羽田さえ

ライター。 日本の古典文学のゆるめな解釈、旅先で自作した短歌。そのほか街や家について。…

羽田さえ

ライター。 日本の古典文学のゆるめな解釈、旅先で自作した短歌。そのほか街や家について。 研究者ではなくただの学部卒(国文学専攻)、好き勝手に書いております。だいたい毎週金曜日に更新します。

マガジン

  • 椎骨動脈解離のこと

    2023年12月に罹患した椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)の備忘録です。

  • 百人一首

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    住んだことのある街、旅先で出会った街、何だか好きな街について。あるいは以前働いていた不動産デベロッパーでの仕事のことなど。

  • 旅の短歌

    旅先で詠んだ自作の短歌です。

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記事一覧

【椎骨動脈解離:9】退院して3ヶ月後の検査&診察

2023年の大晦日から両側椎骨動脈解離を起こしつつも、脳梗塞・くも膜下出血を起こさずどうにか乗り切り、二週間の入院生活を経て無事に退院しました。 1月末のMR &外来受…

羽田さえ
2週間前
8

【百人一首】(難波江の/八八・皇嘉門院別当)

【解釈】ワンナイトの恋が忘れられない、というちょっと刺激的な歌。 出典は「詞花集」恋上  二二九 。 「旅宿に逢ふ恋」というお題のもとで作られた歌です。 作者は皇…

羽田さえ
2週間前
6

【百人一首】(村雨の/八七・寂蓮法師)

【解釈】 出典は新古今集 秋下 四九一。 作者は寂蓮(じゃくれん)法師。平安時代末期の人で、俗名は藤原定長。 藤原俊成の養子であり、新古今和歌集の選者の一人です。…

羽田さえ
1か月前
9

【百人一首】(なげけとて/八六・西行法師)

【解釈】出典は千載集 恋五 九二六。 詞書には「月前恋といへるこころをよめる」とあり、月を前にして詠む恋の歌というところでしょうか。 作者は西行法師。平安末期か…

羽田さえ
1か月前
12

【百人一首】(よもすがら/八五・俊恵法師)

【解釈】出典は千載集 恋二 七六五。 「恋の歌とてよめる」というわりとそのままな詞書がついていますが、作者の実体験ではなく、女性の立場に立って詠まれた歌のようで…

羽田さえ
1か月前
11

【街と家と人】イトーヨーカドー、北海道撤退。

2024年2月9日、北海道内のイトーヨーカドーが全店閉鎖されるというニュースが報じられた。北海道・東北・信越地方から撤退してしまうのだという。 札幌のイトーヨーカドー…

羽田さえ
2か月前
21

【百人一首】(ながらへば/八四・藤原清輔朝臣)

【解釈】なんだか暗い歌です。 子供の頃は、この歌の良さがさっぱり分からなかったような気がします。 出典は新古今集 雑下 一八四三。 作者は藤原清輔朝臣。平安末期…

羽田さえ
3か月前
9

【椎骨動脈解離:8】 退院後の生活と3週間ぶりの検査、医療費のことなど。

7からの続き。 両側椎骨動脈解離にて2023年の大晦日に入院。1月12日に退院後は、まあまあおとなしく自宅療養の日々でした。 仕事はほんの少しずつ再開。 調べ物と書き物…

羽田さえ
3か月前
9

【椎骨動脈解離:7】 13日間の入院、退院

6からの続き。 両側椎骨動脈解離にて2023年の大晦日に入院。 1週間ほどで、痛み止めなしで過ごせるほど落ち着きました。 採血やエコー、MRなどが時折あるのみで、あとは1…

羽田さえ
3か月前
9

【椎骨動脈解離:6】 経過観察のための入院生活

5からの続き。 12月21日に右側椎骨動脈解離の診断を受け、痛み止めを飲みながら経過観察をしていたものの、12月31日に症状が悪化。新たに左側にも解離が発生したようで、…

