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真面目でうっかり屋な息子の運動会

保育園に通い始めて、早5ヶ月。入園当初泣いて私にしがみついていた息子は、クラスメイトと一緒に黄色い帽子を被って良い子で整列していた。

今日は、初めての運動会。

何が始まるのか分からない、といった顔でクラスの待機場所に座っていた息子は、そのぼんやりした顔のまま入場行進をしてきた。

二歳児クラスは、一言で言うとカオス。先生にくっ付いている子、ずーっと泣いている子、脱走を繰り返す子、友達にちょっかい出している子。

息子はそんな入場列の後方にちょこんと立っていた。 私が心配していたよりも、はるかに真面目な態度で。

カオスではあったが、二歳児達は入場列を大きく乱すことなく整列していた。本当に、保育士さん達には頭が上がらない。家では自由奔放に動き回る息子が、お友達と一緒にきちんと列に並んで行進できるなんて。

そして息子はそのまま真面目な態度で、前に立っているお友達からはみ出ることもせず準備運動の踊りをこなした。

あぁ、そんな良い子ちゃんで列に並ばず少しはみ出してくれたら良く見えるのに...という観客側の都合など、知る由も無い。

振り付けがうろ覚えなのは、見ていて明らかだった。それでも、息子は3分以上ある踊りを最後まで踊り切ろうと頑張っていた。前の子の背中にバッチリ被りながらも、手を抜かず一生懸命体操している。その姿に、私はいたく感動したのだった。


さて、次はお待ちかね、かけっこだ。

ここ数日、息子とかけっこの練習をしていた。「位置について よーいドン」のスタートに慣れるため、お外でも家の廊下でも合図に合わせて走っていたのだ。放っておけば一日中走り回っているような息子の、初めてのかけっこ。私は密かに一等賞を期待しながらその時を待っていた。

二歳児クラスの第2レースが、息子の出番だった。私も主人も、ドキドキしながらゴールの方でカメラを構えていた。

第1レースの子達が名前を呼ばれ、一列に並ぶ。先生の笛の合図で、子供達が一斉に駆け出した。年度の前半生まれで既に三歳の誕生日を迎えた子だろう。一回り大きい体格の良い男の子が、パッと飛び出して風のように駆け抜けていった。なかなか良いフォームで走るもんだ。

「む、息子?!何走ってるんだ?!」

ゴール側を見ていた私が旦那の声に首を動かすと、出番を待って並んでいたはずの息子がスタートラインから出てゴールに向かっていた。第1レースの子達を追って走り出してしまったのか、先生に腕を引かれ連れ戻されているところだった。

「しまった。位置について よーいドンの練習し過ぎたかも......」

何度も聞いた「よーい ドン」の言葉に身体が反応して飛び出してしまったのだろう。自分の出番が次だということも、まだちゃんと理解出来ていなかったに違いない。

「なんで戻されるの?」と言いたげな様子で、息子はスタートラインに戻される。そしてそのまま、第2レースが始まった。

案の定、息子はさっきのことを気にかけて、ちらちら先生の様子を伺いながらの走り出しになり、一番でゴールすることは叶わなかった。あの時間違って飛び出してなければ...とも思ったが、そんなうっかり屋な一面見られたことが嬉しくもあった。

基本的に外面が良く、真面目に良い子ちゃんしている息子。親としてはほっとするし誇らしくもあるのだが、何でもうまくこなそうと頑張り過ぎないでほしいとも思う。私がまさにそのタイプで、変に自分にプレッシャーをかけて「私は失敗してはいけない」という強迫観念に囚われた学生生活を送っていたから。


かけっこが終わって息子が退場していくのを見守りながら、旦那が言った。「いやー、俺もよくフライングしたり間違えて爆走してた子だったわー」

あぁ、そうか。息子はこのドジっ子旦那の遺伝子も受け継いでいるのか。超ド真面目に列からはみ出ないように生きてきた私と、人の話を聞かない破天荒な問題児だった旦那。この両極端な二人から生まれたということを、今日の息子を見ていて実感した。

家に帰ってから、録画したビデオを何度も見た。何度見ても可愛い。たどたどしいダンスも、先生に連れ戻されないか心配しながら走る様子も。何度見ても愛おしい。

次の大きなイベントは、12月の生活発表会だ。真面目でうっかり屋な息子がどんな姿を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方ない。



ApplePencil購入資金、もしくは息子に酢だこさん太郎を買い与える資金になります。