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【百人一首】(夕されば/七一 ・大納言経信)

夕されば門田(かどた)の稲葉をとづれてあしのまろやに秋風ぞ吹(ふく)
(七一 ・大納言経信)

【解釈】


夕方になると門前の田にある稲がさらさらと揺れる。この芦葺きの山荘に、秋の風が吹いてきている。

春になったところですが、秋の歌が続きます。

作者は源経信(みなもとのつねのぶ)。中古三十六歌仙の1人で、11世紀中頃の人です。

出典は「金葉集」秋 一八三。
「師賢朝臣の梅津の山里に人々まかりて田家秋風といふ事をよめる」という詞書がついています。

京都の郊外、梅津にある源師賢の別荘で行われた歌会。「田家秋風」というお題のもとで詠まれた歌です。

当時の貴族たちは郊外の田園風景を好んだようで、洛中の家とは別に別荘を持つなどしていたのだといいます。

秋、と言っても田んぼで稲穂が揺れる時期ということですから、初秋でしょうか。厳しかった暑さがやわらぎ、もの寂しさをかすかに含んだ秋の風が吹いてくる。

稲穂が揺れるビジュアルの描写から入るのだけど、風の音が聞こえてくるような、そして涼しさを感じるような、さらりと見事な情景描写です。

「梅津の山里」は現在でいう京都市右京区の梅津だとされています。

お酒の神様の梅宮大社があるあたりですね。山間部というほどではないけれど、洛中からしたらまあ田舎の田園地帯、という感じだったのかな。

学生時代は左京区に住んでいて、右京区はあまり歩いていません。嵐山などはいつも人が多くて避けていたくらいです。

松尾大社から梅宮大社のあたり、今度じっくり歩いてみたいな。

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