羽田さえ
3か月前
9

【椎骨動脈解離:5】 新たな痛みの発生と時間外診療、入院決定

4からの続き。 右側椎骨動脈解離で経過観察となり、ロキソプロフェンを飲みながら過ごす日々。激しい運動はNG、普通に生活する分には問題なしでした。 (ちなみに激しい…

羽田さえ
3か月前
5

【椎骨動脈解離:4】 24時間対応の脳神経外科病院の受診と経過観察

3からの続き。 脳神経外科クリニックにて、「右側椎骨動脈解離」の診断を受けました。 土曜に紹介状を作っていただき、週明けすぐに24時間対応のできる病院を受診すること…

羽田さえ
3か月前
5

【椎骨動脈解離:3】 診断と紹介状の受領

2からの続き。 最初の受診から5日ほど経ち、MR検査のため再び札幌駅のクリニックへ。 何となく痛みは続いていて、市販の鎮痛剤を飲みながらやり過ごしていました。PCで長…

羽田さえ
3か月前
4

【椎骨動脈解離:2】 どんな痛みだったのか、どのように受診したのか

前回ざっくり書いた経緯、もう少し細かく記します。 椎骨動脈解離の自覚症状は「突然後頭部を強く殴られたような激しく鋭い痛み」などと表現されることもありますが、自分…

羽田さえ
3か月前
5

【椎骨動脈解離:1】これまでの経緯と属性

2023年12月に診断された「椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)」について書いておきます。 あくまでも自分の備忘録ですが、同じ診断を受けた方にもひとつの事例とし…

羽田さえ
3か月前
5

【百人一首】(世の中よ/八三・皇太后宮大夫俊成)

【解釈】出典は千載集 雑中 一一四八。 作者の皇太后宮大夫俊成とは、平安末期から鎌倉初期を生き、当代きっての歌人とされた藤原俊成(ふじわらの・としなり)のこと。…

羽田さえ
3か月前
7
【椎骨動脈解離:9】退院して3ヶ月後の検査&診察

【椎骨動脈解離:9】退院して3ヶ月後の検査&診察

2023年の大晦日から両側椎骨動脈解離を起こしつつも、脳梗塞・くも膜下出血を起こさずどうにか乗り切り、二週間の入院生活を経て無事に退院しました。

1月末のMR &外来受診では、解離した部分の回復度合いはまずまずと言われました。
このまま血管がうまいこと修復されて、動脈瘤などにならなければ手術なども不要、晴れて自由の身になれるとのこと。

その「うまいこと修復される」のを目指し、後の2月・3月も全

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【百人一首】(難波江の/八八・皇嘉門院別当)

【百人一首】(難波江の/八八・皇嘉門院別当)

【解釈】ワンナイトの恋が忘れられない、というちょっと刺激的な歌。

出典は「詞花集」恋上  二二九 。
「旅宿に逢ふ恋」というお題のもとで作られた歌です。

作者は皇嘉門院別当(こうかもんいんべっとう)。平安末期を生きた人です。

皇嘉門院、藤原聖子(摂政・藤原忠通の娘)に仕えた女房であったことからこのように呼ばれています。時代は少し違うけれど、紫式部や清少納言みたいなポジションですね。

さて、

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【百人一首】(村雨の/八七・寂蓮法師)

【百人一首】(村雨の/八七・寂蓮法師)

【解釈】

出典は新古今集 秋下 四九一。
作者は寂蓮(じゃくれん)法師。平安時代末期の人で、俗名は藤原定長。
藤原俊成の養子であり、新古今和歌集の選者の一人です。

百人一首の中でも、比較的有名な歌かな。

美しい歌です。

情景をただ描写していて余計な感傷や自分自身の心持ちは入れていないのだけど、それがかえって情感あふれる表現になっているように思います。

また、秋の歌でありながら紅葉ではなく

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【百人一首】(なげけとて/八六・西行法師)

