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【論文レビュー】リーダーと部下の関係性の質とビジョンの共有度合いによって、リーダーシップは共有される?

久々の論文レビューとなりました。
今回は、リーダー(上司)と部下の関係性の質を表すLMX(Leader-Member Exchange)と,シェアド・リーダーシップに関連する論文をレビューします。

"A Multilevel Investigation of Leader–Member Exchange, Informal Leader Emergence, and Individual and Team Performance.”
(リーダーとメンバーの交流、インフォーマル・リーダーの出現、個人とチームのパフォーマンスに関するマルチレベルの研究)
Zhang, Z., D. A. Waldman, and Z. Wang.

Personnel Psychology(2012)

「ビジョン共有が大切!」とはよく聞くけど、
なんで必要なのか?を考えたく、この論文を読みました。
ご興味のある方はお付き合いいただけますと嬉しいです🙌


1分で概要を読む

この論文は、大きく分けて以下の2つの内容で検討されています。

  1. 公式リーダー(上司)と部下の関係の質(LMX)が、チームの共有ビジョンの有無に応じて、インフォーマルなリーダーの出現にどのように影響するか

  2. インフォーマルなリーダーの出現が、個人およびチームのパフォーマンスにどのように影響するか

結果として、
公式リーダーと部下の関係(LMX)の質が高く、かつチーム内で共有ビジョンが高い場合には、そのメンバーはインフォーマルなリーダーとして認識されやすくなること、さらに個人およびチームのパフォーマンスが向上することが分かりました。

一方、共有ビジョンが低いチームでは、LMXの質が高いことが逆にインフォーマルなリーダーの出現を抑制すること、さらにパフォーマンスにもマイナスの影響を与える可能性があることが分かりました。

これらの結果から、リーダーシップ開発の観点として、インフォーマルなリーダーの出現を促進することで、チームの効果性を高める可能性が示唆されました。
なおかつ、共有ビジョンを持ち合わせていることで、パフォーマンスが向上する形となることが示唆されています。

▼▼リサーチギャップや詳しい結果は以下に記載しております▼▼

論文のご紹介

まずは大切な言葉の紹介

ここから出てくる言葉で、聞きなれない方もいらっしゃるであろうワードをご紹介します。

  • LMX(Leader-Member Exchange):リーダーとメンバーの間の相互関係の質

  • インフォーマルなリーダー:職場のマネジャーではないけど、リーダーシップをとるメンバーのこと

  • 公式リーダー:組織体制上、リーダーシップをとっていくマネジャーのこと

  • シェアド・リーダーシップ(共有リーダーシップ):職場やチームのメンバーが必要なときに必要なリーダーシップを発揮し、誰かがリーダーシップを発揮しているときには、他のメンバーはフォロワーシップに徹するような職場やチームの状態

リサーチギャップ

この論文が取り組んでいるリサーチギャップは次のとおりです。

  1. インフォーマルなリーダーシップの研究不足:これまでの研究では、フォーマルなリーダーシップ(例えば、LMX)に焦点が当てられることが多く、インフォーマルなリーダーの出現に関するフィールド研究が不足していました。特に、職場の実際のチームにおけるインフォーマルなリーダーの出現プロセスについての知見が限られていました。

  2. フォーマルリーダーシップとインフォーマルリーダーシップの相互作用の理解不足:LMXとインフォーマルリーダーシップの出現に対する関係性や相互作用についての研究が不足していました。特に、チームの共有ビジョンがこれらの関係性にどのように影響を与えるかについての知見が欠如していました。

この結果から、チームのリーダーシップにおけるフォーマルとインフォーマルなプロセスの相互作用が、個人およびチーム全体のパフォーマンスに大きく影響することが示唆されています。

結論

チーム共有ビジョンは、メンバーのインフォーマルリーダーとしての創発を促進すること、LMXがリーダーの創発に及ぼす影響はチーム共有ビジョンの状況を依拠することが明らかになりました。
特にLMXは、チームの共有ビジョンが低い場合には、インフォーマルリーダーの出現と負の相関を示します。しかし、チームの共有ビジョンが高い場合には、正の相関を示します。
共有ビジョンが低いとインフォーマルリーダーは出現しない!

さらに、インフォーマルリーダー創発を介したLMXの職務遂行能力への間接的効果は、チーム共有ビジョンが低い場合よりも高い場合の方がよりポジティブであることが確認されました。

本論文の強みと弱み

強み

このNoteでは割愛していますが・・・この論文の元となった研究では、関係性の質やパフォーマンスを様々な角度から評価しているのです。
これによって、公式なリーダーシップとインフォーマルなリーダーシップの相互作用を包括的に理解することができると考えられます。

また、研究のために集めた人・集団や一時的なグループで行ったのではなく、企業に介入して、実際に業務を行っているチームからデータ収集していることにより、結果が現場に適応可能であると捉えられます。
(実用性が高い!!)

弱み

一方、弱みとして、インフォーマルリーダーの出現がパフォーマンスに影響を与えるのか,逆にパフォーマンスが高いからインフォーマルリーダーが出現するのか、この因果を明らかにすることに限界がありました。

また、この研究は中国の特定の電気通信会社の顧客サービスチームを対象としているので、この研究での結果が、他の文化や業界、異なる職種にどの程度一般化できるか懸念があります。
異なる文化環境や業種は、リーダーシップを共有していく(シェアド・リーダーシップ)の効果に特に影響を及ぼす可能性があると考えられています。


この論文から得た学び

リーダーシップの理論を勉強する中で、各理論に繋がりがあるようには感じつつ、ちゃんと理解出来ていないなぁ・・・と思っていた今日この頃。

LMXというリーダーシップの状態を表すような関係性の良し悪しが、シェアド・リーダーシップの成功にかかっているのだと理解しました。
そして、いくらリーダーの影響力が強くて、部下と良い関係性が作れていたとしても、ビジョンが共有されていなければ、他の人がリーダーシップを発揮するのは難しいのだなぁと納得。

なんとなく、言われたら「そうだよね〜」と思いそうなことですが・・・
研究結果として実証することは難しいこともあると感じています。
こうやって実証できていることの価値を感じますね!

お付き合いいただきありがとうございました。

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