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BlackRockのBUIDLと急成長する米国債のトークン化市場

背景

2024年3月、BlackRockはトークン化投資ファンドBUIDL(BlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fund)を立ち上げました。Ethereumブロックチェーン上に構築されたこのファンドは、毎月配当をトークンとして直接投資家のウォレットに配り、米ドル建ての利回りを提供します。

BlackRockは、世界最大の資産運用会社であり、2023年12月末時点で約10兆米ドル(約1,411兆円)の運用資産を管理しています。同社は以前から暗号資産分野への取り組みを積極的に進めています。2024年1月には、米国証券取引委員会(SEC)によって承認されたビットコインの現物ETFを提供しています。

近年、暗号資産業界では現実世界の資産(RWA、Real World Assets)のトークン化が注目を集めており、その市場規模は着実に成長しています。BlackRockのような大手金融機関の参入は、伝統的な金融と暗号資産エコシステムの間の橋渡しとなり、RWAトークン化分野をはじめ、暗号資産分野全体の信頼性の向上に寄与すると期待されています。

BlackRockのBUIDLの立ち上げにより、RWAのトークン化は、もはや実証実験の段階を超え、既存の金融業界に重要な変革をもたらすかもしれません。このレポートでは、まずRWAトークン化の市場状況を確認し、次にBUIDLの内容を簡単に分析します。その後、BlackRockの取り組みがどのような影響を与えるかを探ります。

RWAトークン化市場の成長

資産のトークン化(アセットトークナイゼーション)は、ブロックチェーン上で取引可能なデジタルトークンに資産の権利を変換するプロセスです。このトークン化は、資産の流動性を高め、投資障壁を取り払い、金融取引の透明性や効率性を向上させることが期待されています。

特に、最近の投資環境の変化、米国債とDeFiの利回りの逆転現象を背景に、その成長は加速しています。2023年の初めに約7億ドルだったRWAトークン化市場は、2024年4月には約63億ドルに拡大しました(下のグラフ)。

出所:https://defillama.com/protocols/RWA

特に米国債のトークン化市場は、BlackRockのBUIDLファンドの参入により、2024年4月15日時点で約11億ドルに達し、2023年年初と比較すると約10倍の成長を遂げています(下のグラフ)。

出所:https://app.rwa.xyz/treasuries

RWAトークン化のエコシステムは多様化しています。トークンの発行や取引をサポートするディストリビューター、DeFi、ウォレット開発事業者、トークンの発行や管理をするトークナイゼーションプラットフォーム、ブロックチェーンネットワーク・プロトコルなど、さまざまなプレイヤーが参入し、市場の成長を支えています。

出所:https://tokeny.com/real-world-asset-rwa-tokenization-ecosystem-map/

BUIDLとは

BUIDLは、Ethereumブロックチェーン上で、1トークンあたり1ドルの価値を維持しながら、投資家のウォレットに米ドルの利回り相当のトークンが毎月付与されるよう設計されています。BUIDLは、現金、米国財務省短期証券、repurchase agreementを裏付けとし、適格投資家を対象に最低投資額500万ドルとしています。

BUIDLファンドは、立ち上げ後最初の1週間で1億6,000万ドルの資金が流入し、Etherscanのデータによると4月11日時点で総額2億9,300万ドルとその規模は拡大しています。

BUIDLのエコシステムは、トークン化プラットフォーム、トランスファー及びプレースメントエージェントとしてのSecuritize Markets, LLC、ファンド資産のカストディアンとしてのBNY Mellon、その他カストディと決済を担うプレーヤーとしてAnchorage Digital Bank NA、BitGo、Coinbase、Fireblocksが含まれます。2024年4月11日には、ステーブルコイン発行者のCircleが、即時に、24時間365日いつでもBUIDLをUSDCへ交換することができる機能を新たに設立したことが報じられています。

BUIDLは、1933年証券法の規則506(c)および投資会社法のセクション3(c)(7)に基づいて発行しています。これらは、適格投資家のみを販売対象とする規制であり、一般の個人投資家は購入することができません。

BlackRockとは

BlackRockは世界最大級の投資運用会社で、2023年12月末時点で約10兆米ドル(約1,411兆円)の運用資産を管理しています。BlackRockが金融市場で持つ影響力の大きさは容易に想像できます(日本の国家予算は114兆円)。

世界の投資運用会社のランキング上位5位(2023年)

BUIDLがもたらす影響

BlackRockのBUIDLの取り組みは、今後、以下のような影響があると予想されています。

  1. RWA市場規模の拡大:BUIDLの立ち上げに伴い、米国債トークン化市場は約2倍に拡大しました。現在、その市場規模は第2位で、市場占有率は約26%です。BUIDLの今後の展開に注目したいです。

  2. RWA市場の多様化:米国債のトークン化をはじめとする各種資産のトークン化により、RWA市場の多様化が進んでいます。さらに、BlackRockの参入により、他の資産運用会社も同様の取り組みを始めることが期待されています。

  3. 暗号資産分野の信頼性向上:BUIDLでEthereumが選ばれたことは、その技術を信頼している証拠とも言え、将来的には他のブロックチェーンやレイヤー2ネットワークへの展開もあると言われています。

  4. 規制環境の進展: 大手資産運用会社の参入は、米国暗号資産規制に進展をもたらす可能性があると期待されています。BUIDLのようなファンドへの注目が高まることで、規制の法制化が進む一つの要因になるという声も上がっています。

  5. 技術革新の促進:BlackRockがブロックチェーン技術を採用したことで、伝統的な金融業界全体でブロックチェーン技術の採用が促進されると期待されています。将来、プログラマブルで自動化された分散型金融へ移行するのか、今後の展開が注目されます。

最後に

BlackRockによるBUIDLファンドの立ち上げは、伝統的な金融とブロックチェーン技術の融合という画期的な瞬間と言えそうです。しかしながら、既得権益が強い既存の金融業界において、こうした動きが一般化するには時間を要するかもしれません。より効率的で透明性の高い、より良い未来の金融システムが実現されることを祈りつつ、本レポートを書き終えます。それにしても、こうしたワクワクするような事例に巡り会えたことをとても嬉しく思っています。☺️

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本記載内容は、いかなる種類の法律や財務に関する助言とみなされるものではありません。 規制・状況は未確定なため、本記載内容は法律上または財務上の事業判断に使用するには適切でないことをご了承ください。


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