【解釈】出典は千載集 恋五 九二六。
詞書には「月前恋といへるこころをよめる」とあり、月を前にして詠む恋の歌というところでしょうか。

作者は西行法師。平安末期から鎌倉初期を生き、もとは武士でした。ついさっき調べていて知った俗名は佐藤義清(さとうのりきよ)というのだそうです。なんかイメージちがう気がする。

21世紀の今なお、歌人としてとても人気のある人ですね。
「願はくは花の下にて春死なむその如

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【百人一首】(よもすがら/八五・俊恵法師)

【百人一首】(よもすがら/八五・俊恵法師)

【解釈】出典は千載集 恋二 七六五。
「恋の歌とてよめる」というわりとそのままな詞書がついていますが、作者の実体験ではなく、女性の立場に立って詠まれた歌のようです。

作者は俊恵(しゅんえ)法師。「しゅんけい」でも「としえ」でもなく、重箱読みで「しゅんえ」です。不思議な語感が美しいですね。

生きた時代は平安末期、方丈記の作者として知られる鴨長明の師匠に当たる人です。歌の才にたけていて、歌詠みが集

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【街と家と人】イトーヨーカドー、北海道撤退。

【街と家と人】イトーヨーカドー、北海道撤退。

2024年2月9日、北海道内のイトーヨーカドーが全店閉鎖されるというニュースが報じられた。北海道・東北・信越地方から撤退してしまうのだという。

札幌のイトーヨーカドーがなくなるという話は噂レベルで何度も耳にしていてそれなりに覚悟していたつもりだったけれど、やっぱりショックだった。

札幌に引っ越した時から通い詰めているヨーカドーがなくなるのだ。大変だ。

基本的には、イトーヨーカドーは関東地方の

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【百人一首】(ながらへば/八四・藤原清輔朝臣)

【百人一首】(ながらへば/八四・藤原清輔朝臣)

【解釈】なんだか暗い歌です。
子供の頃は、この歌の良さがさっぱり分からなかったような気がします。

出典は新古今集 雑下 一八四三。

作者は藤原清輔朝臣。平安末期の十二世紀を生きた人です。
六条藤家3代にあたり「奥義抄」「袋草紙」の作者。平安時代の歌学を大成した人物とも言われています。

とはいえそれほど華々しい人生という訳ではなさそう。
父との折り合いが悪く、40代くらいまで位階は従五位下と、

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【椎骨動脈解離:8】 退院後の生活と3週間ぶりの検査、医療費のことなど。

【椎骨動脈解離:8】 退院後の生活と3週間ぶりの検査、医療費のことなど。

7からの続き。

両側椎骨動脈解離にて2023年の大晦日に入院。1月12日に退院後は、まあまあおとなしく自宅療養の日々でした。

仕事はほんの少しずつ再開。
調べ物と書き物をしたり、札幌市内だけなら、ちょっとした取材に出かけたりしています。フリーランスなので、収入が減るだけ(まあ問題と言えば問題だけど)で融通を利かせられるのはよかったです。

会社員だったとして、退院の翌日からフルスロットルで仕事

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【椎骨動脈解離:7】 13日間の入院、退院

【椎骨動脈解離:7】 13日間の入院、退院

6からの続き。

両側椎骨動脈解離にて2023年の大晦日に入院。
1週間ほどで、痛み止めなしで過ごせるほど落ち着きました。

採血やエコー、MRなどが時折あるのみで、あとは1日3度の検温と血圧測定。「急性期に脳梗塞・くも膜下出血を起こしたら大変」というリスクはどうやら乗り切ったようです。動脈、がんばった。

とはいえ、すぐに退院はできず。

主治医の先生によれば、両側が解離しているので少し慎重にみ

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【椎骨動脈解離:6】 経過観察のための入院生活

【椎骨動脈解離:6】 経過観察のための入院生活

5からの続き。

12月21日に右側椎骨動脈解離の診断を受け、痛み止めを飲みながら経過観察をしていたものの、12月31日に症状が悪化。新たに左側にも解離が発生したようで、両側椎骨動脈解離と診断され大晦日の入院となりました。

