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【百人一首】(高砂の/七三・前権中納言匡房)

高砂の尾上の桜さきにけりとやまの霞たたずもあらなむ
(七三 ・前権中納言匡房)

【解釈】

遠くに見える高い山の上に桜が咲いた。美しい桜をずっと眺めていたいから、近くの山の霞がどうかたたないでいてほしい。

出典は「後拾遺集」春 一二〇。
宴会の席で、遙望山桜という題で詠まれたものです。

作者である前権中納言匡房とは大江匡房(おおえのまさふさ)のこと。

大江家は学者の家系で、匡房は2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13 人」に登場した大江広元の曾祖父にあたります。

ちなみに日本史に疎いので、大江広元という人を知ったのはこのドラマでした。源頼朝についで大江広元とは、北条政子は京都育ちのインテリが好みだったのかしらとほほえましく見ておりました。気持ちちょっと分かります。

さて歌の解釈、わりとそのままです。

「たかさご」「とやま」は地名ではなく、それぞれ高い山と人里に近い低い山を表します。

シンプルな対比だけれど風景にぐっと奥行きが出て、山の上に咲いた桜の姿があざやかに浮かび上がってきます。

この情景描写、いいですね。美しいです。

今年はずいぶん桜の開花が早い年で、札幌ですらGW前にきれいに咲いていました。

時間差で咲いた八重桜もそろそろ終わり。

1000年前もそして今でも、みんなしてソワソワと咲くのを待ち、短い見頃をいつくしむ桜という花。

桜を扱った文学作品は数えきれないけれど、この歌も名作のひとつだと思います。





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