岡島悦子さんがリディズバで語った危機時のリーダーシップ
2020/04/26のリディズバのゲストは株式会社プロノバ代表取締役社長の岡島悦子さんでした.
ハーバードビジネススクールを出てたり,8社の社外取締役だったりとプロフィールが情報過多な岡島さんが語るリーダーシップとはどんなものなのでしょうか.
(今回は僕が個人的にリディズバの内容をまとめたものです.)
危機時のリーダーシップ
「有事に意思決定は無理」
今,コロナウイルスによって全世界が非常事態となり,全ての人・組織の行動が以前とは変わっています.こういった事態では先が見通せないため,意思決定しようにもグループ内で意見が割れてしまう(決定をその場で委譲される擬似ティール組織になるとも言われていましたね).これはそれを踏まえての発言でした.
そのため,如何に有事までに「意思決定の方法」を決定しておくかが重要であると岡島さんは語っていました.つまり,その組織で軸となる価値観を定めておくということですね.
岡島さんが社外取締役を務める丸井グループでは,緊急事態宣言を受けた臨時休業に対して,
「家賃と共益費のほか、消化仕入れ契約の出店者の3~8月期の最低保証売上高を撤廃。これに加え、希望に応じて出店者に敷金の1~2カ月分を返却するほか (6ヶ月以上預託する出店者が対象)、施設の営業が再開した場合は5~7月期の家賃支払いを6ヶ月間猶予する。」
との方針をいち早く打ち出しました.
これは事前に定めた『共創理念』に基づいた意思決定であるとのことでした.
このように,緊急時に素早い対応が取れるかどうかは経営指針が明確であるか,その指針が経営陣全体で共有されているか,であることが窺えます.
しかしながら,どうして丸井グループではそのような指針をあらかじめ設定できていたのでしょうか.この問いに対して岡島さんは
「マルイは以前,アパレルが売れない時期に直面し,方針を転換せざるを得なかったことが今につながっている」
とおっしゃっていました.
これまでに危機があったからこそ,軸(理念)を立てれたんですね.
すでに危機の中にいる僕たちは,この危機に学び,所属している組織の指針・理念を考え直すことがこれからにつながるということです.
コロナに苦しむ経営者
安部さんはここで,社会問題の観点から次のように質問します.
「社会問題の当事者にはすでに支援団体があるが,今回のコロナで苦しむ経営者には支援団体はない.いま経営者たちは何に苦しんでいるのか」
岡島さん「普通の会社は2ヶ月分のキャッシュしか持ってない.でもコロナは2ヶ月では乗り越えられない.だからいまはキャッシュをかき集めている,一年分くらい.いまは黒字でも倒産がありうる状況です」
「状況も読めない.以前アステラス製薬で社外取締役を務めていた経験があるけど,ワクチン作るまでにはまだまだ時間がかかる.今後この状況がどれだけ続くかを読んで,先手を打っていく必要がある.」
安部さんはこれを受けて,「株式市場は毎度のこと貯めるな貯めるなって言ってたけど,結局それでキャッシュが2ヶ月分しかない状況になる.その一方でこういった危機時お金出してくれるわけでもないから無責任ですよね」と言っていました.
いまは数多くある飲食店が危機的状況にさらされています.たくさんあるのにもかかわらず,飲食店が政治的な力を持つようなグループを持っておらず,足並みをそろえた対応ができないとう状態にあります.
震災時に自治体が隣の市町村と連携協定結んでても意味ないことに気づいたように,こういった業界も遠い業界と連携することが重要だと思う,と安部さんは続けました.
難局に絶対必要な資質
岡島さんは,千葉市長の熊谷さんの危機対応の素晴らしさに触れながら,ハーバードビジネススクールのラム・チャランが語った難局に絶対必要な六つの資質を紹介しました.(おそらく『徹底のリーダーシップ』より)
1.誠実であり,信頼できる存在であること
2.社員,部下を鼓舞し,勇気付ける存在であること
3.現場と「生の情報」でつながっていること
4.楽観的な現実主義者であること
5.細部にまで徹底的に踏み込んでいくこと
6.未来に打って出る勇気があること
岡島さんは,特に三つ目の「生の情報」を重視していました.いま,いかに現場と繋がりデータや現場の状況に基づいた意思決定ができるか,またその状況を自ら説明できるか,ということですね.この態度が危機時において信頼となる.その点で熊谷市長はリーダーシップを発揮していたのでしょう.