入院が決まったのは12月31日の夕方。頭痛と吐き気がひどく、ベッドで点滴を入れてもらいました。

入院といっても、現段階では解離した箇所の治療ができる訳ではなく、あくまでも経

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【椎骨動脈解離:5】 新たな痛みの発生と時間外診療、入院決定

【椎骨動脈解離:5】 新たな痛みの発生と時間外診療、入院決定

4からの続き。

右側椎骨動脈解離で経過観察となり、ロキソプロフェンを飲みながら過ごす日々。激しい運動はNG、普通に生活する分には問題なしでした。

(ちなみに激しい運動というのはどの程度かと先生に質問したところ、格闘技で頭からぶつかりまくるとかフルマラソンとか富士山に登るとかそのレベルだそうです。椎骨動脈解離してなくてもフルマラソンは走らんので大丈夫、とお話ししておきました。)

痛みもだいぶお

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【椎骨動脈解離:4】 24時間対応の脳神経外科病院の受診と経過観察

【椎骨動脈解離:4】 24時間対応の脳神経外科病院の受診と経過観察

3からの続き。

脳神経外科クリニックにて、「右側椎骨動脈解離」の診断を受けました。
土曜に紹介状を作っていただき、週明けすぐに24時間対応のできる病院を受診することになりました。

自宅から通いやすい立地で、救急対応もしている脳神経外科の単科病院です。100床を超える規模で、救急車が来ているのを見かけたこともあります。以前から存在は知っていたけれど、ちょっと頭が痛いなあ、くらいで受診するのは勇気

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【椎骨動脈解離:3】 診断と紹介状の受領

【椎骨動脈解離:3】 診断と紹介状の受領

2からの続き。

最初の受診から5日ほど経ち、MR検査のため再び札幌駅のクリニックへ。
何となく痛みは続いていて、市販の鎮痛剤を飲みながらやり過ごしていました。PCで長時間作業をしたり、スマホを見るために下を向くとしんどい、という感覚もあった気がします。

MRの検査は初めて。作務衣のような検査着に着替え、アクセサリー類は全て外して受けます。ノーメイクで行きましたが、ラメ入りのメイクは落とすように

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【椎骨動脈解離:2】 どんな痛みだったのか、どのように受診したのか

【椎骨動脈解離:2】 どんな痛みだったのか、どのように受診したのか

前回ざっくり書いた経緯、もう少し細かく記します。

椎骨動脈解離の自覚症状は「突然後頭部を強く殴られたような激しく鋭い痛み」などと表現されることもありますが、自分の場合はそこまで強いものではありませんでした。

もちろん痛みはあるけれど、数日間は「何だか痛いな」くらいの感覚。
緊張型頭痛かな、生理前だからかしら、と感じて市販の鎮痛薬を飲むなどしました。

痛む場所はずばりココ!という特定はできず、

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【椎骨動脈解離:1】これまでの経緯と属性

【椎骨動脈解離:1】これまでの経緯と属性

2023年12月に診断された「椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)」について書いておきます。

あくまでも自分の備忘録ですが、同じ診断を受けた方にもひとつの事例として参考になれば。

当初は右側のみだったものが、時間差で左側の解離も見られ、最終的には両側椎骨動脈解離との診断になりました。

2024年1月19日現在、くも膜下出血にも脳梗塞にも至らず、2週間弱の入院を経て経過観察中です。

痛み

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【百人一首】(世の中よ/八三・皇太后宮大夫俊成)

【百人一首】(世の中よ/八三・皇太后宮大夫俊成)

【解釈】出典は千載集 雑中 一一四八。

作者の皇太后宮大夫俊成とは、平安末期から鎌倉初期を生き、当代きっての歌人とされた藤原俊成(ふじわらの・としなり)のこと。
平家物語では、歌の弟子であった薩摩守・平忠度との涙の別れで知られます。小倉百人一首の撰者、藤原定家の父でもあります。

この歌は27歳の時に鹿をテーマに詠まれたもの。
友人である西行と同じように、自分も出家しようかと悩んで山に入りながら

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