でも、それでいてゴロゴロする感触がいつまでもずっと消えないのです。

今になって思うのですが、私はこのときなぜか「怒られた!」ととっさに直感していました。

だったら最初からそんなバチ当たりなことやるなよ、という話なんですが、黄金色の稲束は当時の私にとって、触らずに通り過ぎるにはあまりにも魅力的な感触だったのでしょう。

ですが、農家の方が丹精した稲穂をそんな風に扱う無礼な小学生女児を、八百万の神がそのまま放っておくはずはありません。

ともあれ、うちに帰って目を水で洗っても、目の中のゴロゴロは消えません。
石などが入った気配はなし。なんだろうなあ、と違和感の残る目を気にしつつ、その日は普通に休みました。

翌朝、目覚めた私は洗面所で鏡を見て絶叫しておりました。

鏡に映っていたのは『四谷怪談』のお岩さん役がやれそうな私の顔でした。

眼科の見立ては『ものもらい』。

確か、完治に10日ほどかかったと記憶しています。

私がご飯を一粒も残せなくなったのはそれ以降です。

絶対に中を見たらダメよ

ふたつめの話は前にもどこかで書いた覚えがあるのですが、これは私が20代の時、赤坂の料亭で働いていた頃の出来事です。

その日、横着な私は客が帰ったあとの下げものをいちどに盆に詰みすぎ、結果、よいしょと持ち上げた時にグキリとクビの筋を痛めてしまいました。

重いものが持てなくなり働けなくなった私を見兼ね、先輩のお姐さんが私を行きつけの鍼灸院に連れていってくれました。

合気道5段が自慢だという台湾人の先生はたいへん腕のいい人で、電気バリや瀉血などを次々と私にほどこしたあと、最後にこれはサービスですよと漢方薬を包んでくれました。

しかし、

「アナタこれ煎じるとき、絶対に中を見たらダメね。見たらアナタ、絶対にこれ飲めなくなっちゃうから」

絶対、と2度も言われたら、人の身としては見る以外に選択肢はありません。

私は鍼灸院を出てすぐ隣のドトールへ入りました。そしてコーヒーを飲む間ももどかしく、漢方薬が入ったその袋の中身を開けました。

昼下がりのドトールに私の絶叫が響き渡りました。

袋から出てきたのは大量のゴキブリでした。
高価な漢方薬らしい、乾燥したシナゴキブリです。

そしてそのとき、ちょうど店内にかかっていた有線の音楽が『ラ・クカラチャ(ゴキブリの歌)』だったのです。

本当の話です。

断言します。神はおわします。

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