ホライゾンタルリーダーシップとマイノリティの役割
岡島さん「ダイバーシティとインクルーシブによるイノベーションが~」
一同「横文字バヤイ」
岡島さん「...で女性はどちらかというとホライゾンタルリーダーシップが~」
安部さん「横文字バヤイ」
岡島さんが社外取締役を務める株式会社ユーグレナにはCFO(Chief Future Officer)がいます.岡島さんは持ってるペッドボトルをみられてCFOから「どうしてペッドボトルで飲んでるんですか」と怒られたようです.「マイボトル使ってください」と.
CFOは未来を担う若者の視点で経営陣に意見します.それは年齢層の高い経営陣のなかでマイノリティの立場です.このマイノリティが組織や集団において果たしている役割について岡島さんは次のように述べました.
「マイノリティはマジョリティの固定概念を壊せる」
マイノリティは,マジョリティに対して虐げられる立場として語られることが多いですが,それはマジョリティ内で共有されている認識から外れているからとも言えます.集団が大きな罠にかからないために,「ダイバーシティ(多様性)とインクルーシブ(包括的)によるイノベーション(変革)」が必要だということですね.(これはマジョリティに向けてマイノリティの必要性を訴えるとともに,マイノリティ自身がマジョリティの中で自らの価値を肯定するための考え方だと思います.人権派からは意見がありそうですが,私はこれも一つの考え方だと思います.)
また,話の中で,男性は垂直型シーダーシップ,女性は水平型(ホライゾンタル)リーダーシップを発揮していることが多い,と岡島さんは言っていました.危機時においては分業的で専門性の問われる垂直型よりも,いくつもの専門を横断する水平型のリーダーシップが重要であり,これが危機時において女性の活躍が目立つ背景ではないかとおっしゃっていました.
課題設定に躓くビジネス界隈
岡島さん「スポーツ業界では早く若いものに意思決定させようという動きがある.試合に出ないと成長もしないからまず試合に出ることが大事.それがわかってるから早く試合に出して経験を積ませたりしてる」
ビジネス業界では意思決定をおこなうのは年配者が多いという現状があります.年配者がマジョリティを形成していて,課題に気づかない構造になっていると指摘します.
「公的セクターでもビジネスでも課題が元々設定されてて,上からの仕事をオートモードでこなしてたりする.それでは無意識のバイアスに気づけない」
安部さん「あとはオーナーシップが重要.オーナーシップさえあれば難しい局面でも突破する可能性があるから」
如何に若者が活躍できる環境を築けるかが,その組織の成功の鍵になってくるということですね.そして,どういった若者が活躍するかというと,オーナーシップを持って取り組んでいる人.つまり私たちは,何に対してオーナーシップを抱けるのかを考える必要があります.
新卒世代へのアドバイスとこれからの社会
新卒として何を大事にすべきか?
岡島さん「デジテルネイティブの強みを活かせ.そして試合に出れる会社を選べ」
若い起業家が増えるには?
安部さん「エコシステムができるかどうか.近年はスタートアップに優秀な層が集まった.これはエコシステムが築けてたから.ソーシャルセクターもここから学ばないといけない.具体的には,家族を養えるような仕事であることを示していけるようにビルドアップしないと」
岡島さん「大企業に就職した人でも,余裕ができてきたら副業するとか,空いた時間を社会起業のために使うとかが良いと思う」
「これからの社会では,高い次元ではなくともいろんなタグを持つことが求められる」
緊急事態で向き合わざるを得ない家族の価値観
「今,こういう危機を経験して,働くってなんだっけ,民主主義ってなんだっけ,となってる.これまで市場ベースじゃない社会参画をおろそかにしてきた.そもそも幸せってなんだっけ.」
「ワークライフバランスじゃなくてワークアズライフになってる人も多い.混ざってきてる.緊急事態宣言で家族とともに過ごすとなった時に,お互いの価値観に向き合ってきたかどうかで良し悪しが分かれたのもある」
「家族内で価値観について話し合う機会かも.これまでは家族で価値観が一緒じゃなくても良かった.戸籍制度の一つだったわけで,片方は働いてほとんど家にいない家族も多かったと思う.でも今回のことで価値観まで合わせないといけなくなった.wellbeingの時代かなって」
「家族内での優先順位であったりを話し合うべき.例えば気づかずに娘に罪悪感を感じてたりする.三食を作ってないとか.でも夫に相談したら,そんなこと思う必要がないって言われた.『そんなことあなたに求めてないから,自分の役割を果たして』と.子育てはジョイントベンチャーみたいなもので,それぞれの価値観と向き合って優先順位を明確にしておくことで危機時の破局を防げるのだと思う」
経営に必要なマインド
岡島さん「私もブランド志向だったけど,それだけでは続かない.承認欲求だけで80までは続かない.(学歴や職歴といった)ブランドを求める思考から抜け出す必要がある.」
「リーダーたちには昔から引っ越しを繰り返しててマイノリティの立場をよくわかってる人も多い.人は何かしらマイノリティな一面があると思う.経営者は特に自分のマイノリティ性に気づいて,その視点で考えることが経営につながると思う」
放課後の雑談
はるき:ランサーズの話が一番残った,兼業副業を探せるサイトを運営してるところで,そこが余った人材を他の会社に流すような事業を始めたのはすごい.
るか:確かに,大企業に勤めるだけだったら一点張りの思考になりそうだけど,色んな面を知れるしね
はるき:弟が大企業で働いてるんだけど,末端なのに暇そうにしてる.
そう:それで満足してるの?
はるき:弟としてはいいよね.それでお金もらえるから.でも企業として勿体無いと思う.労働力の損失.
そう:いいなー入りたいぜ(笑)
はるき:それなのに基本給1.5万上がったとか言ってた.
るか:このご時世に?
はるき:そうそう.母は公務員だけど有給取らされたみたい.
るか:それもう有給じゃないじゃん.うちの母親も在宅勤務(仕事なし)だなぁ.
はるき:今人的リソース有り余ってるな.
そう:だよな〜
はるき:どこの国もそうだけど.いま全員に何か一つやらしたらとんでもないことになるよね.
そう:やる人はもう勉強してるけどねぇ.勉強したい人はラッキーって思ってる.
るか:最近はリディズバとかが面白くて勉強してるけど,これはこれから何につがるんだろう.それが不安で.私ネガティブなんよね〜.
はるき:僕は短期的には話題作りだと思ってる.知識増やすためって.中長期的にはもちろん自分への投資になってくるけど.
るか:知識増やすねぇ...そういう時期なのかな.長期的には自分のためにはなるし,活きるの知ってるけど,就活中だからか悲観的になってる.
はるき:リディズバは将来役に立つから見てるの?
るか:いや,面白くて見てる.知るのが楽しい.webテストとかはナンのためにやってるんだろうって.自分の人生も日本の社会にも不安.
はるき:僕もそう.就活するとそうなる.就活に心理的なストレスを取られる.
そう:やんなかったらいいのに.
はるき:(就活は)自分の目標のためにやってる.
るか:私は起業してやりたいこととか今の段階では見つかってないから,今はまず就職してやりたいことを見つけたい.副業としてやってくのがいいかなって.
そう:いいじゃん.岡島さんも言ってたよね.
はるき:今日分かりやすかったのは「我が社の常識で世間の非常識」を認識できるかってとこだと思う.
るか:トップダウンで決める会社とかだと常識にとらわれちゃうよね.
はるき:コンサルも
はるき:そうは研究者になるんだっけ?
そう:いや,僕は職業としての研究者にはなろうと持ってない.自分の中で問いがあるから,それを解決するために現場で課題解決に取り組みつつ,趣味として時間をかけてそれらの知見を研究していきたい.
はるき:僕はその問いがないから大学院行こうと思えないんですよね
るか:どうやるかより何をやるかを特定するのが難しい
そう:課題があると逆に就職したら悶えるよね
るか:そうの問いってなんだっけ?
そう:んー,ぼくのなかの問いは結局、世界が平和になるのかていうこと.今の社会を動かしている経済活動は平和に向かっているのか.問題がある状態は平和ではない.だから社会問題に興味を持ってる.そして一つひとつの社会問題の構造を知っていってそこが解決に向かうのかっていうところ,その取り組みが平和に寄与するのかっていうのを知りたい.資本主義やソーシャルビジネスってのがぼくらの人生の未来に貢献するのか研究したい.
はるき:社会問題はギャップをうめること。現実と理想のギャップをうめる。
るか:そうの言う平和の定義は?
そう:こりゃまた難しいことを
はるき:数年前にそうと話してから平和ってどういう状態かていうのをずっと考えてた.僕は,人類全体が解決しようとしている状態だと思う.
そう:結局、社会課題っていうのは社会に対してずっとあり続けるからそこに向かっていくことがベストな状態と言えるんだろうね.まだ答えはないけど,人類それぞれが平和にむかって解決に取り組んでることそれ自体が平和なのかもしれない.
るか:私は,平和は個人に内包された,心が豊かな状態だと思う
はるき:分断と連帯.みんなを繋げるのか,それぞれを個別の空間に置くか.
