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死神の恋

少女を迎えにきた死神。
死神は少女に恋をしてしまった。
少女の寿命はとっくに尽きている。
短くなった蝋燭の炎が弱々しく揺れる。
また黄泉の風が吹く。
死神は蝋燭の炎をその風から必死で護る。
何度も何度も……。
そのたびに死神の体は透明に近づいていく。
「もうやめて!このままだと死神さんの命が」
「俺の命?俺には命なんてない」
「嘘!貴方にだって命はあるわ!それは私と変わらない命よ」
少女の命を護ろうとして死神は必死で炎が消えるのを阻止しようとする。
黄泉の風は容赦なく死神に罰を与える。
今にも消滅しそうな死神を少女は抱きしめた。
「もう充分だから……もう大丈夫だから」
「…………」
「貴方が命がけで私を護ってくれた。最後に私は愛を知ることができた」
「…………」
「それだけで私は幸せだよ」
「…………」
「ありがとう。死神さん」
黄泉の風が透けた死神の体を通り抜けた。
短くなった少女の蝋燭の炎が……消えた。
少女は黄泉の風とともに消滅した。
死神の体は元通りに戻った。
死神は声にならない声でナイタ……。

ー完ー





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