そう:今あるもので言えばどうぶつの森とか近そう.違う世界で生活を楽しんでる.僕も昔好きで結構やりこんでたなー.ポケモンも.でも今はゲーム全般に飽きてる,それは現実の面白さを知ったからなんだけど.だから小説とかもあまり読まなくなった.
るか:平和から一番遠い状態にある人が簡単な解が出せそう.日本で生活できてることは平和.欲しいもの,理想がパッと出せる
はるき:人と動物の違い.こう言った抽象的な概念を設定してなんとかしようと考えるのは人間の特徴だよね.だからこそ成長してきたし.
そう:こういう話でいつも考えるのはその概念が生まれたときのこと.「考えを共有できるっていう考え方」が生まれたとき.それまでは「ウォー」とか叫んだりしてチームで狩りしていたと思うんだけど,いつからか一緒に過ごした瞬間のこととかを伝えるためのサインができた.マンモスのことを表すために身振り手振りで毎度表現していたのが,どんどん単純化されてある仕草とかになる.そうやってみんながいつのまにか共通認識として,記号や音の配列から同じ記憶を想起できるようになった.
るか:なんかナショナリズムに近い.共通認識,同じものを知らぬうちにわかるって点で.
そう:ぼくらはその概念形成のプロセスを共有できなかった.大昔にそういった概念がすでに確立し,変容しながら社会に内包されてきた.そんな中僕らは生を受けた.すでにあるものとして,文字や言語を学ぶ.でも実際は共有された経験があって初めて生まれたものだった.共有されていない者にとって「そういうもの」として教えられる.物に対する記号なら分かるけど,概念に付けられた記号なんて,共有されてない者にとって当然ではない.
そこで,さっきの話に戻ってくる.岡島さんの話で,マイノリティの視点をいかにもつか.「それって無意識に共有されているよね」って気づくのはマイノリティ側。そういう意味でマイノリティが社会に果たす役割って大きいよね
はるき:だれもどこかマイノリティがある.打ちのめされる必要がある.
るか:めっちゃそう思う
はるき:50代のおっさんと話すとマジで話わからん.でもアメリカだとわかったりする
そう:ずっと居心地の良いコミュニティの中にいたらわからない.新しいことに挑戦すれば必ずマイノリティの立場を経験する.
そう:僕が印象に残ってるのはオーナーシップが大事ってとこ.だからソーシャルセクターでは当事者が強い.じゃあ被害者でも加害者でもない人がどうやって社会問題にオーナーシップを持てるかが社会起業においてポイントになる.
るか:円満に育った私は何をしたらオーナーシップを持てるか.
はるき:「現場に入れば当事者になるからまず行ったらいいよ」って言った先輩の言葉を憶えてる.確かにそうだなって.
るか:逆に現場に行って問題だと思わなければそれはやばい.結局どれを選ぶかという優先順位の問題だと思う.
そう:あ〜,多分知らないからだよね.構造化されてなくて,優先順位がつけられないから選べない.だから僕も平和とか社会問題とか抽象的なトピックに興味持って勉強してる.それでリディズバ見てリディラバ読んでってやってる.
るか:結局will-can-mustか.can-mustを知ることでwillも見えてくるってことね.
そう:そうはいっても結局willだけでバカみたいにやってる方がいっぱい挫折してcanもmustも見えてくるとは思うけどね.
るか:確かにそうだ.笑
そう:それを肝に命じつつ,僕は敢えて社会のcan-mustを見ていきたい.だから勉強と研究を続けてるんだな.
あとがき
いやはや,長いわ(笑)
何文字あるねん,って思いながら.いつの間にか30日.4月も終わりますね.
内容から放課後議論まで盛り上がっちゃって,まとめるのほったらかしてたら時間経っちゃいました,すんません...
これまではリディズバをまとめるとこから,訓練ってことでやってたのですが,今日はちももいないしもう議論だけでってやりました.だから長くなった(笑)
内容のまとめは,僕が自分のメモを頼りに書いているので正確ではありません.録音していたとしても口語的な内容なのでふわふわっとなっていると思います.なので僕がこういう意図だろうとはっきりさせているので間違っている可能性は十分にあります.参考程度に見てくださいね!
もし最後まで読んでくださっているツワモノがいたら有難うございます.もう勝手に仲間って思ってるので,いつか会って話したいですね.
さてもう少しでリディズバも終わっちゃう.見てない人は見てみてね〜!
今日はN高で明日はQuizKnockだったかな.はー,楽しみすぎ.
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(数日分溜まってるのなんとかするぞ